update 17. Aug. 2012

アラスカ自然紀行
  by S. Shiyake 
 2012年8月6日〜14日
 My Visit to Nature of ALASKA

本ページはfacebookやmixiで書いたblogに加筆して、一般公開するものです。


 Contents
●Anchorage アンカレジ
●Bethel ベセル
●A dry town 禁酒の町
●Denali マッキンリー山
●Sedge Daner ルリボシヤンマ
●Wetland 湿地
●Traps トラップ
●Spruce トウヒ
●Alaska Wildlife Conservation Center アラスカ野生生物保護センター
●Beetles 甲虫

●Anchorage アンカレジ
 関西空港からシアトル経由で、アラスカに着きました。こちらはとても涼しい(というか、朝晩は寒い)です。

 中心都市のアンカレジの郊外には槍ヶ岳・穂高岳のような山がつらなっていて、谷には氷河地形のみならず、実際に氷河も見えます。

 
 アンカレジ国際空港から市街地へ向かう。街の東郊に、北アルプスのような氷河地形が見える。ピーク標高は最高でも1500m程度。 
  アンカレジ郊外に見えるスペンサー氷河(Spencer Glacier)。手前のターナゲン入江(Turnagain Inlet)は干満の差が激しいとみえ、見たことないぐらいの広い干潟が広がっている。

Bethel ベセル
 アンカレッジから飛行機で1時間余り、ベーリング海峡に近い南西部のBethel(ベセル)という人口6,000人の小さな村へ行きました。

 ここは夏の気温が低いため、永久凍土となっていて、周囲には森林がありません。いわゆる「ツンドラ」の環境です。

 実際に踏み入れてみると、コケや地衣類が、湿地の浮島のようにフワフワして、意外に歩きやすい印象がありました。ただ、樹がまったくないわけではなく、ヤナギやハンノキは、背丈+α程度には育っているところがありました。

 
  Bethelの周辺環境(飛行機から)。ツンドラ(tundra)の中に、無数の池沼が見える。
 
  ツンドラを構成する生物のひとつ、地衣類。Reindeer lichen。

●A dry town 禁酒の町
  午後7時にもなったら、ビールか何か、アルコールでホロッとなって眠りたいところだが、この村は何と禁酒地区なのだそうな。アラスカでは、先住民族の多い村には、こういう例が少なくないらしい(このBethelはエスキモーのひとつ[ユピック族]の中心の街である)。そういえば、椎名誠の本(「極北の狩人」2006年、講談社)にも、そのようなことが書かれていたが、私自身がそれに遭遇するとは思っていなかった。街には酒屋が無いのみならず、どのレストランにも、ビール1本さえ置いていない。

 まあ、アルコール抜きで夜更けを迎えるのもいいか?とも思ったが、高緯度なため、午後10時を過ぎても、周囲は普通に明るい。

 
 
 村中にあるユピック族博物館(Yup'ik Museum)と、その展示。

●Denali マッキンリー山
 BethelからAnchorageへ戻る飛行機の中から、眼下に広がる氷河に覆われた山々の写真をパチパチと撮っていたら、となりに座っていた、おじさんが「おい、遠くにデナリ(マッキンリー山)が見えているぞ」と教えてくれた。

 アンカレッジから北方面には行かないスケジュールにしていたので、拝むのは、あきらめていたが、おもいがけない幸運であった。

 北米大陸最高峰 6,194 mの山塊は、遠くからでも、さすがに迫力があった(写真)。

 
 氷河に覆われた山々(山名は不明)。
 
 右がデナリ(マッキンリー山)。標高6,194 mで、北米大陸の最高峰。Denali(McKinley): right.

●Sedge Daner ルリボシヤンマ

 昆虫のうち、トンボはよく目立ちました。特にルリボシヤンマ(日本と同種らしい)は、池の近くのみならず、アンカレッジの市街地でもびゅんびゅん飛び回ってました。

 
  ルリボシヤンマ Sedge Daner。日本と異なり、アラスカでは我が物で飛び回っている印象がある。


 そのほか、エゾトンボ科の1種とアカネ科の1種(ずいぶん小さいが、オスは粉をふく)も見ましたた。イトトンボ類も何種かはいそうでした。

 
  小ぶりなアカネの一種。


 他の昆虫では、チョウと直翅類は結局、1匹も見ませんでした(幼虫も)。本にはキアゲハやキベリタテハ、オオイチモンジの近縁種などがいると書いてあるのですが・・・。あと、山へ行けば、ウスバキチョウもいるんだろうけど、見る機会はありませんでした・・・。


●Wetland 湿地
 今回は主に湿地帯をまわったのですが、私の嫌いなヘビなどの爬虫類は、アラスカにいるあいだ、ついに一匹も見ませんでした。両生類は温暖な南東部にはサンショウウオなどもいるらしいですが、今回訪問した中央部・中央南部地域には、一部のカエルを除いて、ほとんどいないようです。私自身、湿地でカエルを1匹だけ見ただけでした。

 アラスカの池沼はトンボの羽音以外、とても静かなところでした。

 
キーナイ半島にあるTern Lake。むこうに見える山はMadson Mtn (標高 5,267ft)か?池に映る山も美しい。
 
 キーナイ半島に無数にある湿地。One of many wetlands in Kenai Peninsula.
 
