SF関係の本の紹介(2023年分)

【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】

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●「チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク」ジョン・スラディック著、竹書房文庫、2023年8月、ISBN978-4-8019-3667-6、1350円+税
2023/12/27 ☆

 絵を描く才能を持ち社会的地位を持ちつつ、人を殺しまくるロボットの物語。アシモフのロボット3原則の守る機構が搭載されていることになっている。が、それが働いていない。しかし、人々はロボットが人に危害を加えるとは思わない。一種の差別階級であるロボットが、人間に復讐する物語、ではなく、ただ好奇心の赴くまま人を殺しまくる。いろんな皮肉を盛り込んでるけど、物語としてただ面白くない。

●「星くずの殺人」桃野雑派著、講談社、2023年2月、ISBN978-4-06-528954-9、1700円+税
2023/12/11 ★

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●「白亜紀往事」劉慈欣著、早川書房、2023年11月、ISBN978-4-15-210278-2、1900円+税
2023/12/10 ★

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●「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(上・下)アンディ・ウィアー著、早川書房、2021年12月、(上)ISBN978-4-15-210070-2(下)ISBN978-4-15-210071-9、(上)1800円+税(下)1800円+税
2023/12/6 ★★★

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●「この世界からは出て行くけれど」キム・チョヨプ著、早川書房、2023年9月、ISBN978-4-15-210268-3、2400円+税
2023/11/23 ★★

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●「沈没船で眠りたい」新馬場新著、双葉社、2023年8月、ISBN978-4-575-24661-2、1750円+税
2023/11/17 ★

 2040年代の日本、AIが発達し、人の仕事が次々と奪われていく社会で、ネオ・ラッダイト運動というロボットを破壊する運動が、学生を中心に広まりつつあった。ネオ・ラッダイト運動のある組織のリーダー、その幼馴染み、彼等関わっていく主人公。
 出だしで、現在に起きたある事件が描かれる。そこへ至る経過が、3年前から描かれていく。最初の1/4で、話がどこに向かってるか判る。さほどユリ好きでもないからか、そこからは、あまりストーリー展開に興味が持てず、人とロボットとが否応なく共に存在する社会がどう描かれるかを中心に読むことに。残念ながら、主人公の周りの狭い範囲しか描かれず、日本社会がどうなってるのかがいまひとつ判らなかった。仕事がロボットに奪われたのなら、大量の失業者が出てる?そんなことは描かれてないような。
 最後に意外なオチがあるとも言えるが、気になってた部分が予想通りになっただけ。

●「私は命の縷々々々々々」青島もうじき著、星海社、2023年9月、ISBN978-4-06-531616-0、1350円+税
2023/11/8 ☆

 倫理的生活環模倣技術によって、人々がさまざまな生物の生活環を模倣できる世界。ってゆうか、さまざまな繁殖方法を選べる世界。何かの存在に責任を持てる人類は、責任のある存在として生き延びる責任がある。という理屈で、生き延びて殖えることが倫理的に正しく、社会的な人生の目的として設定された世界。一種のディストピア小説。
 という設定をさておくと、社会の要請に反発する学生の物語。決められた目的しか認められていない問題、目的が達せられた後の人生の問題。そして流行りの百合風ストーリー。変な設定以外はありがち。消えた先輩の謎が、最後に明かされる。そこはある種SF的。
 生物学を中心に、さまざまな専門用語や情報が、雰囲気をつくるためだけに言及されてる印象。意味の通じない文章が多めで、全体的に詩的。ただイメージばかりで、意味になっていないような。

 他の生物の生活環を模倣したら、なぜ倫理的なのか、さっぱり解らない。という設定自体で引っかかる。殖えることが目的になる理屈も不明。多様な繁殖方法は、殖えるという目的に合うとは限らない。というか、むしろ大抵合わない。ベニクラゲ模倣してさっぱり増えてないし。そもそも生活環の模倣といいながら、繁殖様式だけの模倣であったり、繁殖システムの模倣であったり、生活環の意味がおかしい。
 といった妙な設定を無視してしまえば、他の生物になってみた!って感じのメチャクチャな思考実験は楽しい。粘菌になってみた人間は気持ち悪そう。本当に生活環を模倣したら、もっと人間から逸脱した感じになるのが正しい。
●「彷徨える艦隊12」ジャック・キャンベル著、ハヤカワ文庫SF、2023年10月、ISBN978-4-15-012423-6、1680円+税
2023/11/8 ☆

