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本の紹介「狩猟始めました」

「狩猟始めました 新しい自然派ハンターの世界へ」安藤啓一・上田泰正著、ヤマケイ新書、2014年11月、ISBN978-4-06-257712-0、800円+税


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【和田岳 20150227】【公開用】
●「狩猟始めました」安藤啓一・上田泰正著、ヤマケイ新書

 狩猟者の高齢化が進み、日本の狩猟者数はどんどん減少している。その流れが変わるほどではないが、新たに狩猟者になる人も徐々に増えている。新しい狩猟者は、自然との新たな付き合い方を目指したり、食べ物のあり方について考えるなど、今までにない方向性を持っている。そうした新しい狩猟者から、狩猟について紹介した一冊。
 とにかく第1章と第2章がおすすめ。新米狩猟者が、初めての狩猟体験、そして続ける中で何に気づいていったかが描かれる。狩猟とは、殺して楽しむのではなく、食べ物調達だけでもなく、自然とのつきあい方、新たな自然を視る目を得ることなんだと分かる。
 第6章は、そこまでのちょっと楽しげな展開から、深刻な現状について書かれる。喰う事だけで獣害はなくならない。そして狩猟と獣害対策は別である。狩猟者は獣害対策のためにいるのではない。じゃあ、狩猟者はなんのために狩猟するのか。それは狩猟者によって違うのだろうが、著者の答は、第1章と第2章に書かれてるじゃないかと思う。

 お薦め度:★★★★  対象:人と自然のつきあい方、獣害問題、狩猟に興味のある人

【西村寿雄 20150224】
●「狩猟始めました」安藤啓一・上田泰正著、ヤマケイ新書

 もともと山育ちの著者が野生のうさぎ肉を食べたことから野生動物と対峙することの魅力にとりこまれていく。まずは、野生動物観察の方法からときほぐし、著者がなぜ狩猟者になったかそのいきさつを語る。著者は、野生動物の命を奪い肉を食することの重みを問い詰めながら、だんだんと狩猟のある生活にのめりこんでいく。人と野生動物とが接近して生活するようになってきた現在、野生動物と人との軋轢は避けることができなくなった。野生動物の増加を防ぐ目的で野生動物の肉を食する事例も紹介する。農業被害の実態も紹介しながら野生動物と人間の暮らしのありかたについても問いかけている。

 お薦め度:★★★  対象:自然保護と鳥獣被害を考えている人

【萩野哲 20150223】
●「狩猟始めました」安藤啓一・上田泰正著、ヤマケイ新書

 昔の話、クマが里に出没すると猟友会なる団体が出てきて“駆除”と称して射ち殺すことがよくあり、なんとなくハンターに対してあまりよい印象を持っていなかった。希少な生物を自分の楽しみで殺しているように感じたからである。しかし、最近の事情はかなり異なってきている。シカやイノシシは増加し、ハンターは減少しており、あふれた獣は高山帯の植生を破壊するに至っている。この問題をどのように解決するか? ひとつの回答が自分自身ハンターになることであるが、その実践例がこの本になっている。自分の体験のみならず、地域おこしやジビエを味わう実例をいくつも取り上げており、大変参考になる。それを読んで実際にハンターになろうとすれば、どのような手続きが必要なのかも簡潔にまとめられている。さあ、新しい世界に一歩踏み込みませんか?

 お薦め度:★★★  対象:ハンターになってみたい人や興味を持っている人

【森住奈穂 20150225】
●「狩猟始めました」安藤啓一・上田泰正著、ヤマケイ新書

 従来狩猟者になるには、地縁血縁であることが多かった。ところが現在、これまでとは全く異なる理由から狩猟に興味を持つ人が増えているらしい。食品由来への関心の高まり、自然暮らしへの憧れなどである。著者自身、狩猟者となったきっかけは海外旅行先で子どもたちが解体された牛の首にまたがって遊ぶ光景を見て、親になったら食に正直な暮らしをしたい、との思いからだという。猟のレポートとともに、そのような暮らし方を実践している若者たちが紹介される。食べるため命をいただくはずの狩猟が、鳥獣害対策の担い手とされることへの葛藤もつづられている。

 お薦め度:★★★  対象:自然暮らしに興味があるひと

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