自然史関係の本の紹介(2009年上半期分)

【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】

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●「きのこの下には死体が眠る!? 菌糸が織りなす不思議な世界」吹春俊光著、技術評論社、2009年6月、ISBN978-4-7741-3873-2、1580円+税
2009/8/26 ★

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●「ありえない!?生物進化論」北村雄一著、ソフトバンククリエイティブ、2008年11月、ISBN978-4-7973-4592-6、952円+税
2009/8/26 ☆

 著者の肩書きは、フリージャーナリスト兼イラストレーター。深海生物や恐竜関係の著書もあるらしい。この本は、進化論の解説ではなく、生物の進化のいくつかの例をネタに、仮説の検証という科学の営みを説明した感じ。どうじに分岐系統学もうすく紹介しているようでもある。”科学とは…”といった発言が目立つので、一種の科学論でもあるのかもしれない。
 とりあげられているネタは、クジラと偶蹄類(とくにカバ)の系統関係、始祖鳥は鳥か恐竜か、恐竜絶滅の謎、バーチェスの節足動物の系統関係。それなりに議論があるテーマを取り上げて、比較的最近の論文まで紹介しているのは勉強してるなとは思わせる。説明では、あえて極端な仮想敵を設定してみたり、例え話を挿入しまくる。わかりやすくと思ってるのかもしれないが、とてもくどく感じる。それでいて肝心の部分のデータや解説が省かれていたりする(読者には難しいだろうという配慮なんだろう)。
 全体を読んだ感じでは、著者はかなり単純な科学感を持っているのかなという印象。仮説とは検証されうるもので、検証されたら大多数の科学者はその仮説を採用し、すなわちそれが真実である。科学もまた人の営みであるって思わないんだろうか?パラダイムって考え方は知らないのか、嫌いなのか。一番気になるのは、多数派の科学者が採用している仮説を、科学的事実と同一視しているかのように思える書き方。わざと読者向けに単純化して、断言してくれているのかもしれないけど…。

●「捨てるな、うまいタネ」藤田雅矢著、WAVE出版、2003年5月、ISBN978-4-87290-155-9、1300円+税
2009/6/19 ★

 スイカヤミカンやモモに入ってるタネ。それを捨てずに植えてみよう。芽が出てきて楽しい!そこから収穫できる可能性もあってなお楽しい!という一冊。タネ自体を食べるダイズやコメを含めて、身の回りのタネならなんでも蒔いてみよう!といった感じ。
 余り物に思えるタネは、実は有効な資源であることを解説すると共に、F1品種の問題点、食料自給率の低さの問題など、現在の農業を取りまく問題の一端までも優しく解説してくれる一冊。ただ、優しく解説しようとするあまりか、同じ話の繰り返しが多い。
 野外からタネを採ってきて蒔いてみることも紹介されている。それはそれでいいのだけれど、たとえば、日本各地からタンポポのタネを採取してきて蒔いてみようだとか、移入種問題に発展しかねないことも書かれていて、それでいて移入種問題への注意書きなどは書かれていない。この辺りがちょっと不安。農業の現状は憂いていても、生態系までの配慮は足らないと感じた。
 イチゴやスイカは、蒔いたら一年以内に収穫できたりもするらしい。来年はイチゴを蒔いてみようと思う。モモやアボカドも楽しそう。

●「ヘビのひみつ」内山りゅう著、ポプラ社、2009年2月、ISBN978-4-591-10748-5、1200円+税
2009/6/19 ★

 ヘビについての美しい画像が並ぶ写真絵本。表紙見返しには、「この本に出てくるヘビたち」として、アオダイショウ、シマヘビ、ヒバカリ、ヤマカガシ、マムシが紹介されているが、実際に登場する大部分はアオダイショウ。アオダイショウの暮らしのさまざまな場面をとらえた写真が満載。細長いヘビの写真を撮るのは、なかなか難しいと思うのだが、さすがはプロ。ヘビ好きにはたまらない一冊だろう。不満なのは、ジムグリが出て来ないこと。

