SF関係の本の紹介(1999年上半期分)

【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】


和田の鳥小屋のTOPに戻る


●「大いなる復活の時」(上・下)サラ・ゼッテル、1999年、早川文庫SF、(上)760円(下)720円、(上)ISBN4-15-011273(下)ISBN4-15-011274-6
19990630 ★★

 人類が宇宙に拡がって、地球の存在も忘れ、さまざまなまるで異なる種族に分化している遠未来が舞台。’無名秘力の施界’という惑星出身の謎の力を持つ二人が主人公。この’無名秘力の施界’には謎めいた伝説があって、さらに謎の大きな力が眠っているらしい。というわけで、宇宙の二つの勢力がこの’無名秘力の施界’を手に入れようと、さまざまな策略をめぐらす。

 解説では、間抜けなことにアシモフの銀河帝国興亡史やハインラインの宇宙史を引き合いに出しているけど、この作品のおもしろさが通じているのはハーバートのデューンでしょう。’無名秘力の施界’のカースト社会、ルドラント・ヴィタイ属の独特の社会構造、シセル異族の生態。どれも魅力的な文化を持ってる。こういった様々な変わった文化様式を描き出しているところもフランク・ハーバートに似ている。宇宙のどこに行っても、人間でも異星人でも、みーんな現代アメリカ人と同じなアシモフとどこが似てるっちゅうねん!

●「垂直世界の戦士」K・W・ジーター、1998年、早川文庫SF、700円、ISBN4-15-011248-7
19990616 ★

 馬鹿でっかいシリンダー状の世界の垂直の外壁での暮らしを描いている。みんなゲーム感覚での闘いに明け暮れていて、主人公は一匹狼の意匠デザイナーってところ。見てはならないものを見てしまって、陰謀に巻き込まれて…、という話。

 描かれている世界は謎めいていて、その世界や社会構造、エンジェルの起源など、おもしろい話題はいっぱいあるのに、一切謎は解明されない。それでいて、その謎めかした部分以外にとくに面白いところはない。まるで、もっと長い小説の一つのエピソード、といった感じ。

●「フリーダムズ・チョイス」アン・マキャフリイ、1999年、早川文庫SF、900円、ISBN4-15-011270-3
19990615 ☆

 「フリーダムズ・ランディング」の続編。地球を侵略した異星人によって、無人の惑星に降ろされた地球人や他の奴隷にされてる宇宙人が、自分たちの生活を作り上げた前作に続き、今度は地球を侵略した異星人への反撃を開始するってところ。とくに読む必要はありません。

●「キリンヤガ」マイク・レズニック、1999年、早川文庫SF、820円、ISBN4-15-011272-X
19990524 ★★

 アフリカのキクユ族のユートピアとして創られたキリンヤガという小惑星の物語の連作短編集、というかオムニバス長編というか。SF的な設定で書かれてはいるが、寓話集といった方が適当かもしれない。あるいはユートピアや伝統文化についての文化人類学的SFとでも言うか。全体が寓話であると同時に、物語の中でもさまざまな寓話が物語られる。物語を書かせると、やっぱりレズニックはうまい。各種の賞は当然やね。

 ここで出てくるユートピアは、西洋文明に基ずく便利な生活を捨て、伝統的なキクユ族の生活様式を取り戻そうというもの。祈祷師と酋長のもと、電気も薬もない生活。祈祷師が主人公で、西洋文明の良いところだけでも取り入れようと言う動きをことごとく阻止していく。そこで出てくる説明が、生態学的にとても気になる。
 「われわれの社会は、雑多な人間と習慣と伝統を寄せ集めたものではない。サバンナの植物と動物たちの関係のように、すべての断片がたがいに依存しあっている複雑な組織体なのだ。もしも草を焼いたら、それを食べるインパラを殺すだけでなく、インパラを食べる肉食獣や、肉食獣にたかるダニや蝿、死んだ獣の肉を食べるハゲワシやコウノトリをも殺すことになる。一部を殺せば全体を殺すことになるのだ」
 生物群集はたいてい変化にもっと柔軟に反応するように思うし、全体を殺さずに常に変化していっていると思うけどな…。それにしても、人間の社会や文化にこういった相互依存的な概念を取り入れた論は、一般的なのか? ちなみにここででてくるコウノトリは、ハゲコウのこと。

