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本の紹介「シロアリ」

「シロアリ 女王様、その手がありましたか!」松浦健二著、岩波科学ライブラリー、2013年2月、ISBN978-4-00-029602-1、1500円+税


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【和田岳 20131025】【公開用】
●「シロアリ」松浦健二著、岩波科学ライブラリー

 シロアリといえば、家で見つかったら大騒ぎ。程度の認識しかないだろうけど、アリ・ハチと並ぶ真社会性という変わった社会を持っている昆虫で、古くからさんざん研究されてきた。はずなんだけど、最近もまだまだこんなに色んな事が見つかってるよ!と紹介してくれる一冊。
 著者は、ヤマトシロアリの女王や王を野外で採集するというスキルでもって、メス同志のタンデム、単為生殖による女王分身の術、匂いによるワーカーの女王分化抑制、卵に化けたカビなど、さまざまな謎を解き明かしていく。
 とても楽しく読めるのだが、シロアリの真社会性の謎は、謎のままなのがちょっと不満。

 お薦め度:★★★  対象:シロアリをあまり知らなくても、けっこう知ってるつもりでも、動物の社会に関心があれば

【冨永則子 20130821】
●「シロアリ」松浦健二著、岩波科学ライブラリー

 シロアリって、蟻じゃなくって、ゴキブリの仲間だったの? しかも、社会性を高度に発達させたゴキブリだって!! シロアリについては、家を食べてしまう害虫のイメージしかなかったが、家=木を餌にすることにどれだけのリスクがあるかなど考えたこともなかった。初めて知るシロアリの生態はとても興味深く、面白く読めた。
 著者は、小学6年生の時に“人生を決める一冊の本”となる岩田久二雄の「ハチの生活」に出会ったそうだ。その略暦に『京都大学農学部農林生物学科卒』と書いてあるのを見て、「よし!京大農学部の昆虫学研究室に行くぞ」と決断したとか…。「人生の決断はシンプルなほどよい。大事なのは覚悟だ」その言葉通り、実行している。お気楽受験生のハハとしては、非常に羨ましい限りである。

 お薦め度:★★★★  対象:シロアリ被害にお困りの方に、研究者を目指す中・高生に

【萩野哲 20131010】
●「シロアリ」松浦健二著、岩波科学ライブラリー

 真社会性昆虫の代表のひとつとして大変有名なシロアリだが、本書を読むと、その生態は教科書に載っているほど単純ではないことがよくわかる。今までシロアリの巣は♂(王)と♀(女王)とで創設され、彼らのオスとメスの子孫で維持されていると信じていた。しかし、創設時、必ずしも雌雄のペアではないことがわかった。同性同士のカップルがまれではなかったのだ。オス同士で巣の創設は無理として、メスのみで巣を創設することができた。受精嚢に精子がなかったことから単為生殖が確認された。ではオスは何のために存在するのか?オスの役割がはかないハチの社会性を知っていた男性諸氏にはさらなる打撃となるかも?

 お薦め度:★★★  対象:真社会性への進化をより深く知りたい人

【六車恭子 20131025】
●「シロアリ」松浦健二著、岩波科学ライブラリー

 著者は子どもの頃、岩田久仁雄氏の「ハチの生活」に出会い、そし彼を生涯の師と仰ぎ、その研究室のある京大農学部をめざした。「人生の決断はシンプルなほどよい!」その覚悟を実践できた幸運な人だ。下宿のコタツでシロアリを飼う!これも著者の特異さを語る一面でしょうか。
 ヤマトシロアリは私たちからすると嫌われ者ですが、松浦氏から見るとこんな可愛い魅惑的なものはないという。ヤマトシロアリは社会性昆虫と呼ばれるハチやアリの仲間というより、ゴキブリにちかいらしい。ハチ・アリの社会は女性社会、シロアリの社会は男女参画社会だという。植物遺体を分解するという生態系で、シロアリは微生物の世界に生きる方法を確立し成功したのだ。羽アリが飛んでペアとなり、創設王と創設女王が誕生する。その王国を栄えさせるために、密かに女王は後継者として単為生殖した二次女王たちを生む。このハーレムは一匹の妻の分身が後々までも支配する世界なのだ。女王様はワインの香りで武装し彼女の生む卵もその香りを放つという。ワーカーやニンフにより卵は守られていく。女王の産卵に急ブレーキをかけるのは二次女王になれない彼女たちだ。堅牢に見えるこの王国にも女王フェロモンを放つ、ターマイトボールというカビまで共生するようだ。
 松浦氏の語りで確かにシロアリの世界が可愛く魅惑的に思えてきたのから不思議だ。

 お薦め度:★★★★  対象:小さな生き物がミラクルボールに変身する様を覗きたい人

【森住奈穂 20131021】
●「シロアリ」松浦健二著、岩波科学ライブラリー

 シロアリは白いアリじゃない。ゴキブリの仲間なのだそう。副題の通り、思わず膝を打つ女王様の戦略。難しい話も導入部の引用が面白くて、つい引き込まれてしまう。イラストの魅力も大きい。カクテルグラスをかたむけるその姿はまさに王&女王!人目に触れない神秘性、一筋縄でいかない奥深さに魅了され、過酷な野外調査をものともせずにシロアリを探求し続ける著者。真摯で謙虚、そしてユーモアを忘れないその姿勢に感服。余談ですが、女王の白くてぷっくりしたお腹が美味しそうで、機会があれば食べてみたいとちょと思う。

 お薦め度:★★★★  対象:ワクワクドキドキしたいひと

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