大阪のクマゼミの発生 (予測 と実況)
 2007年夏
初宿成彦(大阪市立自然史博物館)

2007年のセミ発生量について
 2007年の夏、セミは予想どおり多く発生しました。しかし、予想したほどの大発生ではなかった可能性が高いよう に思われれます。

1.ぬけがらによる比較(その1)
 1993年から行っている靭公園のぬけがら調べの結果、今年は30,770個でした。発生量は前年の倍ちかくだったものの、当初予想していた 38,000程度という数には届きませんでした。

靭公園に おける最近5年間のぬけがら数の比較。左から2003、04、05、06、07。黒はクマゼミ、茶はアブラゼミ。以下、同じ。

2.ぬけがらによる比較(その2)
 靭での発生量を確認するため、長居公園、大阪城公園、天王寺公園の3か所で、一定時間のぬけがら調査を行っています。いずれの調査値でも、2006年よ りは多いものの、2005年よりも下回る結果になっています。

長居公園

大阪城公 園。

天王寺公 園。

3.最高音量の比較
 長居公園内で計測している音量のうち、10分間平均の最大値を比較してみました。少なかった2006年よりも低い 値でした。ぬけがら調査から考えて、発生量は上回ったものの、集中して発生した2006年に比べると、気候か何かの影響で羽化発生が前後に分散した可能性 があります。

年度
音量(デ シベル)
記録日
2004年
89.3デシベル
7月25日
2005年
93.8デシベル
7月28日
2006年
90.4デシベル
8月1日
2007年
89.8デシベル
8月3日

4.鳴きはじめ最早時刻の比較
 クマゼミは密度が高まると、鳴きはじめ時刻が早まることが知られています。天候などに左右はされますが、何時に鳴 き始めたかは、その時のセミの密度を示すバロメータに成り得ます。近年での記録を比較してみます。このでは連続して55デシベルが計測された時刻を「鳴き はじめ」としています。
年度
1位
2位
3位
備考
2005年 4時58分38秒(7月30日)
5時01分06秒(7月29日)
5時02分15秒(8月2日)

2006年 5時07分59秒(8月8日)
5時18分16秒(8月7日)
5時19分37秒(8月9日)
7月下旬に欠測日あり
2007年 5時02分07秒(8月3日)
5時14分33秒(8月2日)
5時20分29秒(8月4日)


 このデータでも、2005年の最盛期の密度は2006年、2007年よりも高いことがうかがえます。

まとめ
 クマゼミが隔年(奇数年)で多くなるというのは、今年も確かめることができましたが、発生量は2005年よりも少 なかった可能性が高いように思われます。このことは、セミが周期で発生しているというような単純なものではなく、他の要因も絡んでいる可能性があるように 思われます。いずれにせよ、未解明の部分が多いというかもしれません。


最高平均音量の毎日の値(2007年)
月日
最高平均 音量
7月17日
75.1
7月18日
74.5
7月19日
75.8
7月20日
77.5
7月21日
76.8
7月22日
79.7
7月23日
83.7
7月24日
84.2
7月25日
83.5
7月26日
85.5
7月27日
85.4
7月28日
87.6
7月29日
88.6
7月30日
89.3
7月31日 89.5
8月1日
88.5
8月2日
88.2
8月3日
89.8 ▲ピーク
8月4日
89.7
8月5日 89.3
8月6日
88.6
8月7日
87.3
8月8日
87.9
8月9日 86.6
8月10日
83.9
8月11日
84.3
8月12日
84.5
8月13日 83.2
8月14日 80.1
8月15日 81.3
8月16日 80.1
8月17日 77.4
8月18日 76.9
8月19日 75.5
8月20日 72.5
8月21日 74.1
8月22日 71.8
8月23日 68.8
8月24日 68.6
8月25日 71.7
8月26日 65.5
8月27日 63.0
8月28日 63.2



高音量日数の比較
年度
90デシ ベル以上
80デシ ベル以上
70デシ ベル以上
初鳴から ピークまでに
要した日数
2004年
なし
16日間
38日間
27日
2005年
12日間 31日間
41日間
31日
2006年
1日のみ
24日間
36日間
22日
2007年
なし
25日間 不明
36日



第2号(7月28日発表)

 気温が6〜7月は低めに推移したため、セミの発生ぺースはやや遅れ気味ですが、発生量が多くなると見込まれたため、初鳴は予想どおり、早めになりまし た。音量のピークは8月5日ごろで、音量は94デシベルと、最近4年では最大の騒音になると予想しています。70デシベルを超える騒音は、2006年は8 月20日で終了しましたが、今年は8月末ごろまで続くでしょう。

