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本の紹介「サイレント・アース」

「サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」」デイヴ・グールソン著、NHK出版、2022年8月、ISBN978-4-14-081910-4、2500円+税


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【西本由佳 20230618】【公開用】
●「サイレント・アース」デイヴ・グールソン著、NHK出版

 ミツバチなどの訪花昆虫がいなければ、作物は実らない。糞虫がいなければ、家畜のフンは溜まっていく一方だ。テントウムシなどは、昆虫たちの食物連鎖の上位にいて、いわゆる「害虫」を食べてくれる。昆虫を好まない人は多いけれど、とりあえず人は昆虫に支えられて生きていて、そういう昆虫たちはまだまだたくさんいて、さらにそれらは健全な生態系の上に成り立っている。だけど、農薬の使用や土地の劣化、生息できる環境の断片化などのため、多くの昆虫が数を減らして、あるいは消えていっている。ある章では、そうして昆虫が減り、また他の生きものたちも消えていった未来をディストピアとして描いている。危機感はとても強い。だけど、まだ間に合うと著者は言う。生きものたちがたくさんいて、人も心豊かに暮らせる未来のために、どんな行動が必要か、リストを示して本はしめくくられる。

 お薦め度:★★★  対象:沈黙の春を現実にしたくなければ
【里井敬 20230817】
●「サイレント・アース」デイヴ・グールソン著、NHK出版

 地球には昆虫が500万種もいるが、名前がついているのはその内の100万種。その昆虫たちもほとんど何も研究されていない。そんな昆虫たちは、何のためにいるのか。害虫と思われている「ヌカカ」もカカオの受粉を担っているので彼らがいないとチョコレートが食べられなくなる。糞虫がいないと世界は糞だらけで植物も育たない。そんな昆虫も他の生きものと同様急激に減少している。2000年前後の27年間でトラップにかかる虫の生物量が76%も!減った。昆虫の減少の原因はすみかの喪失や農薬。その他、受粉のためのハナバチの移動や、観葉植物とともに多数の昆虫を知らずに移動させて、一緒に寄生虫や病原体を広め、それが昆虫の減少の原因になっている可能性もある。昆虫の減少について「既知の未知」以外に「未知の未知」がある。現在の科学知識を超えた要素で、将来発見できるかどうかも分からない「未知」もある。その結果多様性が失われている。 このまま昆虫が減少し続けた21世紀末の、恐ろしい未来予測をしているが、まだ間に合うと、無農薬・有機農業の道を述べている。それは都市の緑化や市民農園、買い物行動や消費の変革。政府が補助金の使い方を変える。どれも出来そうで難しいかもしれない。

 お薦め度:★★★★  対象:地球の未来をこれから担う人に読んで欲しい
【萩野哲 20230801】
●「サイレント・アース」デイヴ・グールソン著、NHK出版

 なぜ昆虫が大切なのか?それは、食物連鎖の複数の栄養段階としてや様々な生活を通して必要だからだ。 なぜ昆虫が減少したのか?それは、すみかの喪失、多世代の農薬などで汚染された土地、多様性の乏しい植物で構成される緑の砂漠、無制限に移動させられた送粉者とそれらに便乗した病原体たち、気候変動、夜間の人工照明、外来種などの既知の既知や既知の未知が想定される原因だ。更に、今は想定もされていない未知の未知もあるに違いない。これらは単一犯ではなく、オリエント急行殺人事件のように大部分が犯人かもしれない。では、私たちはどうしたら昆虫の減少を食い止めることができるのか?いや、昆虫だけにとどまらない。自然界の大きな苦境がその他の問題以上に切実であることに関心を持ってもらう、都市の緑化を促進する、より持続可能な農業システムを構築する、大勢の人が一致団結して行動を起こすこと等々を著者は真剣に列挙する。最後の21章はそれらのかなり具体的な総まとめである。どれだけできるのか?できなければ、16章に予言されているような世界になってしまうのだろうか?

 お薦め度:★★★★  対象:サイレント・スプリングは終わった問題ではないことを知りたい人
【和田岳 20230623】
●「サイレント・アース」デイヴ・グールソン著、NHK出版

 副題に“昆虫たちの「沈黙の春」”とあるようにレイチェル・カーソンの「沈黙の春」の危機は、まだ終わっていない。と昆虫の視点で警鐘を鳴らす一冊。著者は、グリホサートなどの殺虫剤・除草剤が生態系や生物に大きな悪影響を与え続けていることをデータで示し、農薬・除草剤の使用を制限するEUの政治的決断に、大きな影響を与えた一人。
 昆虫の生存が、われわれ人類(たとえ昆虫嫌いであっても)の存続に必要かを説明し、その昆虫が近年、昆虫が急速に減少していることを、長期データを使って紹介する。
 それから、昆虫が減少する原因があげられる。まずは生息環境の減少。とくに昆虫など生物の生息に適さない農耕地の拡大を懸念している。続いて殺虫剤・除草剤の大量使用。とくにそれが土壌や生物体に長期にわたって蓄積していることの影響を重視している。それに加えて、地球温暖化、光害、外来生物問題。昆虫の未来は、我々の未来は、とても暗そう。
 最後は「私たちにできること」。まずはこの問題への関心を高める、そして都市に緑を、農業の変革を、あらゆる場所に自然を。自然史博物館の役割は大きそう。最後に具体的な行動内容がリストアップされる。とくに農業の改革、そのための消費者の行動変革を求めていることが印象的。
 全体的にイギリスを舞台に、イギリス人向けに書かれているが、その内容は、日本人を含めすべての人が考えるべきこと。

 お薦め度:★★★★  対象:昆虫など生物の減少を気にしている人、いやむしろ虫が嫌いな人、あるいは農産物を食べている人
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