 本国の惑星に戻って、不正を告発。英雄の帰還に、良くも悪くも注目される中、異星人とのコンタクトのミッションを受けて、再び取って返す。
 分厚いけどとても読みやすく、楽しく、すぐ読める。銀河英雄伝説に似てる。宇宙を舞台にした戦争SFであるかのようでいて、ほぼSFではないとこも。ただ、異星人が出だしてからは、ファーストコンタクト物の要素が出てきた。けっこうコミュニケーションに手間取るちゃんとした異星人。もしかしたらSFになっていくのかも。

●「ときときチャンネル 宇宙飲んでみた」宮澤伊織著、東京創元社、2023年10月、ISBN978-4-488-02101-6、1700円+税
2023/11/6 ★★

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●「大阪SFアンソロジー:OSAKA2045」正井編、Kaguya Books、2023年8月、ISBN978-4-7845-4148-5、1500円+税
2023/10/7 ☆

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●「怪獣保護協会」ジョン・スコルジー著、早川書房、2023年8月、ISBN978-4-15-210259-1、2400円+税
2023/9/30 ★

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●「ウは宇宙ヤバイのウ!(新版)」宮澤伊織著、ハヤカワ文庫JA、2023年8月、ISBN978-4-15-031558-0、880円+税
2023/9/28 ☆

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●「コスタ・コンコルディア 工作船明石の孤独・外伝」林譲治著、ハヤカワ文庫JA、2023年8月、ISBN978-4-15-031557-3、1080円+税
2023/9/28 ★★

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●「オーグメンテッド・スカイ」藤井太洋著、文藝春秋社、2023年6月、ISBN978-4-16-391710-8、1900円+税
2023/8/8 ★

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●「黄金蝶を追って」相川英輔著、竹書房文庫、2023年7月、ISBN978-4-8019-3635-5、900円+税
2023/8/6 ★

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●「あなたは月面に倒れている」倉田タカシ著、東京創元社、2023年6月、ISBN978-4-488-01849-8、1900円+税
2023/8/5 ★★

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●「オーラ・リメイカー[完全版]」春暮康一著、ハヤカワ文庫JA、2023年7月、ISBN978-4-15-031556-6、1200円+税
2023/8/2 ★★

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●「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」高野史緒著、ハヤカワ文庫JA、2023年7月、ISBN978-4-15-031555-9、940円+税
2023/7/24 ★

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●「わたしたちの怪獣」久永実木彦著、東京創元社、2023年5月、ISBN978-4-488-01850-4、1800円+税
2023/6/20 ★

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●「鋼鉄紅女」シーラン・ジェイ・ジャオ著、ハヤカワ文庫SF、2023年2月、ISBN978-4-15-012408-3、1500円+税
2023/6/6 ☆

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●「ヨーロッパ・イン・オータム」デイヴ・ハッチンソン著、竹書房文庫、2022年6月、ISBN978-4-8019-3168-8、1400円+税
2023/6/2 ★

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●「環境省武装機動隊」斉藤詠一著、実業之日本社、2023年5月、ISBN978-4-408-53835-8、1800円+税
2023/5/30 ☆

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●「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」宮野優著、KADOKAWA、2023年4月、ISBN978-4-04-113607-2、1800円+税
2023/5/28 ★

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●「マイ・リトル・ヒーロー」冲方丁著、文藝春秋社、2023年3月、ISBN978-4-16-391672-9、1900円+税
2023/5/22 ★

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●「人類の知らない言葉」エディ・ロブソン著、創元SF文庫、2023年5月、ISBN978-4-488-79501-6、1400円+税
2023/5/17 ★★

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●「アブソルート・コールド」結城充考著、早川書房、2023年4月、ISBN978-4-15-210235-5、2200円+税
2023/5/15 ★

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●「ノヴァ・ヘラス」フランチェスカ・T・バルビニ編、竹書房文庫、2023年4月、ISBN978-4-8019-3280-7、1360円+税
2023/5/8 ★★

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●「工作艦明石の孤独4」林譲治著、ハヤカワ文庫JA、2023年4月、ISBN978-4-15-031548-1、1000円+税
2023/5/2 ★

