はじめに

鳥の巣を見た事がありますか? ツバメの巣なら見た事があるでしょう。しかし、他の鳥の巣は? 日本では、約250種の鳥の繁殖が確認されています。市街地周辺でも何種もの鳥が営巣しています。しかし、多少鳥に興味を持っていても、鳥の巣の存在に気付いている人は少ないのではないでしょうか?
営巣は鳥の生活の中でも、とても大切な営みです。どんな場所にどんな鳥のどんな巣があるかを知る事は、それだけ鳥について深く知る事につながります。近年、同じ種の巣の素材が、自然物から人工物へ移り変わってきている例があります。元々樹に巣をかけていた鳥が、人工物で営巣するようになっている例もあります。鳥の巣からは、鳥たちが暮らしている環境の状態まで知ることができるのです。

「実物 日本鳥の巣図鑑 −小海途銀次郎コレクション−」展は、小海途銀次郎氏(大阪府河内長野市在住)が40年近くにわたって収集された日本産鳥類の巣のコレクション約130種300点を一挙に公開するものです。氏のコレクションの一端は、「日本の野鳥巣と卵図鑑」(世界文化社1999年)という図鑑に紹介されていますが、全容が紹介されるのは初めてです。この鳥の巣のコレクションには、本州で繁殖する鳥がほぼ網羅されており、北海道や三宅島、奄美大島の小鳥類も充実しています。いろいろな鳥の巣を見るだけでもかまいませんが、巣を通して鳥の生活を知っていただければと思います。また、これだけの巣を集める過程では、おもしろい話がたくさんあります。その一端を、「鳥の巣採集記」として小海途氏に紹介していただきました。
鳥の巣と一緒に並んでいる鳥の本剥製は、西垣外正行氏(大阪府堺市在住)に、お借りしました。これだけの鳥の本剥製を見る機会もめったにないものと思います。
さらに鳥の巣の絵本作家としても有名な鈴木まもる氏(静岡県下田市在住)には、外国産の鳥の巣と、絵本の原画を展示していただきました。日本の鳥にはない様々な形の鳥の巣が並んでいます。

本特別展を開催する上で、以下の方々のお世話になりました。
小海途銀次郎氏には、貴重なコレクションを貸していただいただけでなく、この展示の構成や標本の配置、さらに解説書の執筆などでも、大変お世話になりました。本剥製を貸してくださった西垣外正行氏と阿形哲夫氏。とくに西垣外氏には、特別展の企画から標本の配置まで、多くの助言や協力をいただきました。さらに、貴重なコレクションの一部と絵本の原画を展示してくださった鈴木まもる氏には、展示物の配置も手伝っていただきました。特別展を後援していただいた財団法人日本野鳥の会大阪支部と大阪府には、広報でもお世話になりました。また、展示物の配置は、米澤里美氏と西澤真樹子氏に手伝っていただきました。

解説書の作成にあたって、小海途コレクションすべてを撮影してくださった西澤真樹子氏、そして撮影を指導してくださった中谷憲一氏。写真を提供していただいた小海途銀次郎氏、奥野一男氏、和田貞次氏、浦野信孝氏。イラストを提供くださった西澤真樹子氏、外丸須美乃氏。解説書の表紙やポスター等をデザインしてくださった又吉操代氏。
以上の方々に厚く御礼申し上げます。