現在,波戸岡学芸員は文部省の学芸員等在外派遣研修によって,英国自然史博物館などに3ヵ月間,派遣されています.褪色という難しい問題を抱える液浸標本の永久保管・展示・データベース化を含む維持管理について,200年以上の管理実績を持つ大英自然史博物館やオランダ国立自然博物館で先進技術を学ぼうという物です.

 このページは博物館に寄せられる波戸岡学芸員からのメールの抜粋を再構成してお届けしています.多忙な研修になる様子.どの程度の頻度でお届けできるかは全く不確かですが,ご期待下さい.

なお,グレーの小さな字は日本側で入れている注釈です.


最新情報

波戸岡学芸員は大英自然史での仕事を終え,オランダのライデン自然博物館に滞在中です。.このページでも引き続きライデンでの様子をレポートしていきます.なお大英自然史の関連情報はしやけのドイツ箱にも掲載されています。また、展示については大英自然史博物館ホームページをご覧下さい。


 Date: Mon, 22 Feb 1999 21:36:08 +0900
 Subject: ライデンから

 何とか、通じました。

 宿の窓の正面には、幅25メートルくらいの運河をはさんで、シーボルトの旧邸宅が

見えています。そして、今日、そのシーボルトが約150年前に日本から持って帰った、ウツボ類3種を博物館で調べました。分類学的にはまったく問題はなく、どうこういうことのない種類ばかりですが、感激しました。

これまでの経過
(一番古い物が一番下,より新しい物が上になっています)


Date: Fri, 19 Feb 1999 19:10:59 +0900
 Subject: ロンドン最終


 ホームページ上では展示の方まで、レポートが、まわりませんでしたが、また折を見て紹介していきたいと思います.資料の質・量の豊富さ、大きさに圧倒されたというのが印象でした。また、ヒトの生物学を大きくとりあげているのも特徴的です。植物の方は、Kew Gardenがあるからでしょうか、あまりめだった展示はありませんでした。もちろん生態学や進化の展示にはでてきますが。

 波戸岡。今度はライデンから。通じるかな。


 Date: Wed, 10 Feb 1999 17:44:47 +0900
 Subject: 標本室2

 あと2週間です。ロンドンは。
 剥製の標本庫の写真送ります。

 なんせ、でかい。ざっと、見積もって、35*20m、高さ5mの部屋です。そこに、ジャイアントパンダから、ガラパゴスのゾウガメ類(タイプ!も)、魚、ありとあらゆる生き物の剥製や骨が保管されています。大きさも、ウマの剥製サイズのものから、吹けば飛ぶような魚の皮(もちろん皮でもタイプ標本になっているものはウジャウジャあります)までいろいろです。もちろんウツボは必要なものはすべて見ました。

 その標本庫に今日入った時、ロンドンに来てからの仕事のデータなどを書いたフィールドノートをうっかり忘れてしまい、標本庫を出てから気がつきました。一瞬体から血の気が失せました。幸いすぐに気がついたのとまわった場所を覚えていたので、しばらく(しばらくですよ)さがすと出てきたのでほっとしました。もし、こちらに来て、標本庫に入るようなことがあれば、財布には必ずひもをつけ、体につけておいてください。

 やっぱり送るのは魚です。写っているのはメルルーサというタラ類の剥製です。棚の高さは2.5mぐらいかな。写真ではなかなか大きさはわからないとおもいますが、実際はすごいです。

 日曜は久々に天気がよかったので、海へ行ってみました。初めての大西洋です。ブライトンという観光の町ですが、季節的に生き物が少ないのか、あまり潮の匂いはしませんでした。でも、少ないながら海の生き物はちゃんといました。そのほか、タマキビ類、イガイ類の殻も拾って帰りました。魚は残念ながら、見ませんでした。かわりに、近くのレストランでカレイのなかま(写真下:プレイスといいますが、今、学名はすぐにでてきません)を食べました。

 全長35センチメートルくらいのものの1匹つけでしたが、あまり味付けがされていないのと、独特の臭みがあって、今一というのが感想です。ちなみに約2000円でした。ブライトンという町は観光の町ということで知られているようですが、小さいながら(というかむちゃくちゃ小さい)漁業組合があって、漁師の人もいるようです。組合の倉庫みたいなところにいた、おじさんに話しを聞くと、2月以外は、近場に刺し網を入れ、夏はエビ類、冬はカレイ類、タラ類をとっているとのことでした。


