第3展示室 > すみ場所をひろげる
B.植物も動く-種子散布

種子植物は、次代をになう種子を、外界の動く力にゆだねて、いろんな場所に散らす。風や、水の流れや、動物など、植物をとりまくあらゆる動く力が利用される。行き着く先は外界の力まかせであるため、生育に適した場所を得るものはごくわずかである。


●風による散布

風は陸の植物が最もたやすく利用できる力である。多くの植物の種子や果実が風で運ばれる。特別なしくみをもたない種子や果実も風で散らされる。はねやわた毛のあるものは、さらに上手に風に舞う。何が変化してはねやわた毛になったのかを調べると、いろいろな植物のグループが、それぞれに工夫を凝らして、風を利用するようになったことがよく分かる。

●水による散布

雨のしずくは小さな種子をはじきとばす。地面に落ちた果実や種子は雨水に流される。水は集まって流れとなり、さらに川となって、多くのものを運ぶ。池や沼や湖の水は、水辺や水の中に生育する植物の種子や果実を静かに動かしている。海にも植物の移動に広く大きい影響を及ぼしている。

●自力による散布 − はじける果実

自力ではじけて種子をとばす植物がある。外界の力に頼るところが最も少ない果実といえるであろう。
はじける力には、主なものがふたつある。ひとつは、果実が乾燥していく過程での、組織間のちぢみ方のちがいにより生みだされる力である。これは、多くの果実が成熟して口を開くときに見られる力と同じもので、いろんな果実がこの力を利用し、はじける果実となった。
もうひとつは、ホウセンカのように、生きている細胞のふくらもうとする力(膨圧)が、組織の間で異なることによって生じる力である。

●動物による散布 − ひっつきむし

植物のまわりを動きまわっている動物も、種子を運ぶ力として利用される。たとえば、露にぬれた草原を通りぬける動物は、知らないうちに多くの種子を運んでいる。あるいは、水辺の地面に落ちた小さな果実や種子が、泥にまじって水鳥の足につき、遠くへ運ばれることもある。

●動物による散布 − おなかを通って

動物に食べられ、その消化管を通って、ふんにまじって排出され、いろんな場所に運ばれる種子や果実がある。たいていは、外側においしくて食べやすい果肉があり、中にかたい核があって、その枝の中で種子は安全に守られている。
やわらかい果肉は、植物が自分の養分として利用できるものではない。むしろ、種子の発芽にとってはじゃまな存在で、果肉が取り除かれないと発芽しないものが多い。