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フィールドノート7

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瀬戸内海沿岸のハマボウの分布

    ※この文章は大阪市立自然史博物館友の会会誌 Nature Study 2017年6月号に掲載されたものを一部改編したものです。 元の記事の書誌情報は、「横川昌史(2017)瀬戸内海沿岸のハマボウの分布. Nature Study 6:1, 6.」ですので引用される場合は必ず元の記事をご確認ください。

    写真  ハマボウ Hibiscus hamabo Siebold et Zucc.(アオイ科)は、河口や入江などの塩湿地に生える小高木です。右の写真はハマボウの花で、2014年8月28日に大分県日出町で撮影しました。
     さて、7月15日から特別展「瀬戸内海の自然を楽しむ:生き物のにぎわいとその恵み」を開催しますが、特別展に向けて様々な調査を行ってきました。その一つが瀬戸内海沿岸の海岸植物の標本調査です。各地の植物標本庫に収蔵されている標本の採集地と中西(2001)のハマボウの分布一覧表に基づき瀬戸内海沿岸のハマボウの分布図をつくりました(図1)。その結果、瀬戸内海のハマボウの分布は東西に偏っており、燧灘や斎灘、安芸灘などの瀬戸内海中央部の記録がありませんでした。なぜこのような分布になるのかはまだよくわかりませんが、とても興味深い分布図です。今回調査した標本には古いものも含まれており、分布図には開発などによってハマボウがなくなってしまった場所も含まれます。標本を残すことはある生き物が生息・生育していた証拠としても重要です。
     ハマボウは7月から8月ごろに花を咲かせます。これから見頃になりますので海岸に出かけた際には探してみてください。瀬戸内海の中央部でハマボウを見つけた方はぜひ情報を教えてください。
     最後に、標本調査でお世話になった国立科学博物館、京都大学総合博物館、倉敷市立自然史博物館、愛媛県立総合科学博物館、山口県立山口博物館の植物標本庫の管理者の方々にお礼申し上げます。


    図1. 瀬戸内海沿岸のハマボウの分布。○は1966年以前に標本が採集された地点、□は1967年以降に標本が採集された地点、△は標本記録がないが中西(2001)のハマボウの分布一覧に記載がある場所。なお、ここでの瀬戸内海は関門海峡、愛媛県佐田岬-大分県関崎を結ぶ線、淡路島の南岸線の延長線に囲まれる海とします。

    【引用文献】
  • 中西弘樹(2001)ハマボウの地域別個体数と生育状況.奥田重俊先生退官記念論文集「沖積地植生の研究」 37-46.

  • 2017年5月18日 横川昌史

 

Last update was 23. January. 2015
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