特別展の開催に寄せて


この度、大阪市立自然史博物館の第32回特別展におきまして、私が長年にわたり標本として集めてきました、「野鳥の巣」を展示していただける幾会を得ました。
1999年に日本初の巣の図鑑であるという、「巣と卵図鑑・世界文化社」を作らせていただく幸運を得ましたが、さらに、今回長年の夢であった、私の持てる全ての標本を一同に展示する、特別展「実物 日本鳥の巣図鑑」を開催していただける運びとなり、私の夢の一つがかなったと感謝しているしだいです。
私は幼い頃から生き物が好きで、あらゆる生き物を見たり飼ったりして過ごして来ました。その中で特に私が夢中になったのは、蝶の飼育と野鳥観察です。蝶は森の妖精とも呼ばれるゼフィルスを中心に、かなりの種類の飼育を産卵から羽化まで楽しみました。野鳥は中でも猛禽類に惹かれ、特にクマタカは1964年に初めて大阪,和歌山の境にある岩湧山々麓で巣を発見して以来夢中になり、次々と新しい生息地を確認し、1971年には山階鳥類研究所研究報告に、「クマタカの営巣習性について」と題して友人達と共に発表しました。 更に、1974年には「アニマ・平凡社」に「猛禽クマタカの巣を追って」でより具体的に著述する機会も得ました。
その頃から野鳥全般についても営巣習性に興味が湧き、巣を通して野鳥を観る意識が強まりました。以前から少し集めていました野鳥の古巣を、より積極的に集め始めるとともに、単なるコレクションではなく、研究資料として使える、「標本」と呼べる物にしたいと考えました。
その為には、より自然状態に近い形で採集するとともに、原則として自分の目と足で確かめ、詳細なデ−タを得るように心がけています。
現在、私は大阪府の鳥獣保護員として、クマタカ、オオタカなど国内希少野生動植物種に指定されている猛禽類の、大阪府における生息状況を把握し、その生息地を保全しつつ、未来につなげる夢に取り組む活動をしています。また、もう一つの大きな夢として、日本で繁殖する全ての鳥類の巣を自分の目で観察し、そして出来れば使用後の巣を集め、日本産の全ての「野鳥の巣の標本」を完成したいと考えています。きっと私の人生が終わるまで、この二つの夢を追っている気がします。
今、夢半ばではありますが130種近い標本を作製することができ、この度「巣の特別展」を開催する事ができました。これは私ひとりの力ではなく、親友でもある、奥野一男、和田貞次氏をはじめ、澄田貢、中島楊、西垣外正行、橋本健一、前畑慎悟、和田信雄氏その他多くの友人のご協力のお陰であります。また、この特別展の開催にあたり、後援を申し出て下さいました、大阪府、(財)日本野鳥の会大阪支部に心より御礼申し上げるしだいです。

<小海途銀次郎(昭和19年3月生まれ)>