SF関係の本の紹介(2018年分)

【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】


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●「OUT OF CONTROL」冲方丁著、ハヤカワ文庫JA、2012年7月、ISBN978-4-15-031072-1、620円+税
2018/1/14 ☆

 7編を収めた短編集。雑に分類すると、ホラー3編、刃物を振り回すよく分からない少年の話2編、江戸時代の改暦の話1編。で、SFは1編だけ。遺伝子操作によって、人の寿命が300年になりつつある時代。長命の子どもを妊娠した短命のままの母の気持ちを、忖度した感じ。悪くはないけど、その1編だけのため、というのはちょっと。


●「魚舟・獣舟」上田早夕里著、光文社文庫、2009年1月、ISBN978-4-334-74530-1、590円+税
2018/1/13 ★

 ■。


●「know」野浮ワど著、ハヤカワ文庫JA、2013年7月、ISBN978-4-15-031121-6、720円+税
2018/1/12 ★★★

 ■。

●「いま集合的無意識を、」神林長平著、ハヤカワ文庫JA、2012年3月、ISBN978-4-15-031061-5、620円+税
2018/1/11 ★

 ■。


●「この空のまもり」芝村裕吏著、ハヤカワ文庫JA、2012年10月、ISBN978-4-15-031084-4、680円+税
2018/1/10 ★

 現実世界に、一つレイヤーをかぶせた強化現実が、世界中で一般的になった近未来世界。現実世界の人、場所、建物にタグを付けて情報を付加するという機能。それが、他者の攻撃やヘイトなど悪意に満ちた形で使われ、また他国への政治的攻撃にも使われる。個人や店舗に貼り付けられる中傷、空を覆う政治的スローガン。それに対する手を打たない現実世界の政府に対して、ネットに架空政府が立ち上がり、架空軍が組織され、空や街を覆う政治的悪意に満ちたタグを消去しようと戦う。その架空軍を指揮するニートの架空防衛大臣が主人公。架空軍の大規模な作戦行動を契機に、現実世界でデモが暴動が、そして架空防衛大臣の恋の行方は?って感じ。
 世界設定が強力で一気に読ませる。匿名性の高いネットでのヘイトの現実をみると、強化現実が実現したら、これに似たことは本当に起きそう。現実世界でまで、ヘイトや排外主義が市民権を得るんじゃないかとちょっと怖い。ちなみにこの作品の主人公は、軍隊を組織し、八紘一宇だと愛国心だの右翼っぽい言葉をまといながら、不思議と排外主義ではない未来を提示する。
 最後に明かされるあの人の正体は、あとがきを読むに、周囲の人の要望を取り入れた結果らしい。とって付けたようで、ちょっと無理があると思うのだけど…。

●「富士学校まめたん研究分室」芝村裕吏著、ハヤカワ文庫JA、2012年10月、ISBN978-4-15-031132-2、720円+税
2018/1/9 ★

 恋愛奥手のインテリ女性自衛隊技官が、小型のタチコマのような戦車モドキを開発する話。同時並行で不器用な恋愛が進行し、極東では有事が進行する。グダグダした恋愛模様と、実際の国名をあげた極東有事のシミュレーションのような展開が印象に残る。小規模とは言え、隣の国が攻めてきて、死者もいっぱい出るけど、あくまでも一つのシミュレーションといった趣き。
 アイデア的には、情報収集能力などで個々の機能が劣る戦車モドキが、連携してさまざまな活動をするところが一番の見せ場かと。ここはもっと掘り下げられそうな感じ。
 密かに守られるほどの人材なのだったら、どうして出だしでは職場で疎外されて、不遇を託っていたのかよく分からない。自衛隊が部隊なだけに、自衛隊に批判的な“サヨク”を批判するフレーズも多い。