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●「ブルーネス」伊予原新著、文春文庫、2020年4月、ISBN978-4-16-791473-8、960円+税
2023/4/28 ★★

 東日本大震災で、地震予知に関わりのあった研究者は大きな衝撃を受けた。地震が予知できないなら、せめて津波の接近をリアルタイムで監視して、正確な警報をだせないのか? という思いで「津波監視システム」を構築しようとする物語。
 国から資金が出る訳でもなく、非協力的な所属の研究所、地震村の壁。業界からつまはじきにされ、資金面や機材面で、さまざまな困難をかかえつつ、癖のある有志の面々の努力で、少しずつ支援者も出てくる。が、やがて暗礁に。そんな中、火山島の噴火が…。

 ものすごく王道の日本SFって展開。抜けてるのは主人公のラブだけ。ただ、著者が元地球物理学の研究者だけに、地学業界の事情の描き方がうまいし、津波監視の現状には驚かされる。ほぼ実在する「津波監視システム」の開発、実験の様子も説得力がある。サイエンスだし、フィクションだし、スペキュレイティブでもある。

●「月まで3キロ」伊予原新著、新潮文庫、2021年6月、ISBN978-4-10-120762-9、670円+税
2023/4/25 ★

 6篇を収めた短編集。著者は地学畑の研究者出身。だからなのだろう、どの作品にも地学的な蘊蓄がからむ。でも、科学の話題があるから、といってSFかというとそうでもない。心に問題を抱えた登場人物が、ある体験を経て、それを少し解決するストーリーが、少しミステリ仕立てに描かれる。
 「月まで3キロ」は、タイトルがミステリアスだから、表題作に選ばれたのか。月の蘊蓄は語られるが、その蘊蓄がなくても成立する父と息子の絆の話。
 「星六花」、雪の結晶について語られる。研究者に好かれようとして、って感じ。失恋物語かな?
 「アンモナイトの探し方」、北海道に来た問題を抱えた少年が、アンモナイト掘りに出会って、少し救われる。博物館絡みで良かった。そして、一番SF寄り。
 「天王寺ハイエイタス」、無理矢理ハイエイタスって言わせて、地学関連を守っただけ。ブルースなおっさんの話。海のゴミを捨てるな!
 「エイリアンの食堂」、これはポスドクラブストーリー。素粒子の研究者が出たらSFって訳ではない。ただポスドクの大変さは伝わってくる。ストーリーとしては、これが一番好きかも。
 「山を刻む」は、山岳小説だろうか。変な火山研究者が登場。火山研究者の生態の一端は面白い。

 短編小説としては、いい感じのが並んでる。でも、SFではない。ただ「アンモナイトの探し方」は博物館絡みで、「山を刻む」は火山学者が良かったので、ここに並べた。どの作品も、結末まで行かず、一つの気づきで終わらせる感じ。もう少しオチがない感じがして仕方が無い。

●「生存の図式」ジェイムズ・ホワイト著、創元SF文庫、2023年3月、ISBN978-4-488-79401-9、1000円+税
2023/4/19 ★

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●「星の航海者1」笹本祐一著、創元SF文庫、2023年3月、ISBN978-4-488-74114-3、820円+税
2023/4/12 ★

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●「他人の家」ソン・ウォンピョン著、祥伝社、2023年2月、ISBN978-4-396-63638-8、1700円+税
2023/4/3 ★★

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●「禁断領域 イックンジュッキの棲む森」美原さつき著、宝島社文庫、2023年3月、ISBN978-4-299-04061-9、773円+税
2023/3/29 ★

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●「巡航船<ヴェネチアの剣>奪還!」スザンヌ・パーマー著、ハヤカワ文庫SF、2023年2月、ISBN978-4-15-012398-7、1600円+税
2023/3/24 ☆

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●「ダイダロス」塩父cトム著、早川書房、2023年2月、ISBN978-4-15-210207-2、2200円+税
2023/3/22 ☆

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●「ガーンズバック変換」陸秋槎著、早川書房、2023年2月、ISBN978-4-15-210212-62、2100円+税
2023/3/13 ★

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●「香君」(上・下)上橋菜穂子著、文藝春秋、2022年3月、(上)ISBN978-4-16-391515-9(下)ISBN978-4-16-391516-6、(上)1584円+(下)1700円+税
2023/3/9 ★★

