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本の紹介「南極越冬記」

「南極越冬記」西堀栄三郎著、岩波新書、1958年、ISBN4-00-415102-3、840円+税


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【村山涼二 20050626】【公開用】
●「南極越冬記」西堀栄三郎著、岩波新書

 1957年第1次南極越冬隊長、西堀栄三郎の越冬日記である。第1次隊を送った砕氷船「宗谷」(4860t)は、1mの厚さの氷を割るのも大変であった。厳寒、ブリザード、クレバス、火災などの危険があり、機材・食糧の一部が氷とともに失われたり、1年後に必ず帰国出来る保証もない状態で、遺書を書いて出発したという。西堀さんは、小学生の時に白瀬中尉の南極探検の映画を見、戦前・戦後のアメリカ留学時にも南極に関する多くの文献を集め、関係者とも交流をしていた。探検家、登山家、統計的品質管理の第一人者、化学者としての広い資質を持ち、最適任の第1次越冬隊長として困難な条件下で、リーダーシップを発揮されている様子がよく分かる。自身でも、コールラウッシュブリッジの自作、タバコの空き缶を利用したブリザードメーター、宇宙塵の研究など、良き時代の実験科学者の姿が見られる。この本は、今も、南極観測隊員の必読書と言われているそうだ。

 お薦め度:★★★★  対象:極地での研究を目指す青少年から広く一般に

【六車恭子 20050629】
●「南極越冬記」西堀栄三郎著、岩波新書

 「国際地球観測年(1957〜1958)」に発足した第一次南極越冬隊長・西掘氏の越冬日誌という体裁で書かれている。なにしろ昭和基地ははるかに遠く、国家的事業であった。ここには観測隊員何する人ぞ?への誠実な解答が期待できる。
 氷と闘い、オオロラに酔い、壊れる機材と格闘し、11名の個性溢れる仲間の危機をくぐり抜け、なお「未知を求める心」が「探検的要素を含まない観測などありえない」ことを実証してみせたのだ。近年「南極物語」などこの時の犬ゾリ隊、タロー・ジローのその後が映画化されたりしたがその背景を知る絶好の書である。極限の地で限られた仲間と時間をどのようにすごし得るかは未来永劫人間に課せられた試練となりそうだ。南極は優れたトレーニングの場と化すだろう!

 お薦め度:★★★  対象:夢を叶える力は日々養うものと実感したい人に

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