※一部抜粋した要約です。詳細については、本をご覧下さい。
Step 1 鳥類目録の作成
Step 2 希少性判定対象種の選定
Step 3 生息環境の調査(以降のStepに関わらないので省略)
Step 4 生息状況の調査
Step 5 判定対象個体群の選定
Step 6 府県別希少性の判定
Step 7 近畿地方全体での希少性の判定
■■第2章 科学的なレッドデータブックのつくり方■■
■2-3 鳥類目録を作成し,なかから希少性判定対象種を選ぶ
鳥類目録をもとに、1)もともと希少性評価の対象となりえない「迷行種」、2)希少性評価ができない「情報不足」、3)明らかに希少でない「多数種」の3者を近畿の鳥類目録から除外し、希少性の判定をおこなう対象種を絞り込む。
1)は移動・分散力の大きい鳥類に特有のことで、ある地域で記録される種が必ずしもその地域に生息するものであるとはいえないことに関係している。「迷行種」の決定にあたっては「毎年複数個体が生息・渡来・通過する場所を予見できない種」という基準をもちいる。したがって,近畿地方で1か所でも複数個体の生息・渡来・通過が予見できる場所があれば、その種は「迷行種」とはみなされない。
2)はアビ類のように、海岸を遠く離れた海上に生息する種などで、分布や個体数の多少・増減を観察者がとうてい判断できないとみなせるもの。
3)はスズメやハシブトガラスに代表されるように,近畿の各府県にごく普通にみられ,誰の眼からみても希少でないことが明白な種。「多数種」の目安は近畿地方全体の個体数がおおむね10,000羽以上とする。
■2-5 生息状況を調査する
希少性のランク分けの指標となるべきデータとして、各種の個体数、個体数の増減傾向、生息環境の消失危険度の3つを用いる。さらに、極端に偏った分布は絶滅の可能性を上昇させる可能性があるので、分布パターンも参考資料として考慮する。また上記の各データは種による発見のしやすさや従来の調査努力量の影響を受けている可能性があるので、生息情報の信頼度というデータ項目を付け加える。
これら5つのデータ項目について、それぞれ3つもしくは4つのカテゴリーをもうけ、希少性の判定対象種が生息する場合、各種について1つのカテゴリーを選択する(生息個体数については「2桁もしくは3桁」といった複数回答も可とする)。
表2-4 生息状況の指標となるデータの種類とカテゴリー一覧
| データの種類 |
カテゴリー |
| |
1 |
2 |
3 |
4 |
| 生息情報の信頼度 |
低い |
中くらい |
高い |
|
| 分布パターン |
極めて集中 |
集中 |
全体にまばら |
普遍 |
| 生息環境の消失危険度 |
極めて大きい |
大きい |
あり |
なし |
| 生息個体数 |
1桁 |
2桁 |
3桁 |
4桁 |
| 個体数の増減 |
急減した |
減少した |
増減なし |
増加した |
対象個体群は「繁殖個体群」、「越冬個体群」、「通過個体群」(あるいは夏期に生息しているが、繁殖しているかどうか不明の「夏期滞在個体群」)といった季節的に区分できる個体群のいずれかを選ぶ。この区分は移動能力が高く季節移動をすることが多い鳥類においては非常に重要である。たとえば、同一種であっても府県間で対象個体群が異なっていたり、同一府県で「繁殖個体群」と「越冬個体群」それぞれについてデータを別に記入する必要があるといったことが生じる。つまり、データシートの記入あるいは希少性判定は各種の季節的に区分できる個体群ごとに行うことが原則となる。
■2-6 希少性を判定する
1)府県別の判定
生息状況調査でえられた5種類のデータの内、生息環境の消失危険度、生息個体数、個体数の増減の3つのインデックスについて、生息データにもとづくポイントを与え,3つのポイントの積算値を算出し評価値とする。
次に、種毎・府県毎(個体群毎)に得られた評価値により、4段階の府県別の希少性ランクを区分する。
表2-6 (a) 生息状況を表すデータの各カテゴリーに与えたポイント
生息個体数において二つのカテゴリーを選んだ場合は、二つのカテゴリーのポイントの中間値を与える。
| データの種類 |
カテゴリー |
| |
1 |
2 |
3 |
4 |
| 生息環境の消失危険度 |
8 |
4 |
2 |
1 |
| 生息個体数 |
8 |
4 |
2 |
1 |
| 個体数の増減 |
8 |
4 |
1 |
1/2 |
表2-6 (b) 評価値による希少性ランクの区分
| 評価値 |
希少性ランク |
説明 |
| 128- |
ランク1 危機的絶滅危惧 |
絶滅する可能性がきわめて大きい |
| 32-127 |
ランク2 絶滅危惧 |
絶滅する可能性が大きい |
| 8-31 |
ランク3 準絶滅危惧 |
絶滅する可能性がある |
| -7 |
ランク4 特に危険なし |
(分布パターンによっては要注目を含む) |
2)近畿地方全体での評価
近畿地方全体での評価は、種ごと(対象個体群ごと)に7府県の希少性ランク(1-4)の平均値を求めることにより算出する。平均値は小数点以下の値をもつが、原則として四捨五入、ただし、ちょうど0.5の値をもつときのみ切り捨てるとする。ただし平均値の算出に際しては、生息情報の信頼度が低い(カテゴリー1)府県の判定は用いない。また分布パターンのデータは、近畿地方全体でランク4(特に危険なし)の判定がでた種で極端に偏った分布をする(生息する全府県でカテゴリー1の)場合に考慮する。
■■第3章 近畿地方の鳥類レッドリスト■■
■3-1 判定対象個体群の選定
季節移動をするのがごくあたりまえの鳥類においては同一種であっても(留鳥の場合に)繁殖個体群と越冬個体群の生息状況がまったく異なっていたり、府県によって扱うべき個体群が違っていたりといったことが往々にしてある。このため、判定対象種それぞれについて(すべての個体群の評価をすることも不可能ではないが、このことにともなう混乱を避けるため)、どの個体群の希少性ランクを当該種の希少性ランクとして扱うのかを決めておかねばならない。この点については、「繁殖個体群が近畿地方に存在している種については繁殖個体群のランクを種のランクとする」、「越冬個体群と通過個体群が並存している種については越冬個体群のランクを種のランクとする」ことを原則とする。
ただし、本来通過鳥である種が一部の府県で例外的に越冬していると判断したものでは、越冬個体群よりも通過個体群を優先する。