私の仕事
 博物館の仕事には,調査研究資料収集保管展示普及教育という四つの大きな柱があります.大阪市立自然史博物館の学芸員は,これらすべてに関わります.



調査研究
 過去から現在まで,日本列島にはどんな種類の哺乳類がすんでいたのか,どんなふうに入れ替わってきたのか,そして大陸の哺乳類との関係はどうだったのか,といったことに興味を持っています.これまでにやってきたのは,以下のような研究です.
(1)ステゴドン科(長鼻類・ゾウのなかま)の分類と系統に関する研究.
 とくに日本の500万年前より新しい地層から見つかるゾウの化石の分類と,その年代について.最近は中国にも出かけています.
(2)長鼻類の足跡化石に関する研究.
 富田林市石川河床や,長野県野尻湖底の足跡化石を調査しました.
(3)大阪平野および周辺地域における,鮮新-更新世の古脊椎動物相の変遷と,生層序区分に関する研究.
(4)備讃瀬戸海底産哺乳動物相に関する研究.
(5)大阪市および周辺地域の遺跡発掘にともなう,層序および脊椎動物遺体に関する研究.

資料収集保管
 私が専門にしている哺乳類の化石は,洞窟等で見つかるものをのぞけば,貝や植物の化石のように多く見つかるものではありません.だから哺乳類の化石の採集を主な目的に,どこかへ行くということは,あまりありません.それで,資料収集のためには,すでに見つかっている標本の模型を作ることが,重要な役割を果たします.
 化石の研究をするうえで欠かせないのは,比較のための現生生物の標本を集めることです.自然史博物館の動物研究室には,哺乳類が専門の学芸員がいないこともあって,哺乳類の骨格標本を集める(作る)仕事(リンク)もしています(本当はW学芸員の仕事).これまで標本にした一番大きな動物は,全長19メートルのナガスクジラ.この時は,自分では解剖できなかったので,和歌山県太地町の人たちにお願いしました.しかしその後の骨格標本をつくる仕事は,自然史博物館友の会や野尻湖友の会の人たちにも協力してもらって,自力でやりました.博物館が自力でつくった骨格標本としては,たぶん日本最大だろうと思います(ちょっと自慢).一方,最小の標本はネパール産のコビトジャコウネズミです.こちらは,世界最小の哺乳類といわれているものの内のひとつです.

展示
 自然史博物館の展示の中で人気があるのは,やはり大きな恐竜やゾウの全身骨格でしょう.そういう大物のほとんどが,私の担当ということになります.各学芸員が展示室の中で担当している部分を比較すれば,面積でも堆積でも,たぶん私が1位でしょう(だから偉いというわけではないけど,仕事はエライ).それで大変なのが,毎年年末にやっている大掃除.恐竜やゾウの全身骨格につもったほこりを払わなければなりません.他の学芸員にも手伝ってもらうのですが,なかなか大変です.実はオリエンテーションホールに展示してあるナウマンゾウの復元模型も,毎年,背中に乗って掃除しています.

普及教育
 地層を見るとか化石をさがすとか地学関係の観察会をするためには,地層が見える場所がないとやりようがありません.以前に比べると,大阪やその近くでは,そんな場所は少なくなってしまいました.工事で崖ができてもすぐに覆われてしまったり,規制が厳しくて崖に近づけないことが多いのです.そこでどうしても遠出をすることになります.悩みの多いところです.みなさん,遠くても我慢して参加して下さい.