SF関係の本の紹介(2004年下半期分)

【★★★:絶対にお勧め、★★:けっこうお勧め、★:読んでみてもいい、☆:勧めません】


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●「くらやみの速さはどれくらい」エリザベス・ムーン、早川書房、2004年10月、ISBN4-15-208603-3、2000円+税
20041224 ★★

 【準備中】

●「万物理論」グレッグ・イーガン、創元SF文庫、2004年10月、ISBN4-488-71102-2、1200円+税
20041129 ★★

 【準備中】

●「夢見る猫は、宇宙に眠る」八杉将司、徳間書店、2004年7月、ISBN4-19-861880-1、1900円+税
20041126 ☆

 火星が、眠れる一人の夢によって緑の星になって、あとはその一人をめぐって、様々な思惑が入り乱れる話。
 夢に見るだけで、たいがいのことができるという神のような存在が出てきてしまうと、ナノテクや量子力学がどうとか理由付けしても、よっぽど工夫しないと単なるおとぎ話にしかならない。おとぎ話としても、主人公がなんでこんなに優遇されてるのかさっぱりわからん。

●「西条秀樹のおかげです」森奈津子、ハヤカワ文庫SF、2004年11月、ISBN4-15-030772-5、700円+税
20041125 ☆

 8編を収めた短編集。「からくりアンモラル」に収められた作品同様、あるいはそれ以上に無意味にエロい作品が並ぶ。宇宙人やアンドロイドが出てくるからSFってカテゴリーに入ってるンだろうけど、エロいだけで特に評価する点があるとも思えない。エロを除くと、あとはナンセンスな笑いが残るのかな〜。

●「復活の地」(I〜III)小川一水、ハヤカワ文庫JA、2004年6・8・10月、(I)ISBN4-15-030761-X(II)ISBN4-15-030766-0(III)ISBN4-15-030770-9、(I)720円+税(II)720円+税(III)760円+税
20041114 ★

 とある惑星のとある国の首都が地震で壊滅的な打撃を受ける。それの復興のために、奮闘する男の物語ってとこ。一種の震災シミュレーションで、2004年に読むと妙に生々しい。そして、ある程度の復興が果たされたところで、またもや災害が…。
 話の大部分は、主人公が縦割り行政やら、なわばり意識ばかりで、動きの悪い公務員どもと闘うことに費やされている。そういった意味では、行政シミュレーションであり、行政改革についての話と言えなくもない。さらに政治駆け引きの話でもあったり、恋愛話も絡んでいたり、盛りだくさんで長い話ながらワクワクしながら一気に読める。
 もっともSF的要素は、震災シミュレーションという面を除けば、わりと希薄。他の惑星という設定は、他の国で代用が利く程度だし、地震の原因くらいか。それもまあ背景情報って程度。

●「ふたりジャネット」テリー・ビッスン、2004年2月、河出書房新社、ISBN4-309-62183-X、1900円+税
20041101 ★★

 奇想コレクションの1冊。9編を収めた短編集で、最後の3編は「万能中国人ウィルスン・ウー」シリーズ。SFというよりは、ラファティばりのホラ話が並んでいる。ただ、ラファティよりはわかりやすいかもしれない。
 クマが焚き火にあたる話も、英国がアメリカに行く話も、「はじめて死んだとき、わたしは目を見はった」という訳の分からない文で始まる話もおもしろい。けど、気に入ったのは、会話をしてくれるATM(「アンを押してください」)と、なぜか有名作家が集合する田舎町(「ふたりジャネット」)。「万能中国人ウィルスン・ウー」シリーズは、残念ながらあまり楽しめなかった。ちょっとわざとらしい気がするし‥。

●「スカーレット・スターの耀奈」梶尾真治、2004年8月、新潮文庫、ISBN4-10-149008-2、438円+税
20041018 ★

 4編を収めた短編集。若い二人が、愛の試練を乗り越えてっていった感じの恋愛SFぞろい。どうも男は愛のためにすべてを投げ打つことになっているらしい。
 異星人も異星の生物もどうも地球臭いのが気になるが、それはさておき。もっと気になるのは、惑星の意志だとかなんとかが多いこと。この作家は、他の作品でもそんなのが多いなー。

