自然史関係の本の紹介(2006年下半期分)

【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】

和田の鳥小屋のTOPに戻る

●「生き物屋図鑑」盛口満著、木魂社、2006年12月、ISBN4-87746-100-0、1700円+税
2006/12/20 ★

 ゲッチョが広島、大阪、屋久島、沖縄で出会った特定の生物群にのめり込む変人たちを紹介した本。登場する変人は約40名。
 ターゲットとする生物群によって、同じ場所に行っても、同じ物を前にしていても、見てる物が違うというのは、とってもおもしろい。でもまあ、後はさほど目を引く部分はないかと。変人による、変人ファンのための、変人の紹介といったところか。
 読めばそれなりに面白いのだが、大きな不満が残る。生き物屋はもっと変人のはず。周囲にもっと迷惑をかけているはず。著者自身が変人ファンなのが、この本のインパクトを弱くしていると思う。

●「雷鳥が語りかけるもの」中村浩志著、山と渓谷社、2006年9月、ISBN4-635-23006-6、1500円+税
2006/12/17 ★

 信州大学の故羽田健三にとって、ライチョウは特別な存在だったらしい。その愛弟子であるところの著者が、師の意志を継ぎ、ライチョウの調査と保護活動に携わる。日本のライチョウ研究第二世代のイントロのような、そして弟子の決意表明のような本。
 同じ種ライチョウ(Lagopus mutus)なのに、日本のライチョウは人を怖がらないが、外国のライチョウは人の姿を見たらすぐ逃げる。というエピソードが繰り返し語られる。そこから、文化論にまで踏み込んでいく。一方で、ライチョウについては、研究の歴史やエピソードは語られるものの、調査データは、分布程度しか示されない。ライチョウの生態や生活史を紹介するというよりは、著者とライチョウの関わりを語ることが主眼となっているからだろう。
 高山へのサルやシカの進出、地球温暖化など、ライチョウに迫り来る危機は深刻である。すでに日本の野生の繁殖個体群は絶滅したトキやコウノトリの増殖に大金を投じるよりは、今こそライチョウの保護に金を投入しろ! という著者の主張(そこまではっきりは書いてないような、けっこう書いてるような)は、それなりに納得できるが、著者のような立場の人が書いた事には少し驚いた。
 この本全体には、師である羽田健三への著者の敬愛が漂いまくっている。生前の羽田さんの人となりを知るわけではないけど、少なくともこの本に紹介されているエピソードを読む限り、羽田健三はかなり頑固で扱いにくそうな人物。どうしてこんなに敬愛されてるのか、とっても不思議。まあ、そもそも師弟関係自体、あまり理解できないんだけど…。

●「ダーウィンのミミズ研究」新妻昭夫著・杉田比呂美絵、福音館書店、1996年6月号、ISBN4-8340-1679-X、1300円+税
2006/12/13 ★

 進化論で有名なダーウィンが実は40年以上にわたってミミズの研究をしていたことを知った動物学者の著者が、、ダーウィンがどんなミミズ研究をしていたか、その足跡をたどる。という趣向で、ダーウィンのミミズ研究を紹介する。最後に、ダーウィンが白亜をまいて、その上にミミズがどのくらい肥沃土を積み上げていくかを調べた場所を、約150年ぶりにもう一度掘り返して、その後の変化を検証しようと試み、見つかりませんでした、で終わる。
 この本を読めば、ダーウィンは進化について以上に、ミミズについて興味を持ち。少なくとも実証的研究としてははるかにいい仕事をしたらしいことがわかる。そして要するに、ダーウィンは日常の小さな事が積み重なって、大きな変化につながるって話が気になって仕方がなかったらしいとわかる。自然選択による生物の進化しかり。ミミズによる肥沃土の形成しかり。研究者って、結局自分が気になって仕方がない事を、あれこれと突き詰めていく人たちなのかも。と、一般化して自分の進む道を考えてみようかと思ってみたり。

●「野生動物と共存できるか 保全生態学入門」高槻成紀著、岩波ジュニア新書、2006年6月、ISBN4-00-500536-5、780円+税
2006/12/3 ★

