[NEW!]夏休み特別企画

「セミの調べ方」

by 大阪市立自然史博物館

 夏の虫,セミは身近なようで,生態については,まだまだ判っていないこともたくさんあります.夏休みの自由研究用に,セミの調べ方を実例とともに紹介しましょう.

 また,おもしろいセミの研究例も募集していますので,ぜひお寄せください.

(A)今からでも間に合うコース(期間:数日)

(1)15分ぬけがらしらべ
(2)マーキング調査

(B)あらかじめ準備コース(期間:約1カ月)

(1)毎朝ぬけがらしらべ
(2)クマゼミの鳴き始める時間について調べる

(C)気長にしらべるコース(期間:数年から7年ほど)

(1)ぬけがらの数を年ごとに比べる

セミの研究についての相談,新たな研究結果の実例紹介は

自然史博物館・昆虫研究室の初宿(しやけ)shiyake@mus-nh.city.osaka.jpまで.

関連ページ「大阪のセミの見分け方

鳴き声,ぬけがら,成虫のもよう,などから,種類を見分けましょう.


(A)今からでも間に合うコース(調査期間:数日)

(1)15分ぬけがらしらべ

 方法:異なる環境(明るい林,暗い林),異なる標高(海抜)で,15分間ぬけがらをさがし,見つかったぬけがらすべてをとります.人数は5〜10人程度が適当でしょう.その場で,ぬけがらの種類を調べます.

 見分け方:見分け方のページ(こちらか,自然史博物館新館(情報センター)の標本を見に行くか,標本同定会(通例は8月最終日に自然史博物館で開催されます:日程は博物館の行事案内でご確認ください)に持ってきて,専門家(といっても多分,筆者)に見てもらいます.

 注意点:アブラゼミやクマゼミは8月始めまで羽化しますので,それ以後に行う方がよいでしょう.また,異なる場所で比較する場合は調査日が大きく違わないようにデータを取りましょう(1週間以内程度?,できれば同じ日にするのがよい).また,ぬけがらの同定(種類の判定)は慣れないうちは非常に難しいので,注意してください.それが間違っていると,調査の意味がなくなります.

 研修会:学校の教員むけとして,毎年9月半ばに枚岡公園で開催しています(こちらも日程は博物館の行事案内でご確認いただき,参加の申し込みをしてください).参加資格は教員のみですが,定員われした場合は,一般の方でも受け付けることがありますので,自然史博物館・昆虫研究室の初宿(しやけ)まで,お問い合わせください.電子メールはshiyake@mus-nh.city.osaka.jpです.

研究の実例(1)

 日時:2000年9月15日

 調査地:東大阪市・枚岡公園

 調査地点:(a)梅林(明るい林,標高80m),(b)枚岡神社裏(暗い林,標高98-100m),(c)桜公園(明るい林,標高170m),(d)豊浦橋(暗い林,標高170m)

 人数:5名

 探索時間:各地点で15分間,見つかったぬけがらをすべてビニール袋にとり,その場で種類調べをおこないました.

 調査結果:合計6種のぬけがらが見つかりました.数と割合は図表で示しました.


 考察:結果から以下のようなことが考えられる.

クマゼミ:標高の低い,明るい林でのみ見られる.標高がさらにさがって,住宅地になるとクマゼミばかりになる.

ニイニイゼミ:標高に関わらず,ともに明るい林のみで見られ,暗い湿った林では見られない.

ツクツクボウシ:標高の高低,林の種類を問わず,4カ所とも見られた.

アブラゼミ:ツクツクボウシと同様,4カ所とも見られた.標高の高い湿った林でヒグラシに次ぐ2位になっている他は,各地点でもっとも優占する種となっている.

ヒグラシ:暗く湿った林で標高の高低両方で見られた.湿った環境を好むと思われる.

ミンミンゼミ:標高の高いところで,明るい林・暗い林の両方で見られた.低いところには住まないと考えられる.


 出典:2000年に「教員向け研修」として行ったものの結果で,未発表.


(A)今からでも間に合うコース(調査期間:数日)

(2)マーキング調査

 方法:セミをできるだけ多くつかまえ,羽にマジックペンで印をつけます.1週間後(と,できれば2週間後)に再度,できるだけ多くのセミをつかまえ,何匹に印がついていたかを数えることで,その調査地全体のセミの数が推定できます.

 調査の原理:ご飯を炊くときに,釜にお米を入れますが,もしこのお米の粒数を知りたいと思ったとき,最も確実な方法は一粒一粒を数えることですが,そこまできちんとした数字でなくとも,簡単に大雑把な数を知りたいときに,以下のような方法をとります.

