第2展示室 > 古生代の海と森
A.花のさかない森


植物の上陸は、地球の歴史の上でも、生命の誕生につづく一大ドラマであった。維管束をもった最初の陸上生物の化石は、古代シルル紀の地層から出てくる。はじめて陸地に緑のかげがさすと、それまで海にはぐくまれてきた生物は、それをおって、つぎつぎに上陸した。
海中の生物は、生活に必要なものはすべて体の表面から吸収することができた。しかし、陸上生活をするには体のしくみが大きく変わらねばならなかった。まずしっかりした茎ができ、茎と根がわかれた。水分の蒸散を防ぐため、茎の表面はクチクラ層でおおわれた。同時に、外界とのガス交換のための気孔も必要であった。こうした体制がデボン紀にほぼ整い、つぎの石炭紀に大森林が出現する下地となったのである。
石炭紀に湿地性の大森林をつくった植物の多くは、シダ植物だった。鱗木、封印木、蘆木がその代表で、最大のものは高さ30m、幹の直径が2mにもなった。ヨーロッパやアメリカの石炭は、おもにこれらの植物からできている。 (瀬戸)


リンボク(レピドデンドロン):シダ植物(ヒカゲノカズラ類).古生代後期の代表的植物で、大きいものは幹の直径2m、高さ30mもあった。幹にはらせん状にならんだ葉の落ちたあとが、きれいなうろこ模様をつくっている。

フウインボク(シギラリア):シダ植物(ヒカゲノカズラ類).石炭紀〜ペルム紀に栄え、巨大な高木になった。リンボクに似ているが、幹に葉の落ちたあとが縦にならんでいる。

ロボク(カラミテス):シダ植物(トクサ類).石炭紀後期に栄え、大きなものは高さ10mもあった。節から枝を輪生し、巨大なスギナのような姿をしていた。


●エリオプス  アメリカ・テキサス州、ペルム紀前期

ペルム紀のはじめ北アメリカにすんでいた両生類(迷歯類)。がんじょうな背骨と手足の骨をもち、陸上で体をささえることができた。しかし、能率よく動くことは無理で、水辺にすみ、現在のワニのように水に入ったり出たりしながら生活し、おもに魚を食べていたらしい。   <原標本:ニューヨーク自然史博物館>

●シームリア  アメリカ・テキサス州、ペルム紀前期

ペルム紀前期にすんでいた両生類と爬虫類の中間的動物。頭の骨は迷歯類とよばれる両生類と共通する特徴をもっているが、背骨や手足の骨は爬虫類的。肉食で、水辺にすんでいたらしい。   <原標本:アメリカ国立博物館>