貝類コレクション
 七重箱の枡の中の貝殻標本については故梶山彦太郎氏が分析された.貝類コレクションは古くから様々な形で所持する人の範囲が広く,蒹葭堂標本とするのに慎重を期すとしたうえで,当標本の特異性を述べている.
 中でもモミジソデというヨーロッパ北海産の巻貝は,日本に現存する標本でおそらくヨーロッパよりもたらされた最初の標本であるとし,蒹葭堂の交流関係との関わりにふれている.また,重箱の最上段は2箱に分かれ,それぞれ54帖にちなんで54種の貝をいれた源氏貝と三十六歌仙をあらわした36種の歌仙貝があり,中世からの伝統をつぐ本格的な標本であると解説され,その大きな意義を指摘している.
 また,漆塗りの箱の外側を飾る貝殻をあわせて,貝の種類は金子寿衛男氏と梶山氏によって同定され,腹足類(巻貝)73科249種,掘足綱1種,二枚貝綱38科141種,頭足綱1科2種,多板綱1種に及ぶ.これらの貝は,海棲,淡水棲,陸棲のすべてにわたり,海棲種は日本近海だけでなく,南方に分布するもの,前述の大西洋にすむものも含まれ,収集範囲の広さが特筆される.
貝類写真(画像をクリックすると拡大します)

1段目

2段目

3段目
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古目録
 標本箱に合わせ、実物大の和紙に墨書されている。ただ、第一段目左側の箱に対する目録のみが失われている。また各目録の右上端には朱で数字が記入され、何段目かを示している。7段目下段の目録は、十二支に該当する貝名を書いた紙片が破りとられている。

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