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本の紹介「地下水は語る」

「地下水は語る 見えない資源の危機」守田優著、岩波新書、2012年6月、ISBN978-4-00-431374-8、760円+税


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【村山涼二 20121219】【公開用】
●「地下水は語る」守田優著、岩波新書

 米国の穀倉地帯におけ水を供給するオガララ帯水層の水位低下に世界の食糧危機が心配されている。日本においては、戦前より工場地帯における地下水揚水による地盤低下が見られていた。戦後の高度成長と都市人口の増加は、地下水位の低下と著しい地盤低下を招いた。その後揚水規制により地盤低下は止まった。地下水位の復元により地下鉄駅の持ち上げの被害が出ている。地盤低下は発展途上国の問題でもあり、2011年のタイでの浸水事故の原因でもある。著者の豊富な経験と知識により、地下水利用に関する歴史、地下水に関する課題のすべてについて詳細に述べられている。京の食文化、有機塩素化合物による汚染、原発事故による地下水汚染にも触れている。日本における地下水の管理について、「公共の水・資源」と考え、循環性の高い河川水を主に、地下水は脇役と考えるべきと述べている。

 お薦め度:★★★★  対象:水資源に関心のある方

【中条武司 20121221】
●「地下水は語る」守田優著、岩波新書

 21世紀は「水の世紀」とも言われる。水を巡った戦争すら起こるのではないかとも懸念されている。その中で地下水は重要な位置を占め、飲料水だけでなく世界の乾燥地帯での農業などには欠かせないものとなっている。一方で、地下水の枯渇、水循環不全、地盤沈下、汚染などの問題が地下水問題として関わってくる。著者はそれらの問題が、日本における地下水が法律上「私水」であり、「公水」として広域で管理しなければならないと説く。東京での地下水問題が中心に書かれている本書であるが、大阪を含め日本全体で考えなければならない問題であろう。
 ただし文章がちょっと単調で固くて読むのに飽きる、一般の人にはわかりにくい専門用語がさらりと使われているのが難点。

 お薦め度:★★★  対象:地下水を利用している人

【萩野哲 20121216】
●「地下水は語る」守田優著、岩波新書

 地下水は昔からその存在が知られ、井戸水や湧水が人々に利用されてきた。しかし、見えない資源であるだけに、その利用には大変難しい面がある。地盤沈下や地下水汚染は人間の経済活動に起因しており、世界を見回すと、深刻な農業用水の枯渇の危機が迫っているところもある。しかし、水脈のあり方を理解し、上手に利用することにより、改善がみられる地域もある。本書は、こうしたデリケートな地下水について様々な例を挙げ、その水循環の実際や過去の歴史を十分理解した上での利用が求められることを訴えている。

 お薦め度:★★★  対象:水の有難さを十分認識すべきすべての人類

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