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●「残月記」小田雅久仁著、双葉社、2021年11月、ISBN978-4-575-24464-9、1650円+税
2023/3/5 ★

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●「異常」エルヴェ・ル・テリエ著、早川書房、2022年3月、ISBN978-4-15-210079-5、2700円+税
2023/3/3 ★

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●「EVE 世界の終わりの青い花」佐原一可著、HJ文庫、2022年11月、ISBN978-4-7986-2988-9、650円+税
2023/2/21 ☆

 過去、現在、未来をすべて記述する神定方程式。しかし、その未来項は解けず。それを解くために、演算機を作り200年かけて計算。その解を受け取る人型の巫女を用意した。
 で、ロボットの巫女が、個人を切り捨てて、人類を守るべく、未来を変えようと頑張る。というか、暴走する。で、閉じ込められた宇宙船の中に、敵が紛れている的な。

 マン・マシンネットワークを使った演算という設定は面白い。しかし演算結果が出るまでに、巫女が未来を知ってるのはなぜ? すでに現在の周囲に過去も未来も存在するから? 巫女にはそれが見えるなら、演算必要なかったのでは? 必ず殺すと大見得切ったロボットが、どうしてただ見守ってるのだろう?
 著者がSF好きなのは、随所に散りばめられたネタで判る。でも、この状況は“冷たい方程式”とは違うような。タイムリミット内に宇宙船から脱出せよ、って話でもないし。
 ものすごくSFちっくなアニメのノリ。登場人物の多くが歴史上の重要人物につながってる。そして、充分には説明されない世界観と、なぜか思わせぶりなエピソード。続きがあるんだろう。たぶん。


●「地球の果ての温室で」キム・チョヨプ著、早川書房、2023年1月、ISBN978-4-15-210201-0、2000円+税
2023/2/16 ★★

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●「標本作家」小川楽喜著、早川書房、2023年1月、ISBN978-4-15-210206-5、2300円+税
2023/2/15 ★

 ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。8027世紀の遠未来、人類は滅亡しており、地球は玲伎種と呼ばれる知性体に管理されていた。高度の技術力を持つ玲伎種は、なんの目的かは判らないが、人類の文豪を復活させて小説を書かせていた。
 舞台は、未来のロンドンにある館。そこには、イギリスの文豪が集まっていた。原稿を集める巡稿者として復活させられた主人公、そして10人の文豪(文人十傑)が話の中心。名前は異なるが、文人十傑のの多くには実在のモデルがいる。オスカー・ワイルド、トールキン、メアリ・シェリー、ステープルドン、そして後に日本から加わる太宰治は判りやすい。実在の小説の引用も多い。イギリスの文豪なのにシェイクスピアが復活してないのは、玲伎種の何のこだわりか気になる。

 ストーリーは、文人十傑が、小説を書く代わりに玲伎種から提供された優遇措置を紹介したり。最後の傑作を書かせるために趣向をこらしたり。といった感じ。
 全編を通じて描かれるのは、創作の苦しみであり、創作に向かうさまざまなスタンスであったり。創作とはなにか、が中心的テーマ。作家である審査員が高く評価するのは判るけど、作家ではない身としては、そこまでは嵌まらない。結局、未来世界の様子はあまり描かれないし、玲伎種の目的も正体も判らない。
●「ミッキー7」エドワード・アシュトン著、ハヤカワ文庫SF、2023年1月、ISBN978-4-15-012395-6、1100円+税
2023/2/12 ☆

 コロニー建設のために到着した惑星は、氷の惑星だった。そして巨大なムカデ型異星人との戦いが待っていた。
 主人公は、そのミッションに参加する不死の男。任務で死んでも、記憶を受け継いで新たに用意された体に生まれ変わる。しかしそれは福音ではなく、誰もなりたがらない使い捨てに隊員。6回死んで、生まれ変わったミッキーなので、ミッキー7と呼ばれる。
 あるミッションで命からがら帰還したら、死んだと思われていて、すでにミッキー8が存在していた。あとは、この状況をどうするか?という喜劇的展開。

