7. 18 DEC 2002 10:00~10:30

ルリカケス(Garrulus lidthi)の堅果成熟期における採食行動
中村 友洋 (環境省 奄美野生生物保護センター)

 ブナ科植物の散布体である堅果(acorn)は、その成熟・落下期に多くの動物によって利用され、それは大きく種子捕食とその過程での貯食に2分される。特に後者は堅果が捕食を受けずに生存した時は、埋土による発芽率の上昇など植物側にも多くのメリットがある。両者の利用しあう関係は、これまで堅果とそれを利用する動物種に形態や行動の変化を生じさせて来た。その為、動物の堅果利用パターンについて知る事は、森林動態の解明につながる。
 奄美大島に留鳥として生息するルリカケス(Garrulus lidthi)は、島内に混在するスダジイ(Castanopsis sieboldii)とアラカシ(Quercus glauca)という形態や成分組成などが異なる2種類の堅果を利用している。樹上にある段階から堅果の利用が可能な鳥類は、地上に落下した堅果を主に利用する齧歯類の利用者に比べ、利用する堅果の選択の幅が広いと考えられるが、野外においてこの予測に関する検証例は少ない。
 本研究では2000~2001年のスダジイとアラカシの堅果成熟・落下期に、奄美大島(鹿児島県)でルリカケスの堅果採食行動について調査を行った。調査ではルリカケスの堅果採食行動の観察・ルートセンサスによるスダジイ利用者の調査・成分分析(粗タンパク質、粗脂肪、タンニン)・発芽実験(緑色果、褐色果)の4点に関してデータを取った。

 観察から両堅果種において緑色果期の利用が相対的に高かったが、スダジイの利用は少なく、アラカシ利用の観察頻度が高かった。成分分析の結果、成熟過程で成分組成の変化がなく、また堅果側の防衛物質とされるタンニンはよく利用されたアラカシの方で高かった為、ルリカケスの堅果採食に堅果の成分組成はあまり関与していない事が明らかになった。