 注意点:人数が多いほど,より効果的な結果が得られます.少人数だと再捕獲数がゼロないし数匹で,適正な個体数推定ができない可能性があります.セミの移出入がない,死なない,など,やや無理な条件が前提になっていますので,正確な数を求める手段でないことはご承知おきください.

研究の実例(2)

 日時:1998年7月20日(第1回),26日(第2回),8月2日(第3回)

 調査地:大阪市東住吉区・長居公園

 マークの結果:第1回は183匹にマーク,第2回では再捕獲は0匹,マークは1,522匹,第3回目で1,625匹を捕獲したうち,再捕獲が37匹だった.


 考察:個体数推定について:次の計算より・・・・・,

x:(183+1,522)=1,625:37

x=74,882

という計算で,長居公園にはクマゼミが7万匹以上いると推定できました.


 出典:初宿成彦(1999).行事の記録と結果報告「長居公園にクマゼミは何匹いるか?」.Nature Study(大阪市立自然史博物館友の会)45(12): 9-10.


(B)あらかじめ準備コース(期間:約1カ月)

(1)毎朝ぬけがらしらべ

 方法:ある特定のエリア(自宅の庭・近所の公園など,やりやすい場所がよく,セミのぬけがらが毎年たくさんついているところがよい)で,毎朝セミのぬけがらをさがし,オスメス別に記録する.セミの発生(羽化)がどういう時期におこるのかが調べることができる.

 注意点:大阪ではもっともふつうに見られるクマゼミやアブラゼミでは,羽化は7月のはじめ(早いものでは6月のおわりごろ)からはじまりますので,夏休みに入る前から研究をはじめる必要があります.7月なかばから始めるのでは意味がありません.ツクツクボウシなどでは約1カ月遅れて始まるので,夏休みに入ってからでも間に合いますが,羽化の終了がおそらく9月までつづくので,宿題の提出に間に合いません.

 参考にするページ:

ぬけがらの種類の区別の仕方はhttp://www2.mus-nh.city.osaka.jp/learning/ent/semi/nukegara.html

オスメスの区別の仕方はhttp://www2.mus-nh.city.osaka.jp/learning/ent/semi/questions.html

成虫の出現時期の表はhttp://www2.mus-nh.city.osaka.jp/learning/ent/semi/season.html

をそれぞれ参考にしてください.

 発展問題:クマゼミについては,羽化時期などくわしくわかってきたので,別の種類でぜひやってほしい.特になぜツクツクボウシやヒグラシがクマゼミなどに比べ,比較的長い期間,出現しているのか(これは1匹の寿命が長いわけではなく,羽化期間が長いための予想している)を実証してほしい.

研究の実例(3)

 堺市内の自宅の庭で,夏休みの宿題の自由研究として,1998年と99年に調査しました.


 結果(1)クマゼミの羽化時期:1998年では7月6日にはじまって8月2日まで,1999年では7月13日にはじまって8月6日まででした.

 結果(2)出現の傾向:どちらの年も最初は雄ばかりが出現するのが,だんだん雌が増えるようになり,羽化時期の最後のほうでは雌ばかりが羽化するようになります.


 考察:1998年の調査から気温の低い日に羽化が多いような印象をもったが,99年の調査ではそれは明らかではなかった.幼虫が羽化を決断する条件は何であるか,もう少しデータを増やしたり,他の要素を考えるなど,検討が必要.


 出典:橋田恒佑・橋田俊彦(1999)..クマゼミの羽化数はその日の最高気温と関係するか?(自由研究「セミのぬけがらしらべ」から).Nature Study 45(10): 5.


(B)あらかじめ準備コース(期間:約1カ月)

(2)クマゼミの鳴き始める時間について調べる

 方法:クマゼミは早朝,日の出前後に一斉に鳴き始めます.ある特定のエリア(●●公園など,多少広いエリアでよい)で,クマゼミが毎朝,何時に鳴き始めるかを記録します.

 注意点:とにかく忍耐が必要です.夏休みに泊まりがけで遊びに行く予定のある人,朝寝坊ぐせのある人には,おすすめできません.

 発展問題(1):クマゼミについては,だいぶ調査がすすみました.朝や夕方になくヒグラシについても同様に調べられると思います.夕立のときには午後3時ぐらいから鳴き始めることから,照度が関係していると想像します.(筆者の自宅近くでは毎朝,4時半ごろからヒグラシがけたたましく鳴きます.60歳を超えたら調査を開始しようとたくらんでいますが,どなたか,その前に一度やってみてください.)