 哺乳類を主な題材に、動物好きの子ども向けに保全生態学を説明する。同時に、人と野生動物との付き合い方について、さらには自然観にまで踏み込んで、著者の考えをソフトに紹介する。
 野生動物といいながら、出てくる大部分が中型〜大型の哺乳類。著者の研究対象が、シカを中心に、モウコガゼル、アジアゾウなどと並ぶので当然と言えば当然。当然だけどちょっと片寄ってるかな〜、とも思う。国内で人間との関係が問題になっている動物としても、クマ、サル、シカ、ヤギが並ぶだけ。これって、哺乳類で大きな問題になってる4パターンって感じ。だから、イノシシやアライグマは抜きなんだろうか? 海外の事例についても、モンゴルのモウコガゼルと、スリランカのアジアゾウが出てくるだけ。どちらの国でも、現地の人が保全に協力的という意味で、むしろ例外的な事例なんじゃないかと思うな〜。
 ともあれ、動物好きの中高生に読んでもらうとしたら、人気の高そうな大型哺乳類を中心にすえるのは間違ってない感じ。保全生態学の解説になってるし、野生動物との付き合い方を考え直すきっかけにもなりそう。深刻な問題を扱っている割には、全体的に牧歌的というか、現実のきれいな側面しか紹介していない感が強いが、子ども向けだからなのか?
 いずれにしても、この本の内容や書き方は、著者の研究者人生をよく表しているように感じた。もし、海外での保護事業でもアフリカの事例に接していたら、こんな風には書けなかったのはないかな。クマ問題に深く関わっていたなら、もっと切迫した書き方になったんじゃなかろうか?

●「蘇るコウノトリ 野生復帰から地域再生へ」菊池直樹著、東京大学出版会、2006年8月、ISBN4-13-063326-0、2800円+税
2006/10/20 ★

 兵庫県立コウノトリの郷公園の研究員で、環境社会学の研究者である著者が、豊岡市のコウノトリの歴史と現状を紹介するとともに、地元の人々のコウノトリについての語りを収めている。同時に、みずからの職場の活動の広報の一環もかねている感じ。
 第1章はイントロ。第2章は、かつてのコウノトリの生息状況と、繁殖個体群絶滅への道筋、そして復活を目指した取り組み。第3章では、著者が豊岡で大々的に行った聞き取り調査の、方法論の説明。第4章と第5章で聞き取りの結果を紹介。第6章は、復習。第7章は、抱負。
 コウノトリの野生復帰のためには、コウノトリを増やし、コウノトリが生活できる自然環境を整備するだけでなく、地域住民がコウノトリと共に暮らすことを受け入れる状況を整える必要がある。いわば人とコウノトリとの係わりを再構築することになる。その参考にするために、かつての人とコウノトリとの係わりを明らかにしていく。こうした著者の主張はごもっとも。さらに聞き取りの中で浮かび上がる人と田んぼとの係わりも興味深い。なのだが、全体に構成がまわりくどい。誰々がああいった、こういった、という紹介の間に繰り返し同じようなテーマが繰り返される。ある種の音楽のような…。読んでいて疲れる。
 ともあれこの本を読んで、コウノトリへの取り組みを見直したのは事実。今まではコウノトリの野生復帰〜?と斜めに見ていたし、そもそもメジャーな種を旗頭にすえた環境運動はあまり好きではない。しかし、コウノトリを御旗に立てることで、地域の自然を見つめ直す契機になるのなら、それは大いにけっこうだと思う。
 それにしても、御旗がコウノトリだと、こうも多くの人が動き出すのかと思うと、コウノトリパワーには恐れ入る。惜しむらくは、ケーススタディとしては、他の地域へ敷衍できないのが難点か。オオタカではこうもリアクションはよくないだろうし。さらに言えば、コウノトリパワーは、皮肉なことにコウノトリが豊岡限定で、数も極めて少ないからこそ発揮されている。今度、野生復帰計画が順調に進み、日本の里にコウノトリが復活していったとき、どうやって活動を維持していくのかが、遠い将来に待っている大きな課題だろう。