 Date: Mon, 01 Feb 1999 17:54:19 +0900
 Subject: 標本庫と魚


 標本庫の写真送ります。液浸標本のある建物(もちろん、研究室も含む)は、spirit building と呼ばれています。当たり前と言えば当たり前ですが。剥製は別棟の展示棟の収蔵庫に置かれています(写真また、送ります。3mくらいあるミツクリザメの剥製が小さく見えるようなとてつもなくでかい収蔵庫です)。これらの標本庫にはなんと、学名を背負った標本が約8000点もあります。しかもその多くは19世紀のものです。標本は19世紀の末に、ここの魚類のキューレーターだったギュンターという学者がまとめているのですが、その当時のまんまの状態で保存されています。それをずっと見ていたというようなわけです。標本瓶を運ぶときは瓶を抱いて持つので、服は、アルコールの蒸発防止のグリス(ワセリン)と埃で真っ黒です。おかげさんで、研修やりながら、学名の整理もかなりできました。そのへんのこと少しだけ、NSの記事に書き、すでに、和田さんに送っています。記事はたらたら日頃おもっていたこと書いたので、2回に分けることになってしまい、迷惑をかけてしまいました。

 土曜は郊外に出て生き物集めをするつもりでしたが、ロンドン特有の冷たい雨が降ったり止んだりで、止めにしました。でも週末は今回を入れて、後3回、何とか生きた魚が一目見たいと、その気のない市内はあきらめ、天気はよくなかったですが、日曜は少し郊外にでてみることにしました。

 かと言って、あてはなし。ガイドブックを見ると、初めての人が行け、しかも、川がそばにあるような観光地としてハンプトン・コート宮殿が載っています。そこは、ロンドンの南西にあり、最寄り駅も終点です。ついてみると、ちょうど京都の八瀬のような感じでした(ただし、八瀬のように山に囲まれたところではありません)。降りたとたん、駅前は川です。川べりを見渡すといるではありませんが、釣り人が。早速降りて行きました。釣り人はどこの国の人も同じです。全く初対面なのに、「どう、今日は釣れる?」と聞いたら、にこにこ顔で「今一やなあー」(という感じの返事、実際には小さいの数匹釣ったという返事でした)と友達に対するような返事でした。しばらく、その周辺で釣れる魚の話しをしながら見ていると、浮きが沈み、ブリームという魚が上がってきました。

 この魚はコイ科の魚ですが、非常に体高(背腹方向の幅)が高く(広く)、平べったいのが特徴で、イギリスの淡水域では普通に見られます。日本のマダイのことを英語でシー・ブリームといいますが、この魚の英名に由来していると思います。いつもの癖で、「もしいらないんやったら、ちょうだい」と言おうと思ったとたん、キャッチ・アンド・リリースの国、放されてしまいました。釣り道具や餌は最低限のものは用意してはいたのですが、コイ・フナ用のものではなかったので、もう一匹つれるのを待っていました。しかし、残念ながら、釣れないのであきらめました。

 そこで、今度は、川をぶらぶらしながら、近くの釣り具屋で買ったタモで川縁でごそごそやることにしました。季節がら、やぱっりなにもいなく、とれた動物は、ダンゴムシの仲間?1個体と、マイマイの類の殻1個だけでした。道具は、違うけど(投げ釣り仕掛

け)ひょっとしてということもあるので、しばらく、やってみましたが・・・。

 結局、この日、採ったものは、ダンゴムシとマイマイだけでした。鳥は、少なくとも魚に比べて、いろんな種類を見たような気がします。ユリカモメを始めとして、体は黒くて頭の真ん中が白く、縁のある指(やったかな)を持ったバンのようなものや、尾羽がやたら長く、セキレイを2まわりほど大きくし、飛ぶと、ケリのように、白黒の目立つものなどです。写真は撮っていますので、和田さんにまた、見てもらおうと思います。言うの忘れたけど、川はもちろんテムズ川です。

 ハンプトン・コート宮殿? 入場料をとられるので入りませんでした。

 それでは、また。


 Date: Fri, 22 Jan 1999 18:10:23 +0900
 Subject: 食べ物のこと

この文章は初宿学芸員と佐久間学芸員に当てられた2本のメールを編集しています.大阪出身京都在住42歳の辛党にはイギリス暮らしはちょっと大変?