 ユートピアは、少なくとも主人公が目指したユートピアは、予想通り挫折してしまう。その原因は、2つ。外部に多くの人にとって魅力いっぱいの便利な生活があることを隠せなかったこと。そしてキリンヤガに持ち込んだシステムに、捕食者(ライオンやヒョウなどなど)や他部族といった欠けている要素があったこと。
 それにしても主人公はなぜそれほど長い伝統のない’伝統的生活’を取り戻そうとしたのか。本当の’伝統的生活’ってゆうのは、ユートピアと同様、存在しないのかも知れない。

●「幻惑の極微機械」(上・下)リンダ・ナガタ、1999年、早川文庫SF、(上)660円(下)660円、(上)ISBN4-15-011262-2(下)ISBN4-15-011263-0
19990517 ★★

 「極微機械ボーア・メイカー」の続編、やけど基本設定などが共通してるだけで、とくに物語につながりはない。宇宙に人類の居住世界が拡がった遠未来のとある惑星(というか主に軌道エレベーター)が舞台。解説にも書いてあるけど、多様なナノマシンが普遍化した世界が描かれているだけでなく、ダイソン球、意識を持った巨大宇宙船、失われた宇宙種族、その種族が残し自立してあちこちを破壊してまわっている宇宙兵器。などなどSFガジェットには事欠かない。それが全体として、独特な世界を創り出している。

 ミームをいわばウイルスとのアナロジーで捉えて、それを操作するためにナノマシンを利用する。という考え方は、「フェアリイ・ランド」をはじめいくつかのSFで描かれているが、宗教的共同体を作り上げるのは初めてでは? 一種の超有機体として描かれる宗教的共同体コミュニオンのイメージが、とてもよかった。細胞内共生のアナロジーも、はまっていると思う。

●「ミクロの決死圏2-目的地は脳-」(上・下)アイザック・アシモフ、1999年、早川文庫SF、(上)640円(下)640円、(上)ISBN4-15-011265-7(下)ISBN4-15-011266-5
19990503 ☆

 「ミクロの決死圏2」とあるけど、ミクロ化して人体に潜り込むのが同じだけで、「ミクロの決死圏」とつながりはない。あいかわらずアシモフらしい不必要なわざとらしい議論とともに話は進んでいく。

 主人公のアメリカの科学者が、ソ連に誘拐されて、ミクロ化しての脳への冒険に無理矢理連れて行かれる。結局、ずーっと主人公が不平を言ってるだけ。要するに最後の一行が書きたかっただけなのでは?短編で充分だったはず。

●「星ぼしの荒野から」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、1999年、早川文庫SF、840円、ISBN4-15-011267-3
19990422 ★★★

 ティプトリーの4番目の短編集。アリス・シェルドンという正体が知られてからの作品が収められているらしい。そのせいなのか、ティプトリーってこんなにフェミニズム色が強かったんやなあ、と思った。

 10編が収められているが、その内8編までは、地球外の存在が人間に対して働きかけを行なう話。その内3編では、人間が他人や動物に行なっていることを、宇宙人が人間に対して行なったらどんな風に見えるかが描かれる。地球外の存在の干渉を描くことによって、通常の状況ではあり得ない視点を提供する、これこそ正にSF。絶対にお勧め。
 とくにお気に入りは、「おお、わが姉妹よ、光満つるその顔よ!」「ラセンウジバエ解決法」「われら<夢>を盗みし者」「たおやかな狂える手に」。いずれも暗い終わり方やけど、とてもよかった。

●「復讐の船」S・M・スターリング、1999年、創元SF文庫、820円、ISBN4-488-68310-X
19990415 ☆

 アン・マキャフリーが始めた「歌う船」シリーズの第6弾。「伝説の船」と同じで、若手に任せてしまっている。今までは、サイボーグ宇宙船と、その手足となるべく乗っている人間との絆という、SFらしい設定があったが、この第6弾ではそれすらも完全に無視。これではマフィアに乗り込んで、さらわれた友人を助ける話と変わらない。SFではない。

