SF関係の本の紹介(2017年分)

【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】


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●「スペース金融道」宮内悠介著、河出書房新社、2016年8月、ISBN978-4-309-02493-6、1600円+税
2017/1/15 ★★

 宇宙を舞台にしたヤミ金の取り立て屋の話。という説明だと、舞台が宇宙なだけで、あとはなにわ金融道みたいな話を思い浮かべるだろう。それはそれで正しいけど、その中でしっかりSFしていてすごい。そして、面白い。
 5編が収められた連作短編集。本文で描かれる主な取り立ての相手だけでも、 アンドロイド、コンピュータの中の人工生命、コンピュータウイルス。チラッと触れられるのには、星自体であるガイア、なんてのまである。
 そんな取り立ての中で、アンドロイドや人工生命の人権問題があるかと思ったら、量子ファイナンスなどという金融工学、人格を転写して債権から逃げようとするアンドロイド、ナノマシンの変異によって発生する病気、アンドロイドと人の異種婚。いろんなアイデアがちりばめられていて、とても楽しい。その背景には何光年もの星間に広がる金融会社が、地球の本社-支店システムを踏襲しているというギャグも忘れない。続きが読みたいけど、続けられそうだけど、いったん簡潔はしてるなぁ。


●「天界の眼 切れ者キューゲルの冒険」ジャック・ヴァンス著、国書刊行会、2016年11月、ISBN978-4-336-05921-5、2400円+税
2017/1/11 ☆

 「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」の2冊目。「ダイイング・アース」の作品の内、キューゲルが登場する7編を収めた短編集。 「ダイイング・アース」ってのは、科学がものすごく発達した後に衰退しつつある遠い未来の地球を舞台にしたもの。充分に発達した科学は、もはや魔術と区別がつかない。という後付けの説明のもとにSFと言い張られるけど、そういう設定は単なるファンタジーと区別がつかない。そして、どこにも発達しまくった科学の雰囲気は出てこない。というわけで、ファンタジーであって、SFではないとしか思えない。
 そして切れ者と銘打ってもらってるキューゲルだけど、けちで好色な盗人で、仲間を裏切って、自分だけが自体を切り抜ける話ばかりが繰り返される。ぜんぜん共感できないし、切れ者感もない。これがピカレスクロマンなら、怪盗ルパンはなるほど紳士だし、ピカレスクロマンじゃない。
 唯一面白かったのは、一番最後だけ。


●「自生の夢」飛浩隆著、河出書房新社、2016年11月、ISBN978-4-309-02521-6、1600円+税
2017/1/9 ★★

 7編を納めた短編集。最初の2編と最後の1編を除くと、人間の行動と考えたことを逐一テキストとしてネットに書き出すライフログシステムCassyという電子的エージェントと、構築された電子的書字空間、そこに投入された新しい形の詩、詩の天才アリスと、アリスにつくられ野生化したポエティカル・ビースト、そして電子的書字空間をひいては現実世界までもむしばみつつある謎の<忌字禍>。聞いたことのない、不思議な世界の物語が、つむがれていく。
 ある意味、分かりやすいアリスの話である「#銀の匙」「曠野にて」から「野生の詩藻」 が好きかも。「海の指」の希望の見えない狭い世界、「自生の夢」に出てくる言葉の能力はとても怖い。「はるかな響き」は、あの有名な映画と、ヴォネガットみたいだなぁ、という感想で正しいのだろうか?


●「星群艦隊」」アン・レッキー著、創元SF文庫、2016年10月、ISBN978-4-488-75803-5、1200円+税
2017/1/2 ★★

 「叛逆航路」「亡霊星域」に続くサンシラリー三部作の最終刊。後ろには、前日譚の「主の命に我は従わん」も付いている。
 辺境を放浪する第一作。一転して、 宮廷劇であり、復讐を果たしたような果たしてないような第二作。そして第三作は、独立戦争。というか自由を求めて戦う話。
 舞台は、第二作と同じ宇宙ステーションとその惑星。大きなテーマは、AIを含めて、人とは何か。あるいは「意義ある存在」とは何か。ここまでも見え隠れしていた圧倒的な科学力を持つ異星人プレスジャーが大きな意味を持つ。人類とAIとの対立に、両者が共有する文化をほとんど理解しない異星人の視点が効果的に投入される。
 ってゆうか、ともすれば暗くなりそうな第三作を楽しく読ませてくれるのは、圧倒的に異星人の通信士さんの力。人類世界の各所に派遣された異星人通信士の道中記の短編集とかを読みたい。
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