2007 年の実測
予想
(7月28日現在)
2006 年との比較
初鳴
6月29 日(3頭の鳴き声を確認)
気象台は7月3日と記録

12日早い
騒音期はじま り
※70デシベル以上
確認中 (欠測したかも)


喧噪期はじま り
80デシベル以上
7月23 日

1日遅れ
超喧騒期はじ まり
90デシベル以上
なし
7月29日ごろ
(7日遅れ)

音量の ピーク
8月3日
(89.8デシベル)
8月5日ごろ
(94デシベルぐらい
:4日遅れ)
2日遅れ
超喧騒期 おわり
なし
8月11日ごろ
(10日遅れ)

喧騒期お わり
8月16 日
8月23日ごろ
(9日遅れ)
2日遅れ
騒音期お わり
8月25 日
8月29日ごろ
(9日遅れ)
5日遅れ



第1号(6月26日発表)

 現在のところ,主に,(1)春季からの気温推移,(2)発生量の予想,のデータから, 2007年夏の大阪市内でのクマゼミの発生状況を以下のように予測 しています.
初鳴:7月1日(昨年より10日早い)
騒音期※はじまり:7月15日
騒音のピーク:8月1日(94デシベル程度)
騒音期おわり:8月26日
発生量レベル:多い=レベル4(平年の約4割増,2006年の2.2倍程度)


 概況:2007年は3月までは記録的な暖冬でしたが、4〜5月はほぼ平年並み、6月は現在までのところ、平年をやや下回る気温の推移になっています。
 クマゼミの発生量については,昨年の2.2倍とかなり多くなることと予想しており,気温推移に関わらず、早め気味に出現することが予想されます。
2007年のクマゼミ初鳴日は、平年日と同じだった2006年(7月11日)より10日早い、7月1日ごろと予想しています.
 発生は多くなるため,市内の緑地帯では,ピーク時の午前5時半〜10時頃には,94デシベル(騒々しい工場の内部など)程度の騒音になるで しょう.(参考:2006年のピーク時は90.4デシベル)

 なお、本発表に関する内容の詳細については、7月7日より大阪市立自然史博 物館で開催される特別展「世界一のセミ展」にて紹介する予定である。
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/tokuten/2007semi/
 

図1 積 算温度の推移。2005年・2006年の初鳴日に達した積算温度は720〜750あたり。2007年は7月1日前後に到達すると予想される。なお発生量補 正などの計算を施しているので、左軸の数値は単純な気温の積算ではない。

  [用語解説]
 初鳴日(図2): クマゼミが鳴き始めた日。ただし、突発的に早く鳴き始めることがあるので、通常は複数が鳴いた日または毎日連続的に鳴き始めた日を「初 鳴日」としている。場所は長居公園で、観測者は博物館職員・関係スタッフらの観察としている。なお、大阪管区気象台でもクマゼミの初鳴日観測が継続的に行 われている。
 騒音期::10分 間平均値で70デシベル以上の音量(以下、音量と略す)が計測される期間。初鳴日より1ないし2週間でこの期間に入る。
 ピーク:音量が最 大となった日。桜でいえば満開にあたる。これは初鳴日とは異なり、春季以降の気温の推移経過がより直接的に反映される。2006年は8 月1日(90.4デシベル)、2005年は7月28日(93.8デシベル)がピークだった。
 発生量レベル:セ ミの発生量は年によって大きく変化することが、靱公園(西区)の調査でわかっており、現在のところ、8年周期で変動をしていると考えて いる。1995年(過去第1位)とその8年後の2003年(同第2位)には、非常に多い発生が見られた。1999年もその次に発生量が多く(同第3位)、 2007年はこの影響を受けて、発生量が多くなることが予想される。な お、クマゼミの発生周期については、生育年数が8年のものが最も多くなった飼育実験 結果(特別展にて紹介予定) とも深く関連していると考えられる。

図2 大 阪でのクマゼミの初鳴日(1993〜2006年)。最も早い年と遅い年では、3週間ほどの差がある。おもに3〜6月の気温推移が影響する。


表1 クマゼミの発生周期と発生量レベル。2007年はかなり多い年になる。
周 期
年次
発 生量
(平年比)
  発生量
レベル
該当する年
(西暦)
I
50.5%
レ ベル1
1994
2002
2010
II
182.1%
レ ベル5 1995
2003
2011
III
50.8%
レ ベル1
1996
2004
2012
IV 127.2%
レ ベル3 1997
2005
2013
V
74.7%
レ ベル2 1998
2006
2014
VI 137.5% レ ベル4
1999
2007
2015
VII
105.5%
レ ベル3 2000
2008
2016
VIII
125.7%
レ ベル3 2001
2009
2017




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