単寄生と多寄生
捕食寄生の祖先的状態では1頭の寄主は1頭の捕食寄生者によって消費されていました.ところがいくつかのグループではホスト1頭分のエサ資源を複数の個体で利用します.この様な寄生様式を多寄生(Gregarious Parasitism)といい,コバチ上科の諸科やコマユバチ科などでよく見られます.多寄生はホストの体内に複数の卵が産みこまれることによって起こる場合と,産み込まれた1つの卵が分裂を繰り返して,複数の個体となる場合があります.トビコバチ科のCopidosoma属では1つの卵が数千個体にもなることが知られています.また同じくトビコバチ科のCopidosomopsis属ではこうして増えた幼虫には形態的な2型があって,片方は他の捕食寄生者がいた場合それを倒す「ガード」の役割を果たし,成熟することなく死んでいくことが知られています(Cruz1981).
多寄生は体の小さなハチに多く見られます.コバチ上科などは,体が小型化する方向に進んだと考えられていますが,そのきっかけ,あるいは結果として,1頭で消費するには多すぎるエサ資源の複数個体での利用が起こったと考えられます.