第2展示室 > 哺乳類の時代
B.ビカリアの海


中新世のはじめごろ、西日本では、今の東海地方に浅い海が入りこんできた。さらに、中国地方の中央部には、ところどころに湖ができはじめた。そして、中新世の中ごろ(約1500万年前)には、山陰地方から東海地方にかけて、瀬戸内海のような浅い内海が、東西から広がった。この海は、第一瀬戸内海とよばれ、現在よりもかなり暖かい海だったと考えられている。
第一瀬戸内海には、ミオジプシナのような大型の有孔虫や、ビカリアなど熱帯性の貝もすんでいた。海岸ぞいには、熱帯や亜熱帯に特有のマングローブ林がおいしげっていたと推定されている。


●第一瀬戸内海の貝

第一瀬戸内海にたまった地層からは、たくさんの貝化石がみつかる。これらの貝はほとんどが絶滅した種類だが、化石が入っていた地層をくわしく調べると貝のすんでいたところが推定できる。
砂岩からみつかるノムラカガミガイやミヤムラアサリなどは、浅い砂地の海底に、泥岩からみつかるイズラシラトリやツキガイモドキのなかまなどは、やや深い泥地の海底にすんでいたようだ。これらの貝のすみ場所は、現在の海にいるカガミガイやアサリ、そしてゴイサギガイやツキガイモドキなど、近縁な種類のすみ場所と、それぞれたいへんよく似ている。

●マングローブ沼の貝

山形以南の日本海側と西日本の各地で、中新世中ごろの地層から、ヒルギシジミ類やセンニンガイ類などの貝化石がみつかる。これらに近縁な現生種は、いずれもマングローブ沼にすんでいる。
マングローブ林は、熱帯や亜熱帯の河口にできる。ここは、潮がみちてくると木の根元まで海水につかるので、オヒルギやマヤプシキなど、限られた植物だけが生育している。これらの植物のいりくんだ根元には、泥や有機物がたまり、林内はまっ黒な泥でおおわれた沼地になることが多い。
ヒルギシジミ類化石は、まっ黒な泥岩からみつかることが多く、同じ地層からオヒルギなどの花粉化石もみつかっている。中新世中ごろには、各地にマングローブ沼があったと考えられている。