●「ニホンミツバチと暮らす」飯田辰彦著、福音館書店「たくさんのふしぎ」2008年10月号、667円+税
2009/6/19 ★★

 宮崎県で行われているブンコを使ったニホンミツバチの養蜂を紹介。合わせて、オオスズメバチの巣とりも簡単に紹介。
 山に行ったら斜面に点々と置いてある材木を短く切ったもの。養蜂だとは知っていたけど、ブンコというとは知らなかった。ブンコの作り方から、ブンコの掃除、ハチの導入の仕方、蜂蜜の採取と一通りのことが出てくるので、その気になれば自分でも養蜂ができそう。何が混ざっているかわからないものを買うよりも、高級だというニホンミツバチの蜂蜜を自分で集めてみたくなる。

●「空と森の王者イヌワシとクマタカ」山崎亨著、サンライズ出版、2008年10月、ISBN978-4-88325-372-2、1600円+税
2009/4/23 ★

 イヌワシとクマタカという山の大型猛禽類の研究を引っ張ってきた著者が、猛禽類との関わりをつづり、イヌワシとクマタカ研究の歴史を紹介した一冊。
 イヌワシとの出会い、イヌワシ研究会の設立、映画「イヌワシ風の砦」の撮影。クマタカとの出会い、イヌワシとクマタカの生態・行動の紹介。イヌワシやクマタカについての情報も多いが、むしろ一人のナチュラリストの歩みとして読む本かもしれない。滋賀県職員と猛禽類研究者の二足の草鞋を履いていた著者だが、50歳を機に県庁を退職して、猛禽類一本でがんばっている。東南アジアでの活躍を中心とした第二弾を期待しよう。

● 「キリンが笑う動物園 環境エンリッチメント入門」上野吉一著、岩波科学ライブラリー、2009年1月、ISBN978-4-00-007494-0、1200円+税
2009/4/23 ★

 著者は、京都大学霊長類研究所から東山動物園に移った研究者で、専門は動物福祉学・比較認知行動学らしい。この本では、これからの動物園のあり方について、書いてある。
 あとがきに、「本書は、動物園に関心が高まっているにもかかわらず、動物園に関する知識を体系化する本が、まだ日本にはほとんどないということで書き始めたものである。歴史や展示、そして福祉という観点から、実際の動物園の様子も含めてまとめた。これからの動物園のあり方についてはそれなりに議論できたと思う。」とある。あまり体系化されてるとは思えないし、議論も深まってるようには思えないが、なんとなく本の内容と意図は言い尽くされているかとも思う。
 動物園は単なる見せ物小屋ではなく、文化・教育施設として、研究や教育にも貢献しなくてはならないとか。それに絡んで意図をもった展示づくりをしなくてはならないとか。動物の福祉にも配慮しなくてはならないとか。博物館関係者の目からすると、同意はできるけど、今さらと思ってしまう当たり前の主張が並んでいる感が強い。
 気になったのは、というか数少ない興味を持てたポイントは、「行動展示」や「ランドスケープ・イマージョン(生息地体感型展示)」など展示手法の紹介のパート。少なくともこの本の説明を読む限りでは、見せ物小屋としての機能アップの話ばかりで、教育効果への言及が薄い。そもそも、全体的にも動物園が生態学や行動学を学ぶ場になるという視点が薄いように感じられる。
 一番面白かったのは、100ページにあったこの記述、「美術館や博物館に対しては、効率化の度合いや入場者数の多寡だけでは評価されない、文化施設としての認識が社会にはあると思います」。この後には、「それでも実際はこうした認識さえ崩れつつあり…」と続くのだけど。隣の芝生は青いらしい。

●「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ ハイテク海洋動物学への招待」佐藤克文著、光文社新書、2007年8月、ISBN978-4-334-03416-0、840円+税
2009/4/23 ★