 そもそも設定が納得できない。いわば不死の技術があるというのに、消耗品扱いの一人にしか使わないのが不自然過ぎる。どの隊員も死んだら復活するようにすればいいはず。コロニー建設では、多くの遺伝子があった方がいいに決まってるし。ってゆうか誰でも不死を求めるのが普通。言い訳のようにクローンで増えた男がしでかした事件が出てくるけど、そんなんで不死を諦めるとは思えない。
 そして、ストーリー展開も納得できない。なんとなく異星人とコミュニケーションとれて、コロニー建設がなんとかなるなんて。ファーストコンタクトもコロニー建設も真面目に描く気があるとは思えない。クローンのドタバタ描いただけやん。

●「蘇りし銃」ユーン・ハ・リー著、創元SF文庫、2023年1月、ISBN978-4-488-78203-0、1500円+税
2023/2/6 ★

 「ナインフォックスの覚醒」「レイヴンの奸計」に続く、三部作完結編。
 暦法改新で大混乱になり、6人中4人の総統がいなくなって、ほぼ崩壊した六連合。そこで生まれた、旧暦法支持派と新暦法支持派の対立。しかし両者が手を組んで、不死身の共通の敵に立ち向かう展開に。その背後で、2人のジェダオが活躍する。
 モスが生き物だとは気づかなかった。そして、やはり真の主役は僕扶たち。なんだけど、今一つ終わり方はすっきりしない。モス、僕扶、人間が、同じ空間で別の世界をつくっているような雰囲気。そこがもっと描かれたら、もっと楽しかったのに。

●「吸血鬼は夜恋をする」伊藤典夫編、創元SF文庫、2022年12月、ISBN978-4-488-79301-2、1000円+税
2023/2/6 ★

 32編を納めた作品集。副題に「SF&ファンタジー・ショートショート傑作選」とある。が、むしろホラー、ファンタジー、不思議話が多い。そこに、少しだけSFが混じったり、SF要素が入ってくる。全体的にはホラー色強め。
 というのも、納められた著者は27名。マシスンが5編、テヴィスが2編納められている以外は、1編ずつ。著者のラインナップには、ブラッドベリやヤング、ライバーといった幻想的な作家がいる一方で、シェクリー、ブラナー、ベスター、ヴァン・ヴォート、ポールといったSFっぽい顔ぶれもいる。その割りに、なぜかSF色が少ない。
 著者の顔ぶれからも分かるけど、1975年に編まれた作品集で、古い感じは否めない。道徳観も今とは違うなぁ。

 SF色が多めで、印象に残ったのは、
 シェクリー「たとえ赤い人殺しが」。何度も死ぬ兵士の話。意外と新しいのかも。
 ルービン「ひとりぼっちの三時間」。タイトル通り。一種のホラーだけど。
 ヴァン・ヴォート「プロセス」。知能のある植物が、敵と戦い、追い払う話。きたら資源がもらえる、となったらみんな殺到しないかなぁ。

●「工作艦明石の孤独3」林譲治著、ハヤカワ文庫JA、2023年1月、ISBN978-4-15-031541-2、980円+税
2023/2/3 ★

 「工作艦明石の孤独2」に続くシリーズ第3弾。個人レベルではなく、社会レベルでの異星人とのコミュニケーションが始まる。そして、ワープの謎が解明されはじめる。異星人とワープの謎だけでも盛り沢山なのに、さらに新展開が投入されて驚いた。
 それにしても、著者はファーストコンタクトが好きだし、文明や集団の維持を、とくに補給・兵站の面から考えるのも好き。シリーズごとに、色んなパターンが出てきて、それぞれに面白い。ただ、今回気づいたけど、生態系についての理解は微妙。

●「裏世界ピクニック8 共犯者の終り」宮澤伊織著、ハヤカワ文庫JA、2023年1月、ISBN978-4-15-031542-9、760円+税
2023/1/30 ☆

 「裏世界ピクニック7」に続く、シリーズ第8弾。この巻は、間奏みたいな感じ。裏世界はフラフラ出てくるけど、探検にはいかない。そして、大部分は恋愛相談に当てられてる感じ。かなり真っ当に、恋愛の理屈がいろいろ出てきて面白い。けど、裏世界が盛んに絡んでくるのに、その謎が解かれる気配がさっぱりな。というか恋にかまけて謎を意識すらしてない。そこが、不満。