●「恐竜ホネホネ学」犬塚則久著、NHKブックス、2006年6月、ISBN4-14-091061-5、1020円+税
2006/10/19 ★

 化石哺乳類や恐竜などを化石から復元する大家が、そのノウハウの一端を一般向けに語った本。
 最初の3章はイントロ。展示されている恐竜の骨格を見た時の目の付け所を紹介、恐竜の骨の概説、魚から恐竜までの骨の進化の歴史が語られていく。第4章で、古生物の復元とは何か、組み立てとの違い、どんな情報が復元の際に参考になるのかをサラッと語る。そして、残る4章が各論。姿勢、生体、運動、生活の復元について順に語られる。
 構成は一見体系だってるようだが、中身は自分のもっている蘊蓄を次々と繰り出しているだけで、あまり整理されていない。興味深い記述は随所に見られるが、とっても読みにくい。なにより用語の説明がほとんどない。恐竜の各部の骨の名称すら2章の途中にようやく出てくる始末。骨学関連、解剖学関連のさまざまな用語が駆使されるが、その大部分に充分な説明はない。よほどの予備知識がないと、完全に理解して読み進めるのは難しいだろう。そういう意味で、いったい誰を想定して書いてるんだろうと、疑問に思わずにはいられない。
 一番よく理解できたのは、予想通り恐竜の復元画の色がいい加減だということか。恐竜の生態についての話もかなり怪しい感じ。そもそも博物館の恐竜の骨骼の復元すら、突っ込みどころだらけらしい。一度、この本を持って、恐竜の展示を見に行くといいのかもしれない。

●「ミジンコはすごい!」花里孝幸著、岩波ジュニア新書、2006年4月、ISBN4-00-800532-2、780円+税
2006/10/18 ★★

 ミジンコを含む湖沼の群集生態学の研究者である著者が、自身の研究成果を豊富に交えて、愛を込めてミジンコを紹介した本。子どもを相手にするような語尾がひっかかるが、全体に読みやすい文体で書かれている。
 第1章はイントロ。ミジンコの頭が尖る話がつかみ。あとは、植物プランクトン、他の動物プランクトン、魚といったミジンコが暮らす湖沼の他の住人が紹介され、湖沼の食物網の全体像が描かれる。第2章では、ミジンコの形態、繁殖と成長、生態、そしてさまざまな種類のミジンコたちが紹介される。第3章ではミジンコとその捕食者である魚との関係、その延長線上で第4章では水環境との係わりが述べられる。第5章では、水槽でのミジンコの飼育の仕方と、それを用いた実験例が紹介される。第6章は蛇足。
 第3章と第4章は、生物の種間相互作用に興味のある人には、とてもお勧めな内容。植物プランクトン−ミジンコ(ダフニア、ゾウミジンコ)−子魚−魚食魚に、ワムシといったミジンコの競争者、フサカなどの無脊椎捕食者を交えたシステムの動態はとてもおもしろい。それが、湖沼の透明度という目に見える結果につながるのもわかりやすい。
 ただ、いくつかの点で説明不足と思われる部分が見受けられるのは残念。湖に外来魚食魚を放す実験をして、湖の透明度が上がることを示している。また、富栄養化した池でも、ミジンコを食べる魚を減らすことで、池の透明度が上がることが力説される。それ自体は興味深い事実なのだが、だからと言って、どこにでも魚食魚を放したらいいということにはならない。透明度が上がれば、富栄養化の問題が解決するわけでもない。もちろんよく読めば、むやみとブラックバスを放しまくるのは問題であるといった事はちゃんと書かれているのだが、世の中そんなに注意深い読者ばかりではないだろう。もっと、外来生物を放すことの何が問題なのかをきちんと説明すべきだろう。この本を読んで透明度の低い池にブラックバスを放しまくる人が出現しないことを祈ろう。
 といった懸念はともかく、ミジンコの世界が面白いことはよくわかった。大きさも0.2mmから4mm以上と思いのほか大きい。今度、実体顕微鏡で見てみようと思った。とんがり頭かどうかを確認するだけでも面白いかもしれない。

