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本の紹介「土の塔に木が生えて」

「土の塔に木が生えて シロアリ塚からはじまる小さな森の話」山科千里著、京都大学学術出版会、2023年4月、ISBN978-4-8140-0462-1、2200円+税


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【和田岳 20231222】【公開用】
●「土の塔に木が生えて」山科千里著、京都大学学術出版会

 小さい頃から、いつかアフリカに行くんだ。と思っていた学生が、修士1回生で、いきなり単身ナミビアの田舎の集落に住み込んでフィールドワーク。言葉の通じない、生活習慣も違う、知り合いもいない場所に単身飛び込む。
 最初の村で取り組んだのは、シロアリ塚に木が生えるのか、木のある場所にシロアリ塚ができるのか問題。次の村では、土の塔が丘にかわり、森になる様子を調査。サイチョウやエボシドリなどの種子散布者、シロアリ塚に集まるツチブタやケープタテガミヤマアラシなど。動物がにぎやか。
 村に住み込んで最初のうちは、言葉も生活習慣も判らない中、子ども達に救われたと書いてある。所有などに関する文化の違いを受け入れようとする様子。村への愛着。著者の人柄に好感が持てる。
 アフリカの自然と、そこで暮らす人々との交流。それは、ニュースで見る問題だらけのアフリカとは全然違った側面が紹介されていて、とてもよかった。

 お薦め度:★★★★  対象:アフリカの自然や人々に興味がある人、あるいは朝ドラ好き
【森住奈穂 20231222】
●「土の塔に木が生えて」山科千里著、京都大学学術出版会

 アフリカへ行きたい一心で、研究対象「シロアリ塚」をひねり出し、大学院へ進学した著者。本書を読んで一番びっくりしたことは、院生1年目の夏に、ぶっつけ本番で(車で走りまわって)、滞在する村、お世話になる家族を決める(なんとなく、ここはいいかも)こと。半年間、言葉も携帯も通じない村で女の子が一人で!と思ったが、本人はあっけらかんとしており、受け入れ側もとても自然。シロアリ塚を取り巻く植物、動物、人びと、もろもろが研究テーマとのことだが、ざっくりした感じで15年近く続けておられることが、まさにアフリカンぽい。異文化のなかで相違点や共通点を見つけ、挑戦するスピリットが素敵だ。

 お薦め度:★★★  対象:まずやってみたらええんちゃうの、と背中を押して欲しいひと
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