●「最後の宇宙飛行士」デイヴィッド・ウェリントン著、ハヤカワ文庫SF、2022年5月、ISBN978-4-15-012367-3、1300円+税
2023/1/30 ★

 地球に近づく小惑星、と思ったらそれが減速して、コースを変え始める。これはファーストコンタクトだ! そして、もし地球に衝突したら大惨事。ということで、慌ててファーストコンタクトのチームを派遣。リーダーはかつて、火星へのミッションに失敗した最後の宇宙飛行士。
 帯に「宇宙のランデブー」を彷彿とさせる。とあって、コンタクトに苦労するのが丸わかりになるんだけど、いいのかな? ともかく、いったいファーストコンタクトはどうなるのか?という謎解き軸で物語りは進む。正直、このパターンは充分予想できるし、オチはもうひとひねりあっても良かったと思う。そもそも長期的に考えると、事態は解決してないよね?
 派遣されたチームが無駄に仲が悪くて、無駄に血を流す。登場人物の心理や行動が軒並み共感できない。読んでてあまり楽しくない。

●「マシンフッド宣言」(上・下)S・B・ディヴィヤ著、ハヤカワ文庫SF、2022年11月、(上)ISBN978-4-15-012388-8(下)ISBN978-4-15-012389-5、(上)1200円+税(下)1200円+税
2023/1/27 ★

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●「第二開国」藤井太洋著、角川書店、2022年10月、ISBN978-4-07-109001-5、1850円+税
2023/1/23 ★

 著者の出身地の奄美大島を舞台に、外資の進出で地域が変化しつつ、救われる話。とりあえずは、SDG’sな感じの巨大クルーズ船の寄港地開発と、そこに外国の影をみる公安が絡んだ展開。ずっと地元にいる者、地元で育ちつつもUターンしてきた者、他所からやってきたIターン組だけど地元人よりも地元に詳しい者。さまざまな立場の人達が、外資や公安に揺さぶられ、対立していく。
 普通に見たら、SFではない。でも、社会の変容を描いている。

●「播磨国妖綺譚」上田早夕里著、文藝春秋、2021年9月、ISBN978-4-16-391435-0、1700円+税
2023/1/2 ★

 6話を収めた連作短編集。安倍晴明にも並ぶ伝説の陰陽師、蘆屋道満。その遠縁にあたる陰陽師の兄弟。兄は術にすぐれ、弟は物の怪が見える目を持つ。道満の式神、猿楽の舞手の霊、蛇神、山の神、平家の武者の亡霊、木の聖。二人でさまざまな怪異と関わって行く。
 播磨国ってことになってるけど、舞台はかなり西の端。燈泉寺はどこか分からないけど、二人が住んでるのは姫路市飾磨区三宅辺り。姫路駅のちょっと南。そこから廣峯神社までは、8kmほど。2時間ほどで歩けそう。でも、大撫山はかなり遠いなぁ。40kmくらいありそう。ほとんど岡山やし。とまあ、思わず地図で場所を確認してしまう。
 SFとは呼べなさそうだけど、楽しく読める。

●「南海ちゃんの新しいお仕事」新井素子著、角川春樹事務所、2022年12月、ISBN978-4-7584-1432-6、1800円+税
2023/1/1 ☆

 世界にはほとんど誰にも見えないけど、亀裂のようなトラップ(靄)があって。ほとんど誰にも影響しないけど、一部の人はそれに引っかかって事故とかを起こす。で、その靄が見える能力者と、靄は見えないけど、その靄に確実に引っかかって、靄消したり利用したりできる超能力者が出会う。とうのたったガールミーツボーイ的な話。
 ポイントは、靄にかかる超能力者は、その靄の中で自分のケガを治したり、壊れた物を元に戻したりできること。で、修繕課を立ち上げる。

 という展開なら、当然ながら、その靄を使った修繕の限界や可能性を探るのが筋。でも、真面目に探ろうとしない。実験すれば済むだけのことを、ウダウダ言い合ってるだけ。そもそも靄を消して回るなら、消すついでに色々実験すればいいだけ。そして倫理的な許容範囲も、その中で議論するのが筋。
 なのにぜんぜん科学的な解明をしようとしない。この展開が頭悪すぎて、ついていけない。さらに、主人公の行動も理論も頭悪い。とにかくぜんぜん科学的ではないので、空想科学小説ではない。正直イライラした。
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