 シギの一種。湖のへりの湿地でついばんでいた。
 
湿地で魚とりをして遊ぶユピック族の少年たちが「Blackfish」と教えてくれた。本を見ると「Alaska Blackfish: (学名)Dallia pectoralis」と載っていた。

●Traps トラップ
  高緯度なために、日暮れの心配がないというのはありがたいもので、さなぎ粉のピットフォールトラップは多い時で100個近く、かけることができました。だいたい午後9時過ぎまで、作業をしました(それでも、外はまだかなり明るい)。

 ただし、日没後は気温が10度前後まで気温が下がるためか、ヒット率は低かったです。20個に1個ぐらい、何かが入っているぐらいでした(目標の甲虫はたいへん少なく、多くはクモやナメクジ・・・)。それ以外は、何者にも邪魔されず、設置当時のまま、朝を迎えていました(いろんな獣や鳥にやられる関西の状況とは、まったく異なっています・・・)。

 トラップで得られた成果のうち、重量的にもっとも大きな獲物は、トガリネズミの一種 Sorex sp.(英語名:Shrew)でした。トウヒの林内で水を張ったFlight Intercept Trap(FIT)に落ち込んで、溺れてしまった例が2回ありました。アラスカには9種いるらしいので、種までは現地では判明しませんでした。とりあえず、動物研究室へのお土産にすることにしました。

 
トガリネズミの一種。昆虫用のトラップに落ち込んで溺れていた。 Shrew.(Sorex sp.)

●Spruce トウヒ

 樹林帯とツンドラ帯の境目の、いわゆる森林限界まで生えている植物は、ここアラスカでは針葉樹のトウヒ属の類、White Spruce(学名: Piceaglauca)とBlack Spruce(学名:Picea mariana)でした。日本のハリモミほどではないものの、かなりゴワゴワとした頑丈な葉をもつ植物です。

 この類の樹上に形成されるカサアブラムシの虫こぶ(ゴール)を調べていた時期がありましたが、アラスカでは1つも見ることがありませんでした。

 移動日に、日没近く(10時すぎ)まで走っていたら、トウヒが疎らに生える草原に、夕日が緩やかに沈んでいきました。

 
 トウヒが疎らに生える草原での、遅い日没。Spruce sparse forest and the late sunset.

●Alaska Wildlife Conservation Center アラスカ野生生物保護センター
 アラスカでは、「見渡す限りの草原のむこうに、クマやトナカイなどの野生動物が見える」、と期待して来ましたが、実際にこれら見るのはたいへん難しいことがわかりました。

 アンカレジに戻る途中、南郊にAlaska Wildlife Conservation Centerというのがあるので、立ち寄ってみました。ここでようやく、ヒグマと同種のグリズリーベアのほか、ブラックベア、ヘラジカ、トナカイ、ハクトウワシなど、アラスカを代表する大型動物が生で見られました。

 車での乗り入れが可能なので、完全にアラスカン・サファリパークな感じでした。入場料は大人1人10ドルで、日曜日だったためか、家族連れでにぎわっていました。

 
 グリズリーベア。日本(北海道)のヒグマと種レベルでは同じ。Brown Bear.
 
 ヘラジカ(ムース)。最終氷期には日本にも分布し、化石も出ている。Moose.
 
 トナカイ(カリブーまたはレインディアとも)。Reindeer.

●Beetles 甲虫
 広葉樹では、ヤナギ属Salix、ハンノキ属Alnus、カバノキ属Betulaが、森林限界近くに生えていて、北海道とたいへんよく似ている感じでした。ヤナギ属の枝を叩くと、大型のゾウムシの一種(Lepyrus sp.)が落ちてきました(写真)。

 あと、トラップに入った甲虫のひとつに、ハンミョウモドキ属(Elaphrus)の類がいました。詳細はこれから調べたいと思います。

 草原をスィープしていると、甲虫では一般にハムシがよく入りまするが、アラスカでは全く見ませんでした(アラスカでは30種ほどの記録はあるようですが・・)。半翅類や双翅類はとても多かったです。

   
 ゾウムシの一種 Lepyrus sp.  ハンミョウモドキ属の一種 Elaphrus sp.

  予算や他の業務の関係で、アラスカ遠征は1週間(現地でのフィールドワークは実質4日)ほどでしたが、いろいろ経験できました。
 
  8月14日午後に無事に日本へ帰国しました。

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