 和歌山のアカウミガメを皮切りに、南極のアデリーペンギンやウェッデルアザラシ、エンペラーペンギンなど、さまざまな海の動物にデータロガーを装着して、その水の中での行動を調べてきた著者が、その研究成果と苦労話を紹介する。
 水の中の動物の行動は、陸上のように直接観察するのが難しい。発振器もうまく働かない。仕方がないので、データロガーと呼ばれる記録装置を装着して、あとから回収。そこに記録されたデータから動物の行動を分析する。この手法が日本で導入されはじめた1980年代、この著者の話も直接聞いたことがあると思う。限られた情報から動物の行動を分析する手法は、とてもまだるっこしくて、あまり感動を覚えなかった。それはまだ、彼の研究が初期で試行錯誤しつつある段階だったからでもあるらしい。時間が経って、まとまった形で読んでみると、なかなか面白い研究だなとは思う。あいかわらずまだるっこしいが…。
 この研究は、データを取る間は機械任せ、データの回収は運任せ。とてものんびり感がただよう。毎日の夜の砂浜の見回りは大変そうに書いてあるけど、たいていのフィールドワーカーはこのくらい別に珍しくもないはず。南極に行っても、装置が壊れたり無くなったら、あとは延々と休憩だったりもするし。一方で、データを回収してからは、延々とデータ解析。こちらは面倒そう。ペンギンやアザラシとたわむれるのは楽しそうだけど…。なぜか、なんとなく薄く反感を持ってしまう。世界各地に楽しそうにでかけているのが、うらやましいのかもしれない。
 と少し斜に構えて読んでいたら、こんなフレーズがあった。「バイオロギングというのは、ハイテクを用いてはいるが、やっているのは水中の博物学なのではなかろうか」「博物学ではサンプルを集めている間は、とくに具体的な研究目的が定まっていないことが多い。とにかくサンプルを集め、その後、それらをじっくり眺めていろいろと考えていく学問であるように見える」。博物学の定義としては反論もありそう。でも、それは確かに博物館がやってることであるし、自分のデータ集めもそんな感じ。意外と近しい仲間であったらしい。

●「好奇心の部屋デロール」今森光彦著、福音館書店たくさんのふしぎ傑作選、2008年11月、ISBN978-4-8340-2374-9、1300円+税
2009/4/15 ☆

 デロールはパリにある標本屋さん。そこには哺乳類や鳥のはく製が並び、引き出しには昆虫標本や化石、貝殻がつまっている。魚の頭、コウモリのホネ、鳥の卵も飾られている。はく製用の目玉や、植物の繊維のプレパラート標本まである。とても不思議な場所。
 博物館を見なれた者としては、こぎれいな収蔵庫のようでもあり、コンパクトなハンズオン展示でもある。という観点から驚くのは、ショーウィンドウで直射日光を浴びまくっているライオンのはく製、すでで子ども達にペタペタさわられているライオンやシマウマのはく製。はく製傷むと思うけど、ましてや売り物のはずなのに…。
 下手な博物館よりは広くて楽しそう。近くまで行くことがあれば、入ってみよう。でも、本はわざわざ買ってみるほどでもないと思う。

●「くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを」伊沢正名著、山と渓谷社、2008年12月、ISBN978-4-635-31028-4、1500円+税
2009/4/15 ★

 キノコ、変形菌、コケなどの写真家として知られる著者が、野糞へのこだわりを書き綴った一冊。高校を中退し、自然保護運動を目指し、挫折し、キノコと出会い、写真家の道を歩み始め、その中で野糞に目覚めていく。野糞から見た自身の半生記でもある。
 毎日、野糞をしたかどうかをこまめに手帳に書いてあるのが可笑しい。それを見返しながら、野糞率なるものを上げようとしはじめるのも可笑しい。少なくとも、今の日本で、毎日、野糞をしようとするのがいかに大変かは、数々のエピソードから伝わってくる。野糞をすることを中心に生活をすると、新しい視点で世の中を見ることができるらしい。それはセンス・オブ・ワンダーではある。ただ、読みながら気になることがいくつかあった。
 山の中での野糞はともかく、住宅地周辺、ましてや都市公園や都会の植え込みでの野糞は軽犯罪法違反なんじゃ? とか。この野糞普及運動が実を結んで、日本人の誰しもが野糞を始めたら大変なことになるんじゃ? とか。著者か編集者が同じことを思ったらしい。エピローグにまさにこの2点について書いてある。軽犯罪法違反については、うまい言い訳は思い付かなかったらしい。開き直っている。日本人総野糞になった時の事については、都市の放棄を謳っている。苦しい〜。
 もう一つ不思議なのは、野糞へのこだわり。挫折したにわか自然保護運動家が、キノコに目覚め、物質循環に興味を持ち、自然に愛のお返しをと思うのは、わからないでもない。でも、その実践は、自動車に乗らないとか、電化製品は使わないとか、自給自足を目指すとか、ゴミを出さないとか、いろいろあってもいいように思う。なぜ、野糞なんだろう? 理屈はいろいろこねてはいるけど、結局は野糞が好きってだけなんだろうな。
 この本には珍しいことに袋とじが付いている。中には、著者の野糞が自然に返るまでのカラー写真が載っているらしい。知人がこの本を買って、何を思ったか最初に袋とじを開けてしまい、大変後悔していた。始めほど生々しい物が載っているので、ショックも倍増だそうな。もし、袋とじを開けるなら、本文を読んで心の準備をしてからにすることをお勧めする。