 朝は完璧なブリティッシュスタイル(ただし毎朝同じ)。ジュース、白か黒のパン(自分で焼く)、目玉焼きかスクランブルドエッグ、ソーセージ、大豆の煮たの、焼いたトマト(こんなんあるの初めて知った)、ケロッグのコーンフレークみたいなのが何種類か、牛乳、紅茶。言えばオートミールもでてきます(日本のホテルでの経験はあるが、本場は初めて。こないだトライしたが、はったい粉、わかるかな、に牛乳をいれたようなもので二度と食べるまいと思った)。食べようと思えば腹一杯になります。

 夜は、スープ(ただし日曜の夜ものはだめ、昼の残りの煮詰まったもので超塩辛い。一番最初に飲んだスープがこれで、イギリスのスープは飲まれへんと思った。でも、実はそうではないのがしばらくするとわかった)、ミックスサラダ(レタス、直径にして日本の2倍あるキュウリ、トマト)、日替わりメインディッシュ(肉系かパイ系か魚系)、温野菜(まあ、いろいろ、たいていは三度豆、グリーンピース、マッシュポテト、ゆであげたポテト、フレンチポテト、カリフラワーぐらいかな)、缶詰フルーツのデザート、アイスクリーム、フランスパン、なにか行事みたいなことがあれば何種類かのケーキ(これがグー)です。まかないの陽気なおばちゃんが暖めた皿に入れてくれます。実をいえば、最初の頃は抵抗あったのですが、ある発見をして食べられるようになりました。日本人て結構、鍋に代表されるように食材をごちゃ混ぜにして食べるの好きですよね。僕も鍋好きです。その感覚で皿にもられたものを全部混ぜて、ちょっと醤油(日本食の店で買ってきたキッコーマンの丸大豆醤油)を足して食べるといけるんです。それで、食べられるようになりました。よくよく見ると、極端ではないですが、こちらの人も適当に混ぜ合わせたべているようです。
 昼飯:ファーストフードがOKなら大丈夫。おれあかんけど。しゃあないからがまんしている。なお、宿は土、日は昼食付き。

 今日昼休みに初めて外にでました。それまで、ずっと9時から5時まで、研究棟こもりっきりで、昼もサンドイッチかじりながらの状態でしたので(なんか貧乏たらしい気もしますが、おかげさんで、かなりの成果があがりましたが)。昼も外で食べたのですが、そこでの話し。Little Japanと言う日本食もどきの店でチキンスープヌードルというやつをたのみました。で、でてきたものは、なんと、鳥がらスープ(たぶん)に麺が入り、あろうことか、甘いたれのかかった焼き鳥がのっているものでした。さすがにこれはたべられなかった。メニューに大きくでているので、売れてはいるのだろうが、いった誰がたべるのだろうかと思いました。


 Date: Fri, 15 Jan 1999 00:47:20 +0900
 Subject: [ロンドンのこと]

寒中お見舞い申し上げます(ひょっとしてまだ、松の内?)。

 2週間ほどたって、なんとなく生活に慣れてきました。この間に経験ことを含めて書きました、こちらに来る方にはご参考にしていただければ幸いです。
 イヤー、やっぱりBMや、すべてがでかい。サソリもでかい。なんのこっちゃ。
 こっちの天気:気温は今のところ京都、大阪と変わりない。むしろ暖かいような気がします。晴れたり、曇ったり、雨が降ったりとよく変わるので、軽い折り畳み傘は必携。最近少し寒い。
 交通:バス、地下鉄が便利でめちゃめちゃ多い。一ヶ月定期はないが、一週間、バスと地下鉄乗り放題のTravelcardというのがある(ゾーン内であれば確か国鉄もOKだったと思う)。ロンドンの交通は大阪みたいに、距離で何区ではなく、ロンドンのオックスフォードサーカス付近を中心として同心円状にゾーン1からゾーン6にわかれている。そのゾーンのなかでさえあれば、どの路線に乗っても大丈夫。購入できるTravelcardはゾーン1&2か全ゾーンの2種類だけ。宿から博物館まではゾーン1&2というやつで十分。£17.6(正月前までは£16.6だったが値上げされてしまった)。ちなみに宿の最寄りはElephant & Castle、博物館最寄りは South Kensington でいずれもゾーン1と2の境界内。