●「クマムシ?! 小さな怪物」鈴木忠著、岩波科学ライブラリー、2006年8月、ISBN4-00-007462-8、1300円+税
2006/10/15 ★★

 思い起こせば、20年近くも前のこと。先輩にクマムシを研究している人がいた。その人からクマムシについて、いろいろ聞かされたことがある。今では誇張されて流布されている感もあるクマムシはなかなか知らないという「伝説」も色々と吹き込まれた。もっとも一番印象に残っているのは、クマムシを研究しようと思い立っただけで、今なら日本で5本の指に入れる!という話だったが…。
 今ではなぜかクマムシは、不死身伝説とともに多くの人に知られるようになった。しかし、その実体をきちんと紹介した一般書はなく、曖昧な伝説のみが広まっていた。そこに燦然と登場した本書。日本初のクマムシの普及書。前半では、著者がクマムシ研究に手を染めていく経過と共に、クマムシの分類学的位置、形態、食性、生活史などが紹介される。飼育の苦労や、意外と短い一生などが印象的。後半では、クマムシの不死身伝説の真実が語られる。最後には、コケの中にいるクマムシの観察法も紹介される。
 著者は、クマムシの研究者としては後発組。著者自身の研究成果に基づく部分は少ない。しかし、それがかえってクマムシの普及書を書く上でプラスだったかもしれない。全体にバランスのとれたクマムシ紹介本になっている。口絵の、殻の中でこっちを向いてるクマムシ。58ページのVサインをしてるデュダルジャンのクマムシの図。改めてクマムシって可愛いな〜、と思わせる。読者カードを送って(2006年10月31日必着)、クマムシのぬいぐるみGETを目指そうと思う。

●「ビーチコーミング学」池田等著、東京書籍、2005年8月、ISBN4-487-80061-7、1800円+税
2006/8/24 ★

 海岸にうち上がった物を拾うのがビーチコーミング。湘南の海岸で長年にわたってビーチコーミングを続けてきた著者が、ちょっとした文章を付けて、拾った物を紹介した本。
 第1章「打ち上げのメカニズム」では、どんな場所で、どんな時に、どんな風に、どこから来た物が拾えるかを、順に紹介してくれる。第2章「打ち上げ物百科」では、ちょっとおもしろい打ち上げ物を紹介。第3章「知的ビーチコーミング」では、うち上がった物から、何がわかるかに焦点を当てて紹介。第4章「環境を観る」は、第3章の変奏曲。第5章「アート&コレクション」は、形の面白さを紹介したと思ったら、海藻おしば、宝貝いろいろ、珍物と雑多な寄せ集め。最後に湘南海岸のビーチコーマー5名が紹介される。第6章「まとめ」は、少し理屈っぽく、結論、ルール、活用法、海岸清掃、ゴミ自慢、コツと持ち物、そして最後は打ち上げ物夜話。なんとか内容を整理しようとはしてるようだが、きちんとした構成はなく、拾った物自慢をしてるだけの感は否めない。
 海岸に落ちているだけなら、ゴミにしか見えない物も、拾って集めて並べて写真に撮ると、ちょっといい感じのコレクションに早変わり。自分も一度ビーチコーミングをしてみようか、と思わせる本。しかし、タイトルを見て、ビーチコーミングのデータから何がわかるかを、データを基に示してくれることを期待したら、完全に裏切られる。

●「クサレケカビのクー」越智典子文・伊沢正名写真・塩田雅紀絵、福音館書店「たくさんのふしぎ」2006年7月号、2006年7月、667円+税
2006/8/21 ★★

 すがたを見せない人間の主人公と、クサレケカビのクーとの会話を軸に、カビについてのさまざまな事が紹介されていく。表紙の目玉の親父の正体も、裏表紙のカビの生えた手形の理由も、中身を読めばわかる。もの知らずの主人公と、ガイドのクーの会話は、わざとらしいものの、それなりに自然に話をつなげていってくれる。
 表紙をはじめとして、パラパラとめくるだけで、きれいな写真が多いことに気付くだろう。気持ちが悪いという先入観を捨てさえすれば、これだけ美しい色と形の世界が拡がるのかと、カビの美しさに感心させられる。ジャム、餅、御飯。この撮影のためにわざとカビを生やしたんだろうけど、原形をとどめない変貌ぶりにも感心させられる。
 美しいカビの写真もいいけれど、カビの生態の奥の深さもかいま見せてくれる。クサレケカビの胞子を食べるトビムシ。センチュウをくくり罠で捕まえて食べる線虫捕食菌。そんなんがいるのか〜、と思うと同時に、ようこんなん撮影したなと思う。
 唯一、気に入らないのは、最後に付いてるおまけの「ふしぎ新聞」。生命の星・地球博物館の特別展の宣伝が付いてるやないか! 監修者になって宣伝に利用する。そんなタイアップの方法があったとは…。