●「ドングリの木はなぜイモムシ、ケムシだらけなのか?」寺本憲之著、サンライズ出版、2008年11月、ISBN978-4-88325-374-6、1800円+税
2009/2/27 ★

 ドングリをつけるクヌギ、アベマキ、コナラにつく鱗翅類幼虫を長年研究してきた著者が、ドングリの木とイモムシ・ケムシの不思議な関係を紹介する。だけなら、面白いのだろうけど、余計なものが多い。
 第1章は滋賀県の養蚕業の歴史、第2章はカイコ(家蚕)とヤママユ(天蚕)についての養蚕業的な紹介。そしてようやく第3章。「ドングリの木を食べるガ・チョウ類」として、ドングリの木をいかに多様な鱗翅類幼虫が利用しているのか、どんなグループが多いのか、どんなドングリの木が好まれるのかが、自らのデータを基に詳細に紹介される。第4章は、植食性昆虫がどれくらいの食性の幅を持っているかと、食性のシフト自体が種分化につながることの解説。第5章は、ドングリの木と昆虫、とくに鱗翅類の進化、そこに食性がどのように関わってきたかが、著者の私見を交えて紹介される。
 タイトルにひかれて手にとったなら(普通はそのはずだが)、第1章は不要、第2章もあまりいらない。第3章は、とても興味深い。ブナ科植物がそれほど多くの鱗翅類を支えているとは知らなかった。なかでもナラ類の存在の大きさには驚かされる。で、ナラの林は里山として人によって維持されてきたことを考えると、日本の鱗翅類の多様性は人の活動抜きには語れないことになる。とまあ、とても面白いのだが、あいにくタイトルにまでなっている疑問には答えてくれない。第3章の一番最後に「今後これらの関係が解明されることを期待したい」と見事にうっちゃってくれる。
 第4章と第5章は、異食性種分化を強くプッシュ。同所性種分化の一つではなく、異所性種分化・同所性種分化と並ぶ異食性種分化!ととにかく強くプッシュ。異食性種分化は、同所性種分化の一つのタイプと考えるのが普通じゃないの?と思うけど、それは気に入らないらしい。メカニズム自体は、とても普通な感じで、今さら珍しくないような。

●「キャベツにだって花が咲く 知られざる野菜の不思議」稲垣栄洋著、光文社新書、2008年4月、ISBN978-4-334-03450-4、740円+税
2009/2/25 ★

 野菜についての蘊蓄本。とにかく野菜についての豆知識が豊富に紹介される。
 第1章「野菜に咲く花、どんな花?」では、日頃花を見かけることが少ない野菜たちがどんな花をつけるかを紹介。第2章「植物のどこを食べている?」では、ダイコン、カブ、ジャガイモ、サツマイモなどさまざまな野菜のどの部位が食用とされているかが説明される。第3章「野菜はどこから来たのか?」では、野菜のふるさとを紹介。第4章「野菜をちゃんと食べなさい!」では、野菜ジュースやサプリメントだけでは何が足りないかを説明している。
 入り日が薄れる菜の花畑は、野沢菜の畑で、野沢菜ってカブと同じ種だとは知らなかった。ダイコンって根っこだけを食べているわけではなくって、カブとはそこが違うのか〜。といった調子で、第3章までは、完全に蘊蓄本。第4章の説明は、それなりに面白い角度から議論している部分もあるように思う。
 168ページにこんな記述がある。「もしかすると…、人間が野菜が食べるようになったのではなく、野菜が人間に食べられるように仕向けたとは考えられないでしょうか。そして、人間が野菜を改良したのではなく、人間たちにもっと食べさせるように野菜自身が進化を遂げてきたのかもしれません。野菜を利用しているつもりでいる私たち人間のほうが、野菜たちに、まんまと利用されているかもしれないのです。」著者はSFが好きらしい。

