お父さんお母さんがたへ

 大阪のまわりでも、あいかわらず緑は削り取られ、川や海は濁ったままです。近代的な生活に塗りこめられ、感受性のすり減ってしまった都会の大人たちには、自然はますます遠くて高くつく存在となりつつあります。ギンギラギンの都会の厚化粧にうんざりして、たまの休暇に、眠い目をこすり、高い電車・バス賃を払ってやっとたどりついた山頂では、ラジカセの騒音とゴミの山。何時間も車を運転して、海水浴場にたどり着いたころにはぐったり。これでは、自然は遠のいていくばかりです。

 子供たちは、ちがいます。大阪のどまん中でも、学校の帰り道に、どこで見つけたのか、オタマジャクシやヤゴをつかまえてきます。だれかが、巣立ちたての子スズメをつかまえようものなら、近所じゅうの子供が大さわぎです。カタツムリでもガガンボでもゴキブリでもナメクジでも、子供たちはまず身のまわりから自然のおもしろさを発見し、そこから多くのことを学んでいます。たとえスーパーで買い与えられたクワガタやヤドカリでも、体験をまじえて話してやれば、クヌギの林やコバルト色の海を空想しています。実物だけでなく、親が話すひとことが、子供の血や肉になっていくかのようです。調子にのって、絵本のクジラの大きさを実感させようとした大人が逆に表現力の限界を感じてしまうこともあります。時には「カセキって何?」と詰め寄られて、汗を流すこともあります。

 親とふんぞり返っておれる時代ではありません。もう一度出直すつもりで、いっしょに勉強してこそ、子供の信用も得られ、共通の話題も生まれようというものです。博物館を家族ぐるみで利用していただき、そのようなお役に立てればと思っています。

 博物館では、展示だけでなく、野外での観察会、室内実習、講演会なども行っています。普及センター(1階入口横)では、専門の学芸員が応対して、自然についての種々のご質問、ご相談にお答えしています。また、電話でのご質問にも応じています。お気軽にご利用ください。