●「あがり」松崎有理著、創元SF文庫、2013年10月、ISBN978-4-488-74501-1、860円+税
2018/1/9 ★★

 文庫化にあたって1編を付け加えて6編を収めた短編集。舞台はいずれも北の杜の都の西の山にある国立大学。巻末に地名を入れ替えただけの、そのまんまの地図まで付いてるし、間違いなくあの街のあの大学が舞台。そして理学部など理系の研究室を舞台に物語は進行する。もう一つ面白いのは、人名がすべて姓名の区別のないカタカナであるのに対して、他では一切カタカナが使われていないこと。実験器具もすべて無理矢理日本語に翻訳して漢字で表記している。それでいてほとんど違和感がない。
  小説としては、いい短編が多くて全体的にお気に入りの短編集なのだけど、SFとして評価するとなると微妙。端的に言えば、理系大学を舞台にして、研究を絡めたから、SFと呼べる小説になるとは限らないってとこだろうか。
 最後の2編は、明らかにSFじゃない。シマリスの話は普通小説だし、へむはファンタジー。代書屋の話は論文にまつわる不思議話だけど、これもファンタジーっぽい。「不可能もなく裏切りもなく」は、とてもSF的なアイデアに基づく実験を進める話ではあるけど、物語の構造はそのアイデアとまったく関係ない。これではSFとは呼べないと思う。表題作「あがり」は、間違いなくSFだけど、アイデアが雑過ぎると思う。難点が多すぎて、まるで納得できない。もっと説得力をもって描いて欲しかった。その難点を作品中でも指摘してるのには笑ったけど…。結末近くで現れる不思議な現象から話を始めた方がよかったんじゃ?「ぼくの手のなかでしずかに」はとても良かった。もちろんこんなことは起きないけど、アイデアに基づいたストーリーで最後まで引っ張ってくれる。これだけで★を一つ増やした。
 蛇足だけど、杜の都に詳しい人はニヤニヤするローカルネタが満載な感じがする。鳥屋は間違いなく、自動車の前にクルミを置いて割ろうとするカラスのシーンでニヤッとする。


●「南極点のピアピア動画」野尻抱介著、ハヤカワ文庫JA、2012年2月、ISBN978-4-15-031058-5、620円+税
2018/1/8 ★★

 ニコニコ動画ならぬピアピア動画と、初音ミクならぬ小隅レイ。二つのお題を中心に、コンビニチェーンの可能性をちりばめての4篇をおさめた連作短編集。
 まずは彼女を連れて南極から軌道上へ。その宇宙機づくりに活躍する自己増殖工場群。お次は、コンビニに入る時の音楽でのプロモーションから始まって、コンビニの真空殺虫機で進化して、真空にも耐えて、丈夫な糸を吐くクモの活用法。小隅レイを描いた潜水艦はザトウクジラと会話するし、小隅レイみたいな宇宙人(?)は世界にはびこる。アイデア乱れ打ちの中に、ピアピア動画と小隅レイと時々コンビニを忘れないのが楽しい。
 資金を集めるのにピアピア動画にアップして、おもしろがった人達の投げ銭を集めるというのが、経済を考える上でも面白い。なんにでも小隅レイを付けておけば、ファン層が応援してくれるのは、ご都合主義的で楽しい。どこにでも小隅レイの隠れファンがいるし。


●「魔法使いとランデブー」野尻抱介著、ハヤカワ文庫JA、2014年5月、ISBN978-4-15-031157-5、660円+税
2018/1/7 ★

 ロケットガールシリーズの第4弾で、4編を収めた初の短編集。
 ムーンフェイスの話は、軌道上で宇宙船からはぐれても、必ずしも深刻じゃないんだなぁ、と勉強になった。それはさておき、サンタのコスプレや、ロリコンのテロリストもさておき、短編集の約半分を占める表題作はかなりSF度が高くて、それでいて例によって魔術がらみでも盛り上がる。薄くてでっかい凧で、軌道上から宇宙服で地上へ降下って可能性があるんだねぇ。