 発展問題(2):夜明け前の静寂のときに,テープレコーダーでクマゼミ(あるいはヒグラシ)の鳴き声をならしたら,つられて鳴き始めるものがいるかどうか.午前2時頃のまだ真っ暗なときに,水銀灯などの灯りをつけてテープレコーダーを鳴らすと,鳴き始めるものがいるかどうか.(→鳴き始めに体内時計が関係しているか,外的条件(光や音)が関係しているかを調べることができる)

研究の実例(4)

 尼崎市内の公園で,クマゼミが何時に鳴き始めるかを毎朝しらべました.


 結果:羽化のはじまったころから,セミの密度が増えるほど鳴き始めの時刻が早まり,セミの密度がピークを迎えるころにもっとも早くなる.セミが減り始めると,鳴き始めの時刻も遅くなっていく.


 考察:セミは雌を獲得するために鳴く.密度が増すほど競争(相互のプレッシャー)が大きくなり,鳴き始めの時刻が早まるのではないだろうか.


 出典:高田敏雄(1998).クマゼミの鳴き出す時刻からその生態を考える.Nature Study 44(8): 6-7.ほか毎年報告記事あり.


(C)気長にしらべるコース(期間:数年から7年ほど)

(1)ぬけがらの数を年ごとに比べる

 方法:ある特定のエリアで,毎年ぬけがらの数をしらべ,年ごとに比較します.調査地に出現するセミの種類にもよりますが,アブラゼミやクマゼミなどが主体となっている場合,8月中〜下旬ぐらいでよいと思います.多い年と少ない年があるのが明らかにわかります.

 発展問題:台風が来たかどうか,公園のそうじが入ったなど,どうしても羽化の実態を遠ざける要素が入ってきてしまいます.そこで毎朝ぬけがらしらべ(B-1)をして,年ごとの比較を行うとより正確な値が得られます.しかし,多人数の大規模な調査は無理なのと,ごくローカルな事情(数年前にセミの産卵があったかどうか,幼虫が大量の捕食されるなど)に左右されてしまう可能性があります.

研究の実例(5)

 大阪市西区の靱(うつぼ)公園(東側エリア:5万6千平方メートル)で,自然史博物館友の会の調査会として,1993年から毎年,公園エリア全体のぬけがらをとって比較するというのを行っています.参加者数は毎年,100名程度の大規模な調査です.


 結果:多かったのが1995年,少なかったのが1993年,94年,96年でした.1997年から2001年までは両者の中間的な数値が出ています.


 考察:セミの発生にはたしかに多い年と少ない年がある.周期があるかどうかというと,あまりよくわからない.気候条件など他の要素も考慮する必要があろう.


 出典:1993年からの記録は毎年,以下の記事に出ています.

大阪市立自然史博物館友の会有志・靭公園自然探究グループ有志(1994).靭公園のセミのぬけがら調査.Nature Study 40(1): 7-9.
初宿成彦(1995).セミのぬけがら調べと産卵を見る会.Nature Study 41(7): 5-8.
桂孝次郎・奥野晴三(1996).友の会行事「靭公園のセミのぬけがら調べ '95」.Nature Study 42 (8): 100-102.
桂孝次郎・奥野晴三(1997).友の会行事「靱公園のセミの抜け殻調べ'96」 .Nature Study 43(8) 8-9.
初宿成彦(1998).この夏,セミは2年ぶりの大発生−友の会行事・靱公園セミのぬけがらしらべ97より.Nature Study 43 (10): 8-9.
初宿成彦・桂孝次郎・奥野晴三(1999).行事の記録「靱公園セミのぬけがら調べ98」.Nature Study 45(8): 9 .
初宿成彦・桂孝次郎・奥野晴三(2000). 1999年夏,セミが大発生! 靱公園セミのぬけがらしらべ'99の結果と7カ年のまとめ.Nature Study 46(8): 10-11
初宿成彦(2001). 靱公園セミのぬけがらしらべ 2000年の記録.Nature Study 47(8): 9-10.

研究の実例(6)

 芦屋市内の自宅で,1986年から96年まで,11年間にわたって毎日ぬけがら調べをしました.


 結果:総個体数の年ごとの増減や,毎日の羽化パターンと気温の関係を記録しました.


 考察:気温と羽化については,必ずしも直接的な関係があるわけではなく,たとえばそれ以前の5〜6月の気温など,その他の要員も考慮しなければならない.


 出典:助野沙代子(1997).「セミのぬけがら調べ」−11年間の記録−.Nature Study 43(8): 6-7.


 おもしろいセミの研究例募集していますので,ぜひお寄せ下さい.また本ページへのご意見もお待ちしています.

 あて先は,電子メールの場合,shiyake@mus-nh.city.osaka.jp

 郵送の場合は,〒546-0034 大阪市東住吉区長居公園1の23 大阪市立自然史博物館・昆虫研究室 初宿成彦まで.

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