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本の紹介「「植物」をやめた植物たち」

「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号、700円+税


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【和田岳 20231026】【公開用】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 日本各地から次々と新種の菌従属栄養の植物を発見・記載し、その生態を明らかにしてきた著者が、今までの成果をいっぱい詰め込んだ一冊。30種ほどの菌従属栄養植物の美しい写真が並ぶ。
 光合成をやめた植物は、単に葉緑素を失っただけでなく、生息環境も生活史も送紛生態も変わる。菌類から栄養を奪う技を身につけ、あらたな種子散布者との関係を築く。菌従属栄養植物が、光合成をする植物とはまったく違う条件で生きていることがよく判る。
 著者が書いてるように、次々と真に新発見の新種が見つかるのはロマン。のみならず、菌類をつうじて周囲の光合成植物から栄養をもらっていたり、カマドウマやアマミノクロウサギに種子散布されていたり。生態学的に興味深いトピックも豊富。

 お薦め度:★★★★  対象:新種発見が好きな人、生態学に興味のある人
【犬伏麻美子 20231027】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 表紙の写真は、ホシザキシャクジョウという植物。裏表紙の写真は、ギンリョウソウという植物。これらの植物は、光合成をやめた植物でキノコやカビの仲間から養分を奪う「菌従属栄養植物」と言われています。筆者は、これらの光合成をやめた植物のしたたかな生存戦略や生態を研究し、自分の目で観察するフィールドワークの魅力も伝えています。鮮やかな色の植物の写真が沢山のっていて、わかりやすく解説されています。小学生向けの本ですが、自然科学を楽しめる大人にもおすすめします。まだまだふしぎがいっぱいです。

 お薦め度:★★★★  対象:自然科学を楽しめる大人たちに
【里井敬 20231026】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 「植物」をやめた=「光合成」をやめた植物。光合成をしないかわりに、菌類から栄養をもらっているが、菌類にも菌類に栄養をあたえている大元の植物にも何も返さない。緑の色素はなく普段は姿を見せないが、花だけは咲かせる。よく見ると美しい花の場合もあるが奇妙な形の時もある。受粉も種子の運搬も他の植物たちとは異なっている。動物と植物、菌類と生き物の世界を大きく分けてもそこからはみ出してくる者がいる。めったに出会えないが、見つけると嬉しくなる植物たちの写真が豊富である。

 お薦め度:★★★★  対象:不思議な植物が好きな人
【冨永則子 20231025】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 植物が植物である所以は、まず「光合成をすること」ではないだろうか? ところが、その光合成をしない植物が存在する。それらの植物は「菌従属栄養植物」と呼ばれる。光合成をやめて、どのように栄養を吸収し種子を散布しているのか。“光合成をやめる”という究極の選択をいかに成し遂げたのかを著者と共に追求していく。野外に出かけ、実際に生き物たちの不思議を自分の目で解明するフィールドワークの重要性を伝えている。そもそも、光合成をやめているのに「植物」といっていいのかなぁ。なんか、分類群から違う存在のように思える。

 お薦め度:★★★  対象:一筋縄ではいかない不思議な生き物に興味がある人に
【西本由佳 20231023】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 植物の一番の特徴は、光合成をすることだろう。だけど、それをやめてしまった植物もいる。菌類に寄生するのだ。普通の植物は、菌類からミネラルや水をもらい、その代わりに光合成で作った糖やでんぷんをわたす。しかし、光合成をしない植物たちは、ミネラルも水も糖もでんぷんも、菌類からもらいっぱなしになる。光合成をしなくていいから、小さな植物が多く、そして暗い林の地面に生えることが多い。花粉を運ぶのも種を散布するのも、地面の近くにいる小さな虫たちだ。その姿は小さく、緑色でなく、草というよりきのこを思わせる。植物とはどういうものなのか、考えさせてくれる存在だ。

 お薦め度:★★★  対象:植物とはどういうものか知りたい人
【西村寿雄 20231024】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 「植物をやめた植物たち」というタイトルがおもしろい。「一番大事なあることをしていない」とも書く。どういう植物だろうと興味がそそられて最初のページを見るとギンリョウソウが出てきて、光合成をしない植物とわかる。たくさんの「光合成をやめた植物」がならびこんなにもあったのかと思い知らされる。拡大写真でとてもカラフルなものも多い。ふだんは目につきにくいので今でも新種発見が多いという。白いギンリョウソウは赤いツバキが元と言うから驚き。「光合成をやめた植物」のなぞ解きも始まる。

 お薦め度:★★★  対象:日陰植物に興味ある人
【萩野哲 20230918】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 地球上に30万種も生息している植物の特徴は光合成を行うことだが、光合成を止めた種が1000種も存在している。いろんな所に生息しているのに、それらの特徴は、地上に姿を現す期間が短く、小さいものが多いことから、発見することは難しい。なぜ光合成を止めたのか?何が違うのか? 通常、植物は光合成で糖やでんぷんを合成し、周りにいる菌類から窒素、リン、カリウムなどの栄養をもらうお返しに、糖などを分け与えて共生関係を結んでいる。一方、光合成を止めた植物は菌類に分け与えるべき報酬を与えない、寄生生活を送っているのだ。一見、他の生物との関係を単純化しているようだが、そうではなさそうだ。その進化の妙に興味は尽きない。

 お薦め度:★★★★  対象:生物間の進化の妙をより深く感じたい人
【森住奈穂 20231026】
●「「植物」をやめた植物たち」末次健司著、福音館書店たくさんのふしぎ2023年9月号

 光合成をせず、菌類から養分をもらって生きる菌従属栄養植物。葉が無く、花が咲いて実をつけるわずかな期間しか地上に姿を現さない。おまけに小さなものが多いから見つけにくく、新種がいっぱいなんだとか。色も形も独特で、写真を眺めているだけでも楽しい。 地道にコツコツとフィールドワークを重ね、普通の植物ではみられない他の生きものとの関係を明らかにしてきた著者。なかでも最大の不思議は 菌類との関係。いったいどんな方法で、菌類からタダで養分をもらっているのか。探究はつづく。

 お薦め度:★★★  対象:これが植物? 珍しいものに惹かれるひと
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