●「私と月につきあって」野尻抱介著、ハヤカワ文庫JA、2014年4月、ISBN978-4-15-031155-1、680円+税
2018/1/6 ★

 ロケットガールシリーズの第3弾。今度は、フランスのチームと一緒に月へ行く。
 フランス領ギニアでの訓練、軌道上での準備、月の軌道への飛行、月面への降下、そして降下時の事故。著者があとがきで会心と書いているように、月面からの脱出はとてもドラマチック。ここまでのこのシリーズで一番SFっぽさが高いかも。


●「天使は結果オーライ」野尻抱介著、ハヤカワ文庫JA、2014年2月、ISBN978-4-15-031147-6、700円+税
2018/1/5 ★

 ロケットガールシリーズの第2弾。新しい女子高生宇宙飛行士が参加して、活躍する。というか気絶するというか、母校を恨むというか。結局のところ、年格好はともかく、3人とも女子高生じゃない…。と、著者も突っ込んでいたのが、印象的だった。
 軌道にあがって降りてきただけの前作から一歩進んで、今回は軌道上で宇宙ステーションを助け、探査機の手助けする。
●「女子高生、リフトオフ!」野尻抱介著、ハヤカワ文庫JA、2013年11月、ISBN978-4-15-031136-0、700円+税
2018/1/5 ★

 ロケットガールシリーズの第1弾。日本の女子高生が、行方不明の父親を探しに、ソロモン諸島に行ったら、異母兄弟の妹に出会い、なりゆきで一緒に宇宙飛行士のアルバイトする羽目になって、本当に軌道に上がってしまう。
 宇宙産業や宇宙ロケット打ち上げのリアルに、なぜか魔術が薄く混じって、訳の分からないおじさんとお姉さんに巻き込まれた女子高生が、強引にスローリーを引っ張っていく。とも説明できる。
 失敗続きだったのがいきなり成功続きになるのは、きっと魔術が関わってるに違いない。女子高生を宇宙飛行士に器用するのは背丈と体重が少ないのがいいとか、動きやすくするためにレオタードのような宇宙服を開発とか、なんか説明してるけど単に著者の趣味に違いない。小回りのきく安価なロケットのニーズは、今でもあるんだろうな、だから民間の参入の余地があるんだろうな。
●「ココロギ岳から木星トロヤへ」小川一水著、ハヤカワ文庫JA、2013年3月、ISBN978-4-15-031104-9、600円+税
2018/1/4 ★★

 舞台は、2014年2月の北アルプスのココロギ岳山頂の観測所と、2231年2月の木星前方トロヤ群。 場所も時代も違うこの二つの場所の主人公同士がコミュニケーションをとって、2014年の地球の危機と2231年の少年たちの危機を回避しようとする。両者をつなぐのは、細長ーい(?)感じの異次元生命体。
 未来から過去への情報伝達は異次元生命体がサポートしてくれる。ただし過去側がなんらかの“手続き”を踏まないと、情報を伝達してくれないという、やや意味不明の縛りのおかげで、ストーリーが緊迫してくれる。そして、とても面白いのが過去から未来への情報伝達。頭がこんがらがりつつも、 楽しめる。
 過去も未来も、さまざまな可能性も含めて見渡せる異次元生命体のビジョンも、頭がこんがらがりつつも楽しい。2014年の日本の政府やマスコミ関係者は物わかりが良すぎるけど、まあいいか。
●「三惑星の探求」コードウェイナー・スミス著、ハヤカワ文庫SF、2017年8月、ISBN978-4-15-012138-9、1400円+税
2018/1/4 ★★