●「山に木を植えました」スギヤマカナヨ著、講談社、2008年5月、ISBN978-4-06-214665-4、1300円+税
2009/2/24 ★

 山と海という二つの生態系が川を通じてつながっていることを説明しようとしている本。
 山に木を植えて、林ができると、そこにさまざまな動物が暮らす生態系が形成される。森から流れ出る河川の水には、フルボ酸鉄やいろいろな栄養分が混ざっていて、やがて海に到達。植物プランクトンに取り込まれ、動物プランクトンになり、小魚が食べ、大きな魚が食べ。その大きな魚が我々の食卓に並ぶ。そしてまた、山に木を植えました。でお終い。
 ごくありそうなストーリー。フルボ酸鉄や栄養分がキャラになって水の中を流れて行くのは可愛い。河川の上流から海にかけての周辺環境で暮らす動物がいろいろ登場。改めて驚きはないけど、それなりにながめて楽しくはある。

●「ハダカデバネズミ 女王・兵隊・ふとん係」吉田重人・岡ノ谷一夫著、岩波科学ライブラリー、2008年11月、ISBN978-4-00-007491-9、1500円+税
2009/2/24 ★★

 ハダカデバネズミという変わった名前の変わった動物を紹介した本。であると同時に、ハダカデバネズミに取り付かれた変わった研究室の変わった研究者たちを紹介した本でもある。著者の二人が交互にそれぞれの視点で執筆するという変わった趣向がとられている。ハダカデバネズミは一部業界では、真社会性の哺乳類として広く知られていたが、その実態を日本語で詳しく紹介したはじめての本。
 1章から順に、ハダカデバネズミを日本へ連れてくる経緯、ハダカデバネズミの系統・形態、真社会性のハダカデバネズミの社会構造とくにカースト、研究の歴史、飼育こぼれ話、脳と聴覚と音声に関する研究の経過、エピローグといった構成。岩波科学ライブラリーとは思えないくだけた口調のとぼけた文章が並ぶ。とても読みやすい。
 岡ノ谷研究室は、鳥のヴォーカルコミュニケーションを研究しているのだと思っていたが、ヴォーカルコミュニケーション一般がテーマで、ずいぶん昔からデバに取り付かれていたんだなぁという印象。デバは、想像以上に変わった生き物だった。やたら長生きだし、真社会性といいながら必ずしも昆虫の真社会性と同じではなさそう。もう一種ダマラランドデバネズミという真社会性の哺乳類がいるらしい。これも岡ノ谷研究室で扱う予定はないのだろうか?

●「Google Earthでみる地球の歴史」後藤和久著、岩波科学ライブラリー、2008年10月、ISBN978-4-00-007489-6、1500円+税
2009/2/22 ★

 グーグルアースで世界旅行をしよう! 地質や地球の歴史に詳しいガイド付き。といった本。
 もともとは、グーグルアースを使って、地球の歴史を解説しようと思ったのだが、グーグルアースで見られるようなマクロな画像から説明するのは無理と挫折したらしい。で、代わりに名所を中心に、地質や地球の歴史についての解説付きで次々と紹介することにしたらしい。
 名所案内はともかく、一番おもしろかったのは、イントロ。最新の地図が手に入らないキューバでの調査の前に、グーグルアースでどこを調査するか目星をつける。現地調査で目当ての地層を見つける目星をつけるのに、グーグルアースはとても有効なツールになるらしい。
 とりあえず、この本を片手に、実際にグーグルアースで遊んでみたら楽しいかもしれない。

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