●「審判の日」山本弘、2004年8月、角川書店、ISBN4-04-873543-8、1600円+税
20040921 ★

 5編を収めた短編集。「屋上にいるもの」や「夜の顔」はホラーと言った方がいいかもしれないが、SFテイストもある。一方、「闇が落ちる前に、もう一度」「時分割の地獄」「審判の日」はSFだが、ホラ話的な雰囲気の漂う一発ネタに近い内容。
 “山本弘の作品はこの世界に対する微妙な違和感から始まることが多い。”普通、帯に書かれている宣伝文句は的はずれなのが多いが、この山田正紀の文はかなり的をついていると思う。違和感から始まって、多くの場合、その謎が解かれて終わる。基本的に謎解き話なので、とても読み進めやすい。世界の過去は偽物で我々の記憶も歴史も含めて作られたものでは? この街はつくりもので、自分が行く場所だけがそれらしく作れられているのでは? そういった誰でも一度は考えたような疑問が散りばめられているのも、読みやすさの一因かもしれない。
 一番気に入ったのは、「時分割の地獄」。結末は、他の作品と同様予想できる範囲だが、心とは何かの議論がよかった。まあ大部分はチューリングテストの話をしてるだけやけど、「小説の登場人物はどうなる?彼らには心があるように見えるよ」「彼らには心があります」無理のある議論やけど、そうくるとは!

●「ストーンエイジKIDS 2035年の山賊」藤崎慎吾、2004年3月、光文社カッパ・ノベルズ、ISBN4-334-07557-6、933円+税
20040919 ★

 「ストーンエイジCOP」の続編。時間的にもそのすぐ後で、登場人物も同じ。またもや、例の大企業と政府・警察のせいで、山賊たちに危機が迫る。
 カラスの遺伝子を改造して、恐竜を作るというのはおもしろい。けど、鳥は恐竜から進化したから、カラスの遺伝子にも恐竜の遺伝子が隠れていて、カラスの遺伝子に手を加えれば恐竜が作れるという話は、ちょっといい加減すぎ。たとえ直接の先祖に恐竜がいたとしても、すでに数千万年も中立として存在していた遺伝子は、ものすごく多くの塩基置換が起きているはず。それ自体から恐竜の遺伝子を完全に復元するのは無理でしょう。部分的にはできるかもしれんけど、いくらがんばってもできるのは恐竜やなくって、カラスからつくった怪獣みたいなもんやないかな。

●「ギャングスターウォーカーズ」吉川良太郎、2004年2月、光文社カッパ・ノベルズ、ISBN4-334-07554-1、819円+税
20040916 ★

 「ベロー・ザ・キャット全仕事」と同じ未来世界の、上海を舞台にした似たような話。中国は、欧米連合軍に占領された後、列強に派遣されたマフィア達に中国人によるゲリラ組織が絡み、上海は微妙な均衡にあった。そこにギャングスターウォーカーが現れて事態は急激に動きはじめる。さまざまな勢力、登場人物が入り乱れて、とてもややこしいプロットが進行していく。
 無限の計算力を持ち、想像によって新たな世界を作ってしまうというのはおもしろい。けど、あとは特に目新しいところもない。さまざまな伏線や謎はさっぱり解決も説明もされない。雰囲気を楽しむ小説といえばそうかもしれないけど、このまま終わってはどうしようもない。とりあえず、最終的な評価は続きを読んでから。

●「蹴りたい田中」田中啓文、2004年6月、早川文庫JA、ISBN4-15-030762-8、700円+税
20040912 ☆

 平成15年度の茶川賞受賞作を含む10編を収めた短編集。茶川賞受賞インタビューも収録されているほか、各作品の前には、北野勇作、恩田陸、菅浩江など著名作家からの文章が寄せられている。中にはやや茶川賞作家である著者を小馬鹿にしたように思われるものもあるが、全体的に心温まるエピソードにあふれている。なお、この短編集は茶川賞受賞直後に著者が失踪して後、「蹴りたい田中」編纂委員会によって編まれた遺稿集である。
 茶川賞茶川賞とあるのに、タイトルの意味には、本屋で似たようなタイトルの本が平積みになっているのを見た時に初めて気づいた。その時ですら、一瞬、そっちがパクリと思ったくらい。特撮怪獣物あり、知性を持ったキノコの話あり、SFファンのほろ苦い青春ストーリーあり、知性のある蚊の探偵物あり、正当派宇宙SFっぽいのあり、SFテイストにあふれ、ヴァリエーションに富んだ作品群。のようでいて、結局はつまらない駄洒落を言うためだけの作品ばかりが並んでいるらしい。楽しいけど妙に疲れる。SFっていうより、駄洒落小説。