 宿から博物館までのイメージやけど、ちょうど、新大阪から地下鉄に乗って淀川を越え、梅田、本町、難波を通って、長居にくる感じです。若干、これより、所要時間が短く、途中で乗り換えがあって、また、方向が北から南でなく、東から西ですが。新大阪がエレファント&カッスル駅、淀川がテムズ川(川の”下”をロンドンの地下鉄は走っとる!!)、梅田、本町、難波が、ピカデリーサーカスやシティーと呼ばれるロンドンの中心、長居がサウスケンシントンです。博物館までは長居みたいに歩かないけど。地下鉄やけど、ほんとにすごい。こちらではsubwayとはいわない。undergroundとかtubeと言う。ガイド書にそう書いてあるのを読みましたが、実際に使って実感しました。まさに地下にある”3次元”の管や。トンネルも円形なら、地下鉄電車の断面も円型(正確にはカマボコ型、さらに、小さくて、ドア際など、僕の背の高さでも低いくらい)、大きさもトンネルと電車のサイズがほぼ同じで電車とトンネルの壁の隙間がほとんどない。3次元なので、駅の水深ならぬ地深も深く、長いエスカレーターを使うか、エレベーター(こっちではリフトという)を使う。エスカレーターはどれもが、京都駅ビルの中にあるエスカレーターの半分くらいの長さがあるんとちゃうやろか。また、エレファント&カッスル駅のエレベーターの横には階段があるんやけど、これは、非常以外使わないでね、の張り紙。電気代のかかるエレベータが通常の乗り物みたい。



 実際に仕事をはじめてから、一週間がたちましたが、なんとか軌道に乗ってきたようです。メールも受け取りできるようになったし。こっちは完全週休2日制で、夕方も5時半くらいまでしか仕事ができないので、標本関連を優先的にやってます。さすが標本の管理はすごいですね。私がみているのはほとんどすべてが100年以上前のものですが、標本瓶は埃まりまみれであるにも関わらず将来への維持という点での基本は完全に押さえられている。整理もされてあって仕事がやりやすいです。

 朝、テムズ川の偵察にいってきましたが、ユリカモメ?がいるくらいで、あまり魚がつれるような雰囲気ではありませんでした。せっかく釣り竿持ってきたのに。岸辺にもなにもいません。時期があるのかもしれませんが

 ファーストフードがだめなのでうどんがそろそろ恋しくなってきました。こっちには結構日本食の店がありますが、がまんしてます。高いから。

1月10日。波戸岡。


Date: Thu, 07 Jan 1999 18:40:37 +0900
Subject: ホームページ

(このホームページを)見ました。
 研究室のJamesさんのWindowsのNetscape Navでです。インターネットは自由に使っていいよといってくれました。当たり前のことですがFEPがはいっていないので、日本語はすべて□□□□□になっています。館のHPをまず開いて、new となっているあたりをエイッとやったら、まず、□□□□□がでてきました。そして、それらしいところを押したら、英語版がでてきた。かっこええやん。内容あらへんのに、看板だけが目立ってる。これで、日本のニュースも英語でやけど仕入れられる(かな、ニュースの英語版でとったやろか)[やってます]。浦島太郎さんにならなくてすみそうだ。波戸岡。
とりあえず着々と作業環境は整っているみたいです.ホームページは英語版も絶対必要,と言うことですね.

Date: Tue, 05 Jan 1999 20:38:29 +0900

Subject: あけましておめでとうございます

波戸岡です。
やっとつながった。ふーうっと。
ホテル、市内各所いろいろまわったけど、どこもだめでした。公衆電話でメールのやりとりできるのは日本だけみたい。
結局、博物館の電話からニフティーでやってます。

ついてしばらくは、時差ボケ、食べ物の違い(小生、ハンバーガー、ピザ、フレンチポテト系の食い物がほとんどだめです)、日本にいるときからの風邪でさすがに、しばらくしんどかったです。

食べ物は少ずつならして行かなければらないなーと思っていますが、最近やっと慣れてきたようです。

とりあえずメール開通のお知らせまで。みなさまによろしく。


12/26日出発した波戸岡氏はクリスマス休暇あけの英国自然史博物館で研修を始めています.ノートパソコンを持ち込み,通信には悪戦苦闘している様子です.
Date: Sat, 26 Dec 1998 08:03:30 +0900

Subject: 行ってきます!
おかげで、メール転送されるようになりました。

それでは行って来ます。

今度はむこうから。


この研修のために波戸岡氏は自らノートパソコンを購入し,電子メールも博物館から自動転送されるようにしました.とはいえ電話事情その他異なる海外ですから,何やら大変そう..
Date: Fri, 4 Dec 1998 10:45:16 +0900
Subject: 海外研修

波戸岡です
本日,文部省から,決定の電話をもらいました.
 12月26日から3月26日まで,行って来ます.
 色々とご迷惑をおかけし,また,留守中も,ご迷惑をおかけすると思いますが,よろしくお願いいたします.


この後正式の書類を得て大阪市の許可を得,晴れて派遣が決定しました.

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