 人類補完機構全短編の第3集。11編が収められている。最初の4編はキャッシャー・オニールシリーズ。続く「太陽なき海に沈む」は夫の死後、妻が書いた作品だというが、夫の生前も事実上共作していたというだけあって、全然違和感がない。第81Q戦争は、オリジナル版は再録さしい。残る5編は、必ずしも人類補完気候シリーズの作品ではないけど、同じ世界の話っぽくて、以前から人類補完機構の作品集に収められていたもの。
 キャッシャー・オニールは自分で頑張ったというより、他人が用意してくれたレールの上を歩いてるだけで、応援しにくい。それでいて毎回美女と仲よくなってるし! っていうのはさておき、猫娘に負けない、亀娘が登場した点で特筆される。そして「太陽なき海に沈む」はグリゼルダ! 大きなネコに騎乗して走り回るとは、ネコバス以上に楽しそう。 結局独りぼっちだったという話では、「親友たち」よ「ナンシー」の方がいいなぁ。
●「時をとめた少女」ロバート・F・ヤング著、ハヤカワ文庫SF、2017年2月、ISBN978-4-15-012115-0、820円+税
2018/1/3 ★

 「たんぽぽ娘」で日本では有名な著者の7編を収めた日本オリジナル短編集。
  「わが愛はひとつ」は状況が説明されたら結末は簡単に予想が付くけど、この黄金パターンははずさない。「妖精の棲む樹」は樹の生態は面白いけど、妖精はいらんやろ。「時をとめた少女」はボーッとしてたら可愛い彼女が集まってくるご都合主義的な話。あの裏技が可能なら、もっとややこしい話が紡げそう。「花崗岩の女神」は超巨大な美女に登る。「真鍮の都」は、アラビアンナイトなタイムトラベルラブストーリー。「赤い小さな学校」は、他の作品とはテイストが違い、唯一SFらしいと言ったら怒られるかな。子育てを国家任せにして夫婦共働きという世界。「約束の惑星」は、植民船が目的地の惑星に到達できずに、パイロットは…、という私的には哀しい話。
●「赤いオーロラの街で」伊藤瑞彦著、ハヤカワ文庫JA、2017年12月、ISBN978-4-15-031310-4、640円+税
2018/1/2 ★★

 IT会社のプログラマーの主人公。仕事に自信を無くして、休暇を兼ねて北海道斜里町に来ていたら、太陽のフレアによる世界規模の最大に出会う。世界中から電気のインフラの大部分が失われ、その中で第一次産業で成り立つ斜里町の暮らしや、大都会東京都の暮らしがどう変わるのか。さまざまな困難を人々はどうやって切り抜けていくのか。その中で、主人公が自分の居場所を見つけていく。
 こじんまりとよくまとまったストーリー。このストーリーの中の政府はしっかりしていて、世界も日本も冷静に問題に対処しようとする勢力が主導権を握る。といった設定は、ちょっと楽観的すぎると思うけど、おかげでありがちなパニック小説ではなく、落ち着いた理性的な展開になっている。
  スーパーフレアではなく、中規模のフレアによる災害でこれだけのことが起こるとしたら、スーパーフレアが起きたらどんなことになるのやら。電気に頼った都市への人口集中のリスクを考えさせられる。
 第5回ハヤカワSFコンテストの最終候補作。大勝を取った「コルヌトピア」よりはるかに面白いし、SFとして成立してると思う。評を見ると、飛躍がなくて物足りないとか、これだけの大災害なのに北海道の斜里町周辺と東京という狭い範囲しか描いていないとかの不満があるのかもしれないけど、 むやみに手を広げるのがいいと思わない。もちろんもっと広い範囲も描いてみて欲しい。次はスーパーフレアで。
●「イヴのいないアダム」アルフレッド・ベスター著、創元SF文庫、2017年11月、ISBN978-4-488-62305-0、1100円+税
2018/1/1 ☆

 「願い星、叶い星」に2編を加え10編を収めた短編集。ロボット、タイムトラベル、人類滅亡といった古くからある設定を、軽く取り上げて、謎めかして状況を説明して終わるって程度の展開ばかりに思える。どこにサイエンスやスペキュレーションがあるのだろう? そして面白いオチもない。
 たとえば最初の方の数編は「アンドロイドが人を殺してたいへん」「変態タイムトラベラーの遊び」「思慮の足りない男が人類を滅亡させて幻を見る」ってだけ。後の方はさらに意味不明な。ただ、単行本時の表題作は少し好きかも。これは落語のようなオチがあるから。
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