Monthly meetings (seminars) 月例事務局会議&勉強会

(現在は休止中です)

The meeting with the seminar is, as a general rule, held on every 4th Friday at the visitor laboratory in the Osaka Museum of Natural History. We are now reading Ashworth et al. (1997) in turn. 事務局会議&勉強会は原則として毎月第4金曜日の午後7時から,大阪市立自然史博物館の外来研究室で開いている.現在は英国のAshworthほか編(1997)「第四紀昆虫学の研究」を輪読している.

Ashworth, A. C., P. C. Buckland and J. P. Sadler (eds.) (1997). Studies in Quaternary Entomology. -An Inordinate Fondness for Insects-. John Wiley and Sons, UK.


内容紹介

第1回輪読会(Jan. 23,1998)

「更新世の化石甲虫の同定における挑戦と報い

(ホクスニアン間氷期からのダルマガムシの新種記載)」

Robert Angus(1997):Challenges and rewards in the identification of Pleistocene fossil beetles, with the description of a new species of Hydraena Kugelann (Coleoptera: Hydraenidae) from the Hoxnian Interglacial.

In A. Ashworth et al. (ed.) , Studies in Quaternary Entomology.5-14. John Wiley & Sons. (publ.)

 筆者はセスジガムシやダルマガムシの研究者であるが,第四紀昆虫学の大家,Russel Coopeに早く(オックスフォードの学生時代)に出会い,甲虫化石の世界に引き込まれた.当初は第四紀のものでも絶滅種であるという信念があったが,いろいろな幸運が重なって,更新世の地層から見つかった化石を次々と現生のものに同定することができた.1960年後半から1970年はじめにかけては,英国で絶滅している種類が国外で現在まで生存していることが次々と見つかり,自身もモンゴルのHelophorus mongoliensis Angus, 1973を英国の地層から発見している.

 化石の同定は原則として現生とまったく同じ,すなわち標本での比較である.しかし,現生で見にくい箇所などでは現生の分類には使われないが化石では使われている,という形質は意外に多いという.保存状態がよいと,交尾器まで産出することがあり,それによって外見的に区別可能なものばかりか,同胞種までも確認することができる.

 英国SuffolkのHoxne遺跡(Hoxnian間氷期)からホソダルマガムシH. riparia種群の化石が見つかり,交尾器から複数の種が含まれていることを確認しているが,現生の他の種の標本と詳細に比較した結果(また,この群の現生の専門家からのアドバイスも受けて),どの種類とも一致しないとの結論を出し,未記載の新種として記載している(Hydraena coopei:交尾器3点のみに基づき,これらがタイプシリーズを構成する).これまで甲虫を見渡してきたことも考え合わせて,この種類が絶滅してしまったと言い切ることのできる理由はないだろう.(この群は日本からも未記録種があるというので,日本から現生として見つかる可能性もあるのではないだろうか:訳者註)

 そのほか,氏は種より下のレベル,同胞種,亜種なども化石によって区別することが可能で,それによって過去の分布や古環境の推定が可能である,としている.その1例としてNebrioporus depressus とelegansをあげている.この両種ははきわめて近縁で,双方が生息している地域ではしばしば雑種が形成されるが,この両者の関係はおよそ43,000前の地層からも化石として見つかるという(「不完全な種分化は長く安定する」という項目).

 英国の最終間氷期の昆虫だけ見ていても,現生が欧州中央部や南部の種類が見つかったりする(哺乳動物ではアフリカの要素が入っているという)が,これらがほんとうに絶滅したものかどうかの見極めは難しい.その1例が上述の新種,Hydraena coopeiであろう.また,500万年たったからといって絶滅したとは断言できない.アラスカの中新世から見つかっている化石,セスジハネカクシMicropeplusのある種類は,シベリアから記載された現生種とほとんど同じだという.

 最後に,筆者はたった1種だけ,最終氷期に絶滅したと考えている種類があると述べている.Ptomascopus属(旧北区の東部に分布:日本のコクロシデムシが相当.訳者注)の一種である.この類は大型で目立つ(翅には紅い帯があったと思われる)ことと,この見つかった遺跡がかなり調べられている欧州西部要素が強いことから,絶滅種であろうと考えているという.しかし,最後の最後には次の言葉で締めている.

 「例外というものはルールが破られるから存在するのだ」


第2回輪読会(Feb 27,1998)

Bain, A. L., Alan V. Morgan, J. A. Burns and A. Morgan (1997):The Palaeoentomology of Rat's Nest Cave, Grotto Mountain, Alberta, Canada

In A. Ashworth et al. (ed.) , Studies in Quaternary Entomology.23-33. John Wiley & Sons. (publ.)

「カナダ アルバータ州のグロット山にあるラッツネストケーブの古昆虫学」べイン・モルガン夫妻、バーンズ著

Rat's Nest Caveは、亜高山帯の渓谷、標高1524mにあるカルスト浸潤性洞窟で、内側に深さ15mのたて穴がある。2000年以上かけて穴の底に溜まった堆積物は5層に分かれ、脊椎動物の骨、植物、昆虫遺体(うち甲虫は10科931点)が出土している。殆どの甲虫は洞窟外の環境に代表される種で、洞窟内環境を示すのは、Q. spelaeus、Q. erythrogaster(いずれもツヤムネハネカクシ属)の2種のみ。昆虫相は、現生種の分布・環境とあまり変わらず、ここ2000年の気候変化は小さかったらしい(冷涼・中湿)。ペリカン湖文化期(3000年−1700年前)の矢じりが2個(1個は遺失)出土しており、モリネズミが運んだか?洞窟に入った動物に食い込んでいたか?.

たて穴の存在により、Rat's Nest Caveの甲虫化石群は、普通の洞窟相ではなく、多数の動物の死体・腐敗を反映したものになっている。


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