日本鳥学会2001年度大会の講演要旨
■■口頭発表10月7日■■
■B会場(E31)

●B203 高山で繁殖するイワヒバリPrunella collarisの遺伝的構造

○馬場芳之(九州大学・比文)、中村雅彦(上越教育大学・生物)、小池裕子(九州大学・比文)


 イワヒバリPrunella collarisは、ユーラシア大陸の温帯高山帯に生息し、日本では本州中部及び北部の山岳に生息している体長約18センチほどの鳥である。繁殖地が高山帯であるため繁殖分布は本州内に島状に点在し、繁殖期には群れでなわばりを形成しメスがその中で巣を作り繁殖する。高山で繁殖するイワヒバリが山岳間でどのような遺伝的構造を明らかにするために、ミトコンドリアDNAコントロール領域の塩基配列を解析した。
 これまでに白山3試料、立山6試料、乗鞍岳18試料、妙高山2試料、木曽駒ヶ岳1試料、仙丈ヶ岳1試料、八ヶ岳1試料、月山1試料の合計8地域の31試料においてコントロール領域前半部420塩基対の塩基配列の決定をおこった。塩基置換としては欠損が一カ所のみでこれはC連続が8回(ハプロタイプA)と7回(ハプロタイプB)の不安定な違いからなる2つのハプロタイプに分類された。複数試料を解析おこなった乗鞍岳、妙高山、立山、白山の4地域では、これら2つのハプロタイプが混在した。また木曽駒ヶ岳、月山、八ヶ岳ではハプロタイプAが仙丈ヶ岳ではハプロタイプBが検出された。高山で繁殖するライチョウLagopus mutusの解析では、飛騨山脈の2つのハプロタイプと赤石山脈の1ハプロタイプ分布しているのとは異なる分布をしめした。イワヒバリでは飛騨山脈と隣接する妙高山0と白山でもAとBのハプロタイプが共に検出され、中部山岳に広く遺伝的な交流がおこっている可能性を示唆させる結果となった。
 遺伝的多様性に関して、31試料でのハプロタイプ多様度を計算したところ、0.50であった。これは中部山岳のライチョウの0.34と同様にかなり低い値であり、高山で繁殖する種に共通する傾向と考えられる。