●「量子宇宙干渉機」J・P・ホーガン、1998年、創元SF文庫、920円、ISBN4-488-66319-2
19990405 ★★

 平行宇宙と情報のやりとりができる機械、ってゆうかコンピューターをめぐる科学者と軍人のお話。平行宇宙が出てくるSFはいろいろあるけれど、平行宇宙と情報のやり取りができたら、という設定でこれだけいろいろ見せてくれたSFはないと思う。

 とくに「多元宇宙における相互コミュニケーション」によって、正しい問題解決が導かれる(無数の平行宇宙で同じ問題の解決が試みられ、相互コミュニケーションの結果、正しい解決法を持ってくることができる、という説明でいいのかな?)、ってゆう部分が、訳がわからんけどおもしろい。さらにそれが合目的的な進化のメカニズムとしても機能していたとは…。無数の宇宙で無数の試行錯誤が行なわれ、うまくいったやり方が採用されることによって、合目的的な進化がすばやく起きる。ものすごい数での並列処理。

●「新艦長着任!」(上・下)デイヴィッド・ウェーバー、1999年、早川文庫SF、(上)640円(下)640円、(上)ISBN4-15-011258-4(下)ISBN4-15-011259-2
19990321 ☆

 「紅の勇者オナー・ハリントン」というシリーズの第1弾。真面目で有能な女艦長が、軍内でのいじめにめげず、風紀を正して、侵略者を撃退し、周りから認められていく。といった感じのストーリー。いわゆるミリタリーSFです。部隊が宇宙なだけで、中身はSFではありません。

●「造物主の選択」J・P・ホーガン、1999年、創元SF文庫、800円、ISBN4-488-66320-6
19990316 ★★

 「造物主の掟」の続編。前編では、土星の衛星のタイタンの知性を持った機械生命体タロイドとのファーストコンタクトを描かれている。この続編までも通じて、地球人側は、タロイドを封建社会に留めて利用しようとする一派と、心霊術士ザンベンドルフを中心とするタロイドの自由を守ろうとする一派が対立している。そして今回は、タロイドを創った(?)異星人が登場する。ストーリーは、ザンベンドルフが、口八丁手八丁でタロイドを守るというもの。それ自体とてもおもしろく読める。

 しかし何よりもいいのは、機械生命達からなるタイタンの生態系(地球上の生物と機械の立場がちょうど入れ替わっている)。機械のガラクタが山積みになったような森を、スカベンジャーロボットが徘徊して、物質循環が行われている。生物が創り出した森とは何なのかを考えてしまう。
 さらに異星人が作った自動工場のプログラムに障害が起きて、機械が自己複製する独特のシステムができあがってしまう。当然、自己複製する機械には自然選択が働き、そのうちに有性生殖までもが進化する。第1部の最後の10ページには、さらに個体選択とグループ選択の絡みまで描かれている。この部分だけでも充分読む価値がある。というかSF的におもしろいのはここだけ。同じような内容は、「造物主の掟」にもあったのか…。

●「フェアリイ・ランド」ポール・J・マコーリイ、1999年、早川書房、2500円、ISBN4-15-208206-2
19990310 ★★

 いわゆるナノテクノロジーとバイオテクノロジーが高度に発達した未来。ナノマシンやウイルスを利用して、人間の精神、というか感情や考えを操作することが可能な世界。一方で、ドールと呼ばれるペットとも奴隷ともつかないバイオテクノロジーの産物の動物が存在している。知性を持つように操作されたドールが、フェアリイと呼ばれ、このフェアリイと最初にフェアリイを創り出した女性が中心になって話は進む。ストーリーは割とどうでもよくって、描かれている世界がおもしろい。

 人間の感情の操作は、当然のようにドラッグ(精神活性ウイルスなどと言って)としての利用が蔓延する結果を生む。一方で、他人の考えのコントロールは、政治や宗教の強力な武器になる。そしてウイルスやナノマシンが広める考えは、ミームと呼ばれます。つまりウイルスやナノマシンという形で、ミームが実体を持つわけで。でもそれでは、ミームは生物と本質的には変わらなくなって…、なんか本来のミームって何だっけかと考えてしまいました。
 他人の感情や考えをおもしろがって操作しようとするミーム・ハッカーがいたり、妙なミームに対抗するワクチンがあったりと、むしろミームはコンピューターウイルスのようになっています。とにかく、この実体を持ったミームが蔓延した世界がとってもおもしろかった。

