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本の紹介「ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら」

「ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら ツキノワグマ研究者のウンコ採集フン闘記」小池伸介著、辰巳出版、2023年7月、ISBN978-4-7778-2982-8、1500円+税


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【和田岳 20240227】【公開用】
●「ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら」小池伸介著、辰巳出版

 フンを拾い集めまくってツキノワグマの種子散布の研究。そんな著者が、卒論から、やがて一人前のクマ研究者になる成長の物語。そして、研究者からみたツキノワグマの暮らしを紹介した一冊。
 卒論ではフンを集めてクマの食性調査。修論では、クマがヤマザクラの果実を食べに来るタイミングの調査。博士論文では、クマ牧場で食べた果実がどのくらいで、フンとして排出されるかを調べ、GPS首輪でクマの移動を調査して、種子散布者としてのクマを評価。大量に広い範囲に種子を運ぶクマは、随分優秀な種子散布者らしい。
 最初は、フンすら見つけられなかった学生が、随分成長したなぁ。首輪にカメラを付けてのバイオロギング、毛の安定同位体による食性調査。ハイテクにまで手を出すようになったんだなぁ。と最後は感慨深い。

 お薦め度:★★★★  対象:ツキノワグマの暮らしを知りたい人
【里井敬 20240226】
●「ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら」小池伸介著、辰巳出版

 クマのウンコから食性を調べるだけのつもりで始めた卒論のウンコ探し。そこから種子散布にテーマは広がり、そのままクマの研究者になってしまった。種子をより遠くまで散布できるのは、鳥か?クマか?なんと、クマなのです。鳥は食べてから短時間で一気に脱糞するのに対して、クマは少しずつ糞をし、移動距離も長い。しかも、熟れたころに実を食べ種子が砕かれずにウンコに残る率が高い。そのクマのウンコを食べる糞虫やネズミを含めて、種子散布は巧妙に行われています。豊かな森を形成している動植物の営みを考えると、クマのことをもっと分かって、人間がクマを必要以上に怖がらず、棲み分けができるといいなあと思います。クマに発信器やカメラ付きの首輪をつけたりのフィールドワークは、ハラハラ、ドキドキです。

 お薦め度:★★★★  対象:自然が好きな中高生
【西村寿雄 20240228】
●「ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら」小池伸介著、辰巳出版

 児童書ではないが文章は読みやすく中学生くらいなら読める。クマ研究の珍しい本である。著者は〈クマのウンコ〉を研究することになった。深い森に入り込んでクマのウンコを拾い集める。時にはドラム缶の罠でクマをとらえ、吹き矢麻酔で眠らせている間に電波発信機のついた首輪をつけるという作業もしている(今はGPS発信機)。こうしたクマの生態調査がクマを射殺しないで保護に役立つといい。

 お薦め度:★★★  対象:哺乳動物研究をめざす人
【森住奈穂 20240426】
●「ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら」小池伸介著、辰巳出版

 大学時代から25年以上にわたってツキノワグマを追い続けてきた著者。クマの食性解析から「種子散布」が研究テーマとなり、必然的にウンコにまみれ続けている。25年の間には調査器具も進化し、電波発信機からGPS首輪へ、バイオロギングへ。7章「クマ研究最前線」では、クマの毛からいつどこで何を食べたのかが分かること、特定の母型に受け継がれる嗜好や習慣があること、秋に1年の80%を食い溜めすること、などなど、へー!が盛りだくさん。楽しい。ちなみにクマのウンコはほぼ無臭で、食材の香りがするくらいだとのこと。ちょっと嗅いでみたい。

 お薦め度:★★★  対象:フィールドワークに興味があるひと
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