●「とりぱん1」とりのなん子著、講談社モーニングワイドKC、2006年3月、ISBN4-06-337594-3、591円+税
2006/8/18 ☆

 東北の某県在住の著者が、庭の餌台にやってくる鳥を中心に、自然や生物との交流を描いたマンガの第1巻。と書くと、環境問題に取り組んだり、癒し系だったりするマンガをイメージしそうだが、これはむしろギャグマンガ。動物たちはユーモラスで、よくも悪くも環境問題への意識は薄い。4コママンガ6〜10がセットで毎回連載という、例のあのパターン。
 著者は、鳥を含め、生物への知識はさほど多くないのは明らか。そのおかげで、妙に知識から入った輩には書けないような見方で、鳥の行動を書く事ができているのかもしれない。でも、明らかな感違いがあるので、とりあえずダメだし。68ページの「センダイムシクイらしい」とあるのは、どう考えてもセンダイムシクイではないでしょう。2羽で道路に降りていて、飛び立つ時に羽に黄色が見えるセンダイムシクイはいません。カワラヒワなんでは? 87ページの「キョウジョシギかハマシギ(たぶん)の大群が並木にびっしり何百羽と」というのはありえません。ギャーとか鳴いてる感じからしても、やはりムクドリかと。
 まあ、鳥がこれだけ描かれるマンガは少ないので(「ウッドノート」以来か?)、鳥屋としては楽しく読みました。が、まあ得るものはあまりない感じ。暇つぶしの読む程度のものかと。

●「進化生物学への道 ドリトル先生から利己的遺伝子へ」長谷川真理子著、岩波書店、2006年1月、ISBN4-00-026989-5、1800円+税
2006/8/17 ★

 さまざまな分野の人が、魅力ある本とどのように出会い、自分がどのように変わっていったかを自在に語る、というシリーズの1冊。霊長類研究からスタートし、進化生物学で多くの本を書いている著者が、本をネタに自らの半世紀を語る。
 各章で紹介される主な本を見ていけば、なんとなく流れはわかるかも。講談社の学習大図鑑、ドリトル先生シリーズ、「ソロモンの指輪」、「森の隣人」、「利己的な遺伝子」、ダーウィンのとくに「人間の進化と性淘汰」、「生存する脳」。動物好きの少女が、大学で霊長類学の道に進み、アフリカでさまざまな研究をし、やがて社会生物学に目覚め、進化生物学を研究の中心にすえ、やがて人の研究に目を向けていく。
 「ソロモンの指輪」までは、動物好きのかなり多くの人が、同じように通る道だろうと思う。その後、アフリカに行ってチンパンジー研究をするのは、かなり限られた人だろう。そして、それがちょうど社会生物学の論争の時代に当たるとは、なかなか希有な展開。すでにパラダイムシフトが終わってからしか知らない世代としては、当時の学会大会の雰囲気がどんな感じだったのかは、とても興味深い。
 全体的には、さほど自分から勉強するわけではなく、素直に教えられたことを吸収していったかのような印象を受けた。そうなんだろうか? どうしてダーウィンを気に入ったのかは、今一つ謎。進化生物学を中心にすえるなら、やはりダーウィンってことなら、やはり素直〜、って感じ。そして、最後には人間の研究をしたがるもんなんだねぇ。これもありがちで、とっても素直な感じがする。素直に真面目に勉強していけば、立派な研究者になれるのを実証していると言っていいのかもしれない。
 本を紹介し、半世紀を語りながらも、進化生物学の理論を説明しようとする。限られた紙面では、それはちょっと欲張りすぎかも。

和田の鳥小屋のTOPに戻る