●「プラネットハザード 惑星探査員帰還せず」(上・下)ジェイムス・アラン・ガードナー、1999年、早川文庫SF、(上)620円(下)620円、(上)ISBN4-15-011260-6(下)ISBN4-15-011261-4
19990301 ☆

 人類が恒星間宇宙に進出して、多くの惑星に住んでいる未来。新たな惑星の探検という危険な仕事は、いわば消耗品扱いされているECMという部隊が行なう事になっている。で、このECMは、身体に多少とも障害があったり、見栄えのよくない者だけで構成されている。主人公は、送り込まれて未だに生還した者がいない惑星への降下を命じられる。その惑星に降りてみると…。てな話です。とくにどうということのない展開が続きます。

 もう一つの大きな設定は、人類よりはるかに進歩した(少なくともテクノロジー的には)異星人達によって、恒星間宇宙は仕切られているっていう点。この異星人達は正義の味方で、殺人者のような悪者が、惑星から宇宙に出ると、謎のテクノロジーによってその者を殺してしまいます。この異星人達の集まる場面は、昔昔のハミルトンかなんかのスペースオペラを思い出してしまった。

●「ダスト」チャールズ・ペレグリーノ、1998年、ソニー・マガジンズ、1800円、ISBN4-7897-1330-X
19990215 ★

 昆虫が絶滅することによって、地球の生態系に大変化が起こり、人類が滅亡の危機に瀕するという話。生物学、古生物学、アメリカの軍事関係などの著者の蘊蓄ばかりが、随所で語られ、とても鬱陶しい。アリ研究の大家ウィルソンや、チスイコウモリの研究をしているシャットなど、実在の研究者(そのまんまかな?)が登場する。前半は昆虫が絶滅した結果、生態系にどんな変化が生じるかが描かれているが、なぜかダニとチスイコウモリ(とプリオンと菌類)ばっかり出てくる。後半は、文明崩壊の危機に科学がいかに立ち向かうかといったありきたりの話。例によって邪魔する奴がでてくるし。

 昆虫が突然絶滅した理由は結局謎のまま。結局一番有力な仮説としてでてくる遺伝的時計仮説(昆虫が数千万年に一度大量絶滅する遺伝子を持っているという仮説)は、まるでナンセンスだと思う。数千万世代以上に渡って機能しない遺伝子が、突然変異の影響を受けずに機能を維持できるって?
 脈絡がいい加減な科学者の会話。文明の崩壊を急激にもたらす為だけとしか思えないダニやプランクトンや菌類の突然の攻撃性や毒性の増加。などなど気になる点ばっかりでした。地球生態系全体に自然選択がかかる、という発言もあったなあ。

●「スタープレックス」ロバート・J・ソウヤー、1999年、早川文庫SF、800円、ISBN4-15-011257-6
19990210 ★

 宇宙船スタープレックス号は、地球人とイルカ、その他2種類の異星人と共に、宇宙をところ狭しと探査してくれます。異星人の片方と地球人との仲が悪くしょっちゅうもめているし、船長は宇宙を操る謎の存在に特別に目をかけられるし。あとがきにもあるけど、艦内でのやり取りを始めスタートレックのパロディとしか思えない(唯一違うのは、艦長が浮気をするかどうかで悩んでいることだけか)。

 ストーリーはとても変わった新たな知的生命体にであって、ファーストコンタクトに成功する、ってだけ、とも言える。SF的におもしろそうなアイデアはたくさんでてくるし、宇宙の謎もたくさん解かれるけど、あっさりしていてとくにわくわくもしない。その辺もスタートレックみたい。読後感は「タイム・シップ」に似ている。遠未来が出てくるところも。

●「ベクフットの虜」野尻抱介、1998年、富士見ファンタジア文庫、560円、ISBN4-8291-2820-8
19990203 ☆

 ふつうは富士見ファンタジア文庫はチェックしていないのですが、あちこちの1998年のベストSFの投票を見ていると、名前があがってくるので読んでみました。クレギオンシリーズの7作目。宇宙の零細運送屋の女の子が主人公。両親が仕事ぶりを見学に来るのに、危険な仕事に巻き込まれてって感じの話。たいしたストーリーではない。

