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本の紹介「ダーウィンの呪い」

「ダーウィンの呪い」千葉聡著、講談社現代新書、2023年11月、ISBN978-4-06-533691-5、1200円+税


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【西本由佳 20240227】【公開用】
●「ダーウィンの呪い」千葉聡著、講談社現代新書

 「どんな原因で生じたどんなわずかな変異でも、ほかの生物や周囲の自然との無限に複雑な関係の中で、その変異が何かの個体にとって少しでも有益であれば、その個体の生存につながる。そして、その変異がその個体の子孫に受け継がれるのが普通である。」ダーウィンが述べたことはシンプルで、変異自体も良い悪いという価値観を含んでいるようには思えない。しかし、その変異の受け継がれることを進歩ととらえて、人間を人為的に「良い方向」に導こうと考え始めると、優生学のお話になる。名だたる科学者が、本人なりの「正義」によって優生学を推進していく。効率と合理性を徹底的に求めたヒトラーの優生学の最悪の結果を見なければ、もっと静かにディストピアが実現していたかもしれない。進化論と優生学の関係を詳しく書いた本はあまり見かけないので、勉強になった。

 お薦め度:★★★  対象:科学とそれを使う人間社会の関係について考えたいなら
【西村寿雄 20240228】
●「ダーウィンの呪い」千葉聡著、講談社現代新書

 ダーウィンと言えば「進化論」。進化論では自然選択と適者生存が唱えられ、遺伝子が作用していると説いた。それが「呪い」とは。驚きである。ダーウィンも葛藤だったに違いない。進化論が人間社会に取り入れられ進化論は「呪い」になっていく。「適者生存」が差別の温床になった。ヨーロッパの新天地征服にはそうした背景があったとか。やがて「優生学」も生まれた。オリンピックにまで・・。日本にもつい最近まで「優生保護法」が生きていた。進化論はそれらに〈科学的根拠〉を与えてきた。見方によっては恐ろしい「呪い」の本である。少々読みにくいが、人類発展の裏に「呪い」が渦巻いていたことがよくわかる。

 お薦め度:★★★★  対象:すべての人
【萩野哲 20240131】
●「ダーウィンの呪い」千葉聡著、講談社現代新書

 ダーウィンは「種の起源」の中で一度もEvolutionという単語を使わなかったが、それはEvolutionに”進歩”という意味が含まれていたからである。ダーウィンが考える進化は”方向性のないもの”だった。だが、世間では進化=進歩と見做され、ダーウィンが想定した方向には進まなかった(進化の呪い)。同様に、「種の起源」によれば進化の普遍法則は最も強い者を生き残らせることであるが、世間では強い者ではなく変化できる者が生き残るように解釈?されてきた(闘争の呪い)。ダーウィンがそう言ったと信じ、自然の事実から導かれた人間社会をも支配する規範なのだから逆らっても無駄だという思い込み(ダーウィンの呪い)が利用された結果は、優生学からホロコーストに至る悲惨な歴史が示しているとおりである。しかしこの話は終わったわけではない。悪魔はいつでも身近なところで復活の時を待っている。

 お薦め度:★★★  対象:ダーウィンの影響力のダークサイドを知りたい人
【和田岳 20240301】
●「ダーウィンの呪い」千葉聡著、講談社現代新書

 著者によると、“ダーウィンの進化論”が世に広まった後、現代に至るまで人類は3つの呪いにさらされているという。“進歩せよ”という「進化の呪い」、“生き残りたければ努力して闘いに勝て”という「闘争の呪い」、“自然の事実から導かれた人間社会も支配する規範だから逆らっても無駄だ”という「ダーウィンの呪い」 。この本は、歴史を溯って由来を紐解き、少しでも呪いの効果を和らげようとする試み。
 第1章から第6章は、ダーウィンの進化論の解説から、それが世に広まり、獲得形質の遺伝やメンデル遺伝学との確執のすえ、進化の総合説に到達するまでの歴史の紹介。当初ダーウィンは、進歩という意味を含むevolutionという語を使わなかったし、適者生存とも言わなかった。現在残る3つの呪いは、ダーウィン以外の者達が、ダーウィンの進化論の名を借りて、自分の主張を通そうとした残滓に過ぎない。
 第7章以降は、優生思想の話。優生思想は進化論と結び付いて、20世紀初頭の欧米を席巻し、ヒトラーのホロコーストで表向き終止符が打たれた。しかし、“人為的に人類の資質の向上を目指す”という形で、さまざまに優生思想は生きながらえている。過去の遺物ではなく、また決して他人事ではないことは肝に銘じる必要がある 。

 お薦め度:★★★★  対象:優生思想なんて過去の遺物と思ってる人
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