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本の紹介「カブトムシの謎をとく」

「カブトムシの謎をとく」小島渉著、ちくまプリマー新書、2023年8月、ISBN978-4-480-68457-8、880円+税


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 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@mus-nh.city.osaka.jp)までご連絡下さい。
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【萩野哲 20230918】【公開用】
●「カブトムシの謎をとく」小島渉著、ちくまプリマー新書

 日本人なら誰でも知っているであろうカブトムシの正体解明は今でも大変不十分である。著者がそんなカブトムシを研究することになった理由は、いちばん大好きな鳥より小規模・短期間かつ自分でテーマを見つけて自分で解明できそうだったこと。研究してみて分かったこと:幼虫の成長パターン(餌の滞留時間推定に酸化チタンを使うなどの工夫が興味深い)、捕食者、などなど。そして、活動時間(食蜜がクヌギとシマトネリコの場合)については小学生の着眼点が大変参考になり、論文化に至った。生態学者になるために若すぎることは決してないのだと。

 お薦め度:★★★  対象:カブトムシの謎を解明したい人
【冨永則子 20231025】
●「カブトムシの謎をとく」小島渉著、ちくまプリマー新書

 カブトムシ… 全く虫に興味のない人でも、誰でも一目見ればそれと分かる昆虫の一つだろう。しかし、その知名度の高さにもかかわらず、カブトムシの研究者、とくに生態の研究者はほんのわずかしかいないらしい。そんな数少ない研究者の一人である著者が今まで当然のように言われてきたカブトムシの生態を科学的な根拠を元に解き明かしていく。
 研究とは、ある仮説を立てて、それを検証していくことだが、じっくり観察し、片っ端から測定、測量し、データを積み上げることが出発点になる。身近な生き物に興味を持った時、どのようにその生き物に向き合うかのヒントになるかも? 研究に対するハードルを低くしてくれるが、かなりの集中力と根気は必須だな。

 お薦め度:★★★  対象:研究ってナニ?って思ってる人に。
【西村寿雄 20231024】
●「カブトムシの謎をとく」小島渉著、ちくまプリマー新書

 著者の小島さんはかなり以前からカブトムシの研究をしていて、2018年にも『カブトムシの音がきこえる』(たくさんのふしぎ)を出している。カブトムシもよく観察するといろいろと面白い。「なぜ、オスのみ角があるのか」という問いがある。「おおきい武器を持てばより多くのメスと交尾できる可能性がある」と書かれていて興味深い。最近は、都市公園の間伐材や落ち葉をためている場所もカブトムシの棲み家となっている。カブトムシとオオスズメバチとの攻防もおもしろい。またカブトムシは独自の進化をして場合もあるという。沖縄や屋久島など離島のカブトムシ調査も興味深い。

 お薦め度:★★★  対象:カブトムシ好き人間
【和田岳 20231026】
●「カブトムシの謎をとく」小島渉著、ちくまプリマー新書

 卒論ではツバメを研究していた著者は、大学院で昆虫の研究を始め、やがてカブトムシ研究にはまっていく。幼虫の成長の研究、成虫の捕食者の研究、成虫の活動時間の研究、成虫の形態と成長の地理的変異の研究。カブトムシのさまざまな側面が次々と明らかになる。それが時間と労力はかけても、さほどお金はかけず。観察し、飼育して測定し、簡単な実験で解き明かしていく感じがカッコイイ。小学生でもできそう、というか活動時間の研究は実際に小学生が行なったもの。幼虫の成長を速めると、免疫を犠牲にすることになるので、リスキーという話がとても印象的だった。あんな場所で暮らしてるもんな。
 最後の章ではカブトムシ以外も研究している。有毒なチョウ、それに擬態したチョウ、無毒なチョウの逃走距離の比較は、結果はいまいちだけどアイデアが面白い。甲虫の固さが鳥からの捕食からの防御に役立つかどうかを調べようと、ウズラにひたすら虫を与える実験も気に入った。これも硬さの擬態というアイデアが興味深い。この研究も金がかかっておらず、小学生でもできそう。自由研究にいかが?

 お薦め度:★★★★  対象:虫好き、自由研究のネタを探してる人
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