日本鳥学会2001年度大会の講演要旨
■■自由集会10月6日(17:30−19:30)■■
A会場(E11)

第3回 東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワーク支援鳥学グループ(JOGA) 自由集会
●M6 越冬地におけるガンカモ類の羽衣と社会行動(その1)

企画者 須川恒(企画代表者)・宮林泰彦・嶋田哲郎

 1999年5月にコスタリカにおけるラムサール条約第7回締約国会議の場で発足した東アジア地域ガンカモ類重要生息地ネットワークの国内活動を鳥学的に支援する目的の第3回目の集会である.日本国内の14ヶ所のネットワーク参加サイトの活動を積極的にすすめるために,ガンカモ類の現状やその生態の魅力について,研究者が連携して体系的に明らかにする作業を行っている.
 全体の趣旨と今までおよび今回の発表の要旨は東アジアガンカモ類ネットワークのホームページ http://www.jawgp.org/anetのJOGAのページに掲載するのでご覧いただきたい。第1回(1999年)は「ガンカモ類の個体群」、第2回(2000年)は「ガンカモ類の資源利用」を行った。今回は「越冬地におけるガンカモ類の羽衣と社会行動」をテーマとし、その1として一般の人々が接しやすいカモ類を対象とする。
 各地にあるガンカモ類の渡来地には水鳥の観察館があり常駐スタッフがいることも多い。また最近では都会の中の川などに多くのカモ類が越冬するようになり、環境教育や観察会の素材とされる可能性も高い。ところが、観察を指導する人も含め、目の前にいるカモ類について種類と個体数くらいしか情報を読みとれないことが多い。ガンカモ類の羽衣と社会行動に注目することによって、そのような状況に突破口を開こうというのが今回の趣旨である。

1.企画趣旨の説明

2.報告(事例報告のタイトルと基調報告の要旨)

A.越冬地におけるカモ類の羽衣

基調報告1  カモ類の換羽と性・齢の識別について 
              茂田良光(山階鳥類研究所標識研究室)
 日本産カモ科の鳥類の冬羽への換羽(Post-breeding moult)はハクチョウ類・ガン類・リュウキュウガモ類・ツクシガモ類・カモ類を含み,すべての種で成鳥の完全換羽と異なり,幼鳥の第1回冬羽への換羽(Post-juvenile moult)は部分換羽である。この部分換羽の終了後に残っている幼羽に着目することによって,幼鳥と成鳥を識別することが可能である。ここでは日本産カモ類の換羽様式を概説し,性・齢の識別のために有効な方法を解説する。

事例報告1  デコイ(カモ類捕獲用ケージ)によるカモ類の標識調査 −換羽がわかれば、何かがわかる−
               神谷要((財)中海水鳥国際交流基金財団)

B.越冬地におけるカモ類の社会行動

事例報告2 オナガガモのつがい形成行動とその進行過程 
              福田道雄(葛西臨海水族園)

基調報告2 カモ類の越冬地におけるつがい形成の意義 
              中村雅彦(発表者)・渥美猛(上越教育大学・生物)
 多くのカモ類は、内部生殖器が未発達で餌条件の厳しい越冬期につがいを形成する。カモ類の冬期つがい形成の利益は雌にあり、雌はつがいになることで社会的地位を上げ、つがい雄による天敵からの防衛、独身雄からのセクハラ防止などにより採餌効率を上げることができると考えられている。この考えに従えば、雄はつがい雌を数ヶ月にわたり防衛することで自らの採餌効率を下げるなどのコストを伴うはずである。オナガガモを中心に雌利益仮説の正当性と雄の利益について検討する(鳥学会2000年度大会で発表した内容を多くのカモ類に拡張して発表する。この研究は日本動物行動学会誌(J.Ethol. vol. 18l: 127-131)に掲載され、イギリスのBBC Wildlifeという雑誌に紹介された)。

3.質疑・今後の課題の整理