友の会読書サークルBooks

本の紹介「地理学者、発見と出会いを求めて世界を行く!」

「地理学者、発見と出会いを求めて世界を行く!」水野一晴著、ちくま文庫、2023年2月、ISBN978-4-480-43805-8、900円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@mus-nh.city.osaka.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【森住奈穂 20230818】【公開用】
●「地理学者、発見と出会いを求めて世界を行く!」水野一晴著、ちくま文庫

 1992年〜1997年のアフリカ・南米調査と1999年〜2000年のドイツ滞在を紀行文としてまとめている。著者は気候変動や環境変化が植生分布に及ぼす影響を調査するため一路高峰を目指す。キリマンジャロ登山を皮切りに、命懸けの雨季のラスダシャン(エチオピア)、チャカルタヤ(ボリビア)。どこでも高山病になっている。調査成果は巻末にまとめられているが、本書は紀行文学。行く先々での観光や、そこに暮らす子どもからお年寄りまで、いろいろな人々との出会いが綴られる。 30代独身というそこそこの若さが手伝ってか、柔軟で軽やかな旅だ。世界中どんな辺鄙な所でも、人がおれば出会いあり、暮らしあり。 私もザンジバルに行ってみたいなぁ。1992年の水道も電気もないザンジバル。30年前の世界だから、余計郷愁を感じるのかも知れない。

 お薦め度:★★★  対象:『深夜特急』が好きなひと
【里井敬 20231026】
●「地理学者、発見と出会いを求めて世界を行く!」水野一晴著、ちくま文庫

 自然地理学の調査のためにアフリカや南米へ行った、なんともうらやましすぎる旅記録である。高山病に苦しみながら(必ず高山病になる!)も、先々の人にそして偶然の幸運にも恵まれて調査は進む。植生・文化・軍事、行ってみないと分からない事だらけだ。1800年代のスピークとバートンの『白ナイルの源流は?』の論争は今では衛星写真で分かってしまうだろうが。 1990年ごろの調査の意味は第3章の「その後の世界」に記されている。携帯電話の普及やコロナ禍があった。気候も変わった。人々の生活は変化し、温暖化により氷河は縮小した。氷河と共に植生も遷移し、調査方法も単独からチームを組んでに変わった。質量数の異なるO(酸素)の含量から湧き水の源を探ることもできる。この先の30年は、どのような変化が待っているのかと考えてしまう。 ケニア山のロゼッタ型の巨草(?)ジャイアント・セルシオ(5m超え)を見てみたい。

 お薦め度:★★★  対象:ワイルドな旅に憧れる人
【和田岳 20230817】
●「地理学者、発見と出会いを求めて世界を行く!」水野一晴著、ちくま文庫

 行き先は、アフリカ(ケニア、タンザニア、ウガンダ、エチオピア)、南米(ボリビア、ペルー)そしてドイツ。地理学者と称する若者が、氷河と周辺植生を調査に向かう。それって植物生態学やん。
 1990年代、学生時代にアフリカと南米に行った話が第1部。なにを調査したかは判らないけど、現地での暮らしと山登りの苦労は判る。1990年代末のドイツ滞在記が第2部。ここまではほぼ紀行文。2010年代にアフリカと南米の同じ氷河を調査しにいく第3部。ここにきてようやく調査結果が出てくる。氷河の衰退と植生の変化。
 アフリカ、南米、ドイツでの出会いはいっぱい楽しめる。発見を期待するなら、同じ著者の別の本がいいかも。

 お薦め度:★★  対象:若者がアフリカや南米に一人で行く話が読みたければ
[トップページ][本の紹介][会合の記録]