 ベクフットの花の謎が解かれるんやけど。著者あとがきによれば、その説明に進化生物学のごく基礎的なところを取り入れたそうな。花が進化したことを無理矢理説明(ってゆうより花の機能を推定しただけ)してる以外に何を取り入れたのかな。進化生物学的に言えば、花の効果は自身にも他の生物(同種も他種も)にも同じように、有利に(あるいは不利に)作用するので、適応的な進化の過程で獲得される形質ではないように思うけど…。

●「螺旋の月 宝石泥棒II」(上・下)山田正紀、1998年、ハルキ文庫、(上)740円(下)840円、(上)ISBN4-89456-480-7(下)ISBN4-89456-481-5
19990130 ★

 「宝石泥棒」の続編。宝石泥棒の世界と、近未来の日本が、互いに影響を持ちながら交互に語られ、最後に対決することになる。宝石泥棒の世界は正に神話的な世界で、主人公は多くの敵と戦うが、とくに理由もなく相手の弱点をついて勝ち続ける。パラレルワールドとか4次元空間とか、描けないものを描こうとするから当然無理があるので、わけのわからない場面が多い。

 各章の終わりに著者の註が付いているのだが、少なくともその生物学関係の部分にはわけのわからないのが多い(SF的な前提を受け入れても変という意味で)。はっきり間違っているのに、「地衣類は…藻の類と…菌類との、二種類の単細胞生物があつまってつくりだされた植物である」というのもある。

 いろんなアイデアがたくさん出てくるが、著者の独りよがりで整理がされていないってゆう印象が強いと思う。

●「フリーダムズ・ランディング」アン・マキャフリイ、1998年、早川文庫SF、900円、ISBN4-15-011251-7
19990123 ☆

 パーンの竜騎士でも、九星系連盟シリーズでも、頭脳船でもない新しいシリーズらしい。でもやっぱりマキャフリイなので、女性の主人公が理解ある男性のサポートの元で活躍するというのは同じ。ストーリーは異星人が地球を侵略し、奴隷として連れ去られた地球人や他の奴隷にされてる宇宙人が、無人の惑星に降ろされ「十五少年漂流記」みたいなことをする、ってところ。

 宇宙人がいくら出て来ようと、これはSFではない(この先、ひょっとしたらSFっぽくなるかもしれんけど…)。読みやすい話なので、それほど時間の無駄にはならない。

●「ロボットと帝国」(上・下)アイザック・アシモフ、1998年、早川文庫SF、(上)660円(下)660円、(上)ISBN4-15-011254-1(下)ISBN4-15-011255-X
19990117 ☆

 アシモフの有名なロボットシリーズと銀河帝国興亡史をつなぐ作品。両者をつなぐということ以外に、とくに意味はない作品。このすぐ後に「銀河帝国興亡史5.ファウンデーションと地球」に書かれたらしい。確かにこの直後に「ファウンデーションと地球」を読んだら、わかりやすいと思う。

 ロボット3原則以前に、ロボット第0原則があるかという議論が何度も繰り返される。そもそもすべてのロボットに、ロボット3原則が組み込まれるなどという状況が生まれるなんて非現実的だと思うが…。

●「アヴァロンの戦塵」(上・下)ニーヴン&パーネル&バーンズ、1998年、創元SF文庫、(上)680円(下)720円、(上)ISBN4-488-65412-6(下)ISBN4-488-65413-4
19990107 ★

 アヴァロンという惑星に植民した人類が、グリンネルというどう猛な動物に襲われ、絶滅寸前に追いつめられながら何とか切り抜ける。というのが前作「アヴァロンの闇」のお話。こちらは植民者の第2世代の話になる。第1世代と第2世代の確執も大きな割合を占めるが、やはり中心はアヴァロンの生物を中心とした自然を描き出している点。でもちょっと風変わりな生物を登場させているだけで、とくに目新しいアイデアはない。グリンネルなどが持つスピードはすでに前作で出てきたし、共生体知性は他のSFでもちょくちょくでてくるし。目新しい生物群集を描くだけなら、地球上でもこの程度は描けると思う。

 作者達はそこそこ生態学を知っているようだが、生態系や共進化という語を実にいい加減に使っていると感じた。研究者でもそんな人はいるかもしれないけど・・・。

和田の鳥小屋のTOPに戻る