大阪市立自然史博物館では平成16年4月10日(土)より5月30日(日)まで、花と緑と自然の情報センター2階のネイチャーホールにおいて、特別展「いきもの図鑑 牧野四子吉の世界」展を開催します。

 牧野四子吉(1900〜1987)まきの よねきちは生物を対象とした精緻な画風の20世紀の画家です。3万点を超える挿絵を図鑑や事典・辞典に著したことで知られ、そのような挿絵を「生物生態画」(資料1上)という独立した分野にまで高めた功績が高く評価されています。挿絵が使われた書籍類は教科書なども含めると100冊を超え、私たちは子どもの頃から今日に至るまでに知らず知らずのうちに四子吉の絵に接してきているはずです。

 平成13年に京都百万遍の思文閣しぶんかく美術館が初めて牧野四子吉をとりあげて絵画展を開催し、好評を博しました。平成15年5月からは、出展作品をあらためて選定しなおし、規模を拡大して全国巡回が開始され、大阪市立自然史博物館が2番目の会場となります。当館には100万点を越す生物標本が収蔵されていますが、その中から四子吉の原画のモチーフに関連する標本を出品するなどの独自性を加え、より充実した展覧会となっています。

 大阪市立自然史博物館では、平成13年に優れた植物研究者であると同時に優れた植物画家としても有名な牧野富太郎の植物画展を開催し、好評を博しました。四子吉は、富太郎にも勝るとも劣らない優れた画家です。富太郎の植物画は、学術研究用のためのものでしたが、四子吉は植物画や学術用の絵にとどまらず、すべての生物を命あるものとして描きました。四子吉の「生物生態画」にはどこかで見たことのあるような親しみと懐かしさを感じさせられ、同時に、実物への想像力やロマンを掻きたてられるのはこのためです。また、今回の展示では「牧野四子吉の生涯」のコーナーを設け、画家かつ文化人としての感動的な生き様を知っていただくことができます。

 人々の「自然離れ」が憂慮されている現在、本展覧会は、子どもたちや一般市民が動植物に関心を抱くきっかけとなることが大いに期待され、また、自然・美術の愛好家や読書家など、多くの方にご覧頂きたいと思います。

 なお、関連行事として、平成16年5月1日(土)午後3時から4時30分まで自然史博物館集会室において、自然史講座「牧野四子吉と魚類画」を開催します。