●「小説探偵GEDO」桐生祐狩、2004年7月、早川書房、ISBN4-15-208581-9、1800円+税
20040829 ★

 ハヤカワSFシリーズの1冊。一種の異次元として小説世界が実在する街を舞台に、小説世界からやってくる登場人物の依頼を受けて、小説世界での事件にいどむ探偵を描いた連作短編集。主人公の探偵は常にハードボイルドをきどっているけど、収められた7編はそれぞれが架空の小説(世界)が設定されていて、その内容はミステリ、耽美小説、伝奇小説など様々。
 まあ、小説世界に出入りするという設定の無理のある部分を無視して読み進められれば、それなりにおもしろいのかもしれない。ただ、どうもハードボイルドをきどった主人公の言動についていけなかった。
 張り巡らせた複線を収束させる続編を書くと、あとがきにあるので、最終評価はそれを待ってからか。描かれている現実世界自体が、ウソっぽく作り物めいているところからすると、現実世界も一つの小説世界に過ぎない。ってところでオチか?

●「揺籃の星」(上・下)ジェイムズ・P・ホーガン、2004年7月、創元SF文庫、(上)ISBN4-488-66323-0(下)ISBN4-488-66324-9、(上)720円+税(下)840円+税
20040816 ★

 【準備中】

●「タリファの子守歌」野尻抱介、2004年7月、ハヤカワ文庫JA、ISBN4-15-030764-4、640円+税
20040726 ★

 クレギオンシリーズの文庫化第五弾。すさまじい砂嵐のあとを追いかけて移動しながら、宝石を採掘する集落に、生活物資を運ぼうとして苦労する話。マージの尊敬する教官のなれの果てとのエピソードが読み所なのか?

●「からくりアンモラル」森奈津子、2004年4月、早川書房、ISBN4-15-208563-0、1600円+税
20040723 ★

 ハヤカワSFシリーズの1冊。6編を収めた短編集。アンドロイド、吸血鬼、猫とのハイブリッドといった登場人物に、タイムトラベルやテレパシーといったアイテム。SFかファンタジーっぽい設定の中で、さまざまな性的なストーリーが展開される作品集といったところ。著者一番のお気に入りは、セクサロイドというか、一種の性的な奴隷なんだろう。
 そんななかなか紹介しにくい内容の作品が並ぶ中で、よかったのは「いなくなった猫の話」と「ナルキッソスの娘」。どちらもなぜか仮親や継母と子どもの話。育ての親というのも大事なテーマなのかもしれない。

●「シン・マシン」坂本康宏、2004年6月、早川書房、ISBN4-15-208576-2、1800円+税
20040719 ★

 ハヤカワSFシリーズの1冊。脳の一部が機械化されてしまうという奇病MPSが蔓延した世界。その謎の病気MPSにかかった人間の大部分は、健康状態を維持したまま、罹患者同士で一種のテレパシーが使えるようになる。その結果、罹患者同士のテレパシーネットワークが形成され、いわば脳内にインターネットを組み込んだような事に。そんな世界で、MPSに罹患せず、テレパシーネットワークにも加われない人間は、スタンドアロンと呼ばれ、社会の片隅で細々と暮らしていた。そんなスタンドアロンの1人の主人公が、なぞの敵と戦いながら世界の謎を解き明かしていく。
 なんの取り柄もないはぐれ者と思われていた主人公が、実は…。というところで、展開はすでに陳腐。その上、オチもあれやし。ナノマシンをまじえて説明してもらってもね。

●「ラー」高野史緒、2004年5月、早川書房、ISBN4-15-208571-1、1500円+税
20040715 ★

 ハヤカワSFシリーズの1冊。ピラミッドの謎を解くために、考古学者が古代エジプトへタイムトリップする話。向かったのは紀元前約2600年、ピラミッドがまさに建設されているはずの頃、滞在できる時間はわずか5日弱。果たしてピラミッドの謎は解けるのか??
 と、話は盛り上がるかと思いきや、現地の人にうまく受け入れてもらえたのはいいけれど、政治的陰謀に巻き込まれたりばかりで、謎の解明はさっぱり進まない。だいたい、古代エジプトの言葉や習慣、歴史には詳しいものの、調査用具のたぐいをさーっぱりもって行ってない! どうも調査というより、物見遊山に過去に出かけたっぽい。
 ピラミッドの、そしてそれを作った人々の謎が、ちりばめられ、ほのめかされ、物語はワクワクしながら、すいすい読み進められるんやけど…。

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