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本の紹介「ヤモリの指から不思議なテープ」

「ヤモリの指から不思議なテープ」松田素子・江口絵理著・石田秀輝監修・西澤真樹子画、アリス館、2011年12月、ISBN978-4-7520-0551-3、1300円+税


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【高田みちよ 20120224】【公開用】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 新幹線の先頭がカワセミを模しているとか、消音にフクロウの羽を模しているとか、鳥好きなら聞いたことがあるかも。しかし、どうやって開発したかの詳しい話を知っている人はそんなにいないはず。ましてや開発者へのインタビューなんてそうそう聞いたことがないはず。本書は生き物の体を工学的に活用した例を、ものすごく詳しく紹介してくれる。そして小難しい仕組みをイラストを多用してわかりやすく解説してくれる。今後の発展として、「できるかも」が未来の新しい夢を語ってくれる。生き物はすごい、という感心と、それに気づいて活用した人間はすごい、という2つの感心にあふれた本。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物好きだけでなく、工学好きにぜひ!

【井岡泰一 20120223】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 ヤモリは、(家まもり)、イモリは、(井戸まもり)、爬虫類のヤモリは、家の中でも林の中でも、自由に歩き回る。かべにも、天井にも、どこにでもぺたぺた、そんなに軽い体でもないのに落ちない。ヒトにはとても、まねできない。不思議なことを調べていくと、その仕組みにびっくり。人がそれを真似して・・・、人間の知らないことが、この地球にはいっぱい。
 私たちにとっては不思議でも、自然のなかではしぜんに存在する。粘りづよく、科学の発達とともに、解明してきた最新の技術が、すでに自然の中では、あたりまえに存在していた。そして、新しいテクノロジーが、そんな自然からの再発見から生まれました。
 発見者の考えやや、知識も織りまぜた情報満載の本です。わかりやすい絵で、難しい内容も、さりげ。

 お薦め度:★★★★  対象:誰にでも薦められる本

【加納康嗣 20120220】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 人類はナノメートルまで見えるようになり、その結果、生物を模倣したネイチャー・テクノロジーが飛躍的に進み始めた。ヤモリの吸盤を真似た接着剤なしのテープ、蚊の口のような痛くない注射針、フクロウに学ぶ静かな新幹線などなど。興味深い16項目が語られる。それぞれが文字だけでは理解しにくい内容だが、西澤さんの絵があるから、楽しく理解ができて、あっという間に読み進む。それにしても細部にわたって詳しく丁寧に、面白く絵が書きこまれている。よく書けている。1年ばかりかかり、何度も書き直し苦労したと聴いたが、さもありなんと思う。見ることができないナノワールドをこれだけ身近に理解できるのは何と言っても絵のおかげである。

 お薦め度:★★★★  対象:小学生高学年以上の多くの人々

【萩野哲 20120220】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 ヤモリはなぜ壁や天井を自由に歩くことができるか?カタツムリの殻はなぜいつもきれいか?等々、生物が持っている特殊な能力には驚くべきものがある。原理がわかれば、これを利用しない法はないと考えるのが人間。本書はこれらネイチャー・テクノロジーの現状をわかりやすく解説している。今のところ、人間の技術は自然界の実力には及ばないようであるが、そのうち、追いつき、追い越す時代が来ることを期待したいものである。「ヤモリの指」(P.フォーブス、2007)や「自然に学ぶ粋なテクノロジーなぜカタツムリの殻は汚れないのか」(石田秀輝、2009)等、類書はいくつかあるが、どんな原理なのか、今の技術はどこまで進んでいるのか、それらの理解を助け、疑問に答えるわかりやすい絵が満載なのが本書の他にはないすぐれたところである。

 お薦め度:★★★  対象:人間の知恵は如何に自然界からの恩恵を受けているか実感したい人

【西村寿雄 20120224】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 表紙に大きく上記の題名が書かれているが、この本はむしろ、題名の上に小さく書かれている「自然に学んだすごい技術(テクノロジー)」が本題である。自然界に君臨する小さな生き物の巧妙な機能を人間が巧みに取り入れている事例が16紹介されている。
 まずは「ヤモリはすごい!」。そういえば、ヤモリは垂直な壁や天井でも自由自在に歩く。吸盤がないのにどうして壁にくっつけるのか。その秘密は足の裏にある。ヤモリの足の裏には細い毛がびっしりとつまっている。おまけにその毛先の一つ一つの形に特別な秘密がある。その構造を研究して生まれたのがカーボンナノチューブ。ヤモリにまねてどこでも登れるロボットの開発も進んでいるとか。
 その他、ハスの葉から超撥水の技術を学び水がしみこまない紙皿やトイレットペーパーが開発された例、蚊の針から痛くない注射針開発の話、フクロウの羽根やカワセミの口の形から速くて静かな新幹線が開発された話など興味ある話がいっぱいつまっている。
 少し文字は小さいが明解なイラストいっぱいで小学校高学年から読める。持続可能な未来を創るために「自然に学ぶ」ことの大切さを訴えて終わっている。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物に興味のある小学生以上

【六車恭子 20120224】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 この本では18もの生物が教えてくれた最先端の技術に開花した事例の報告がなされている。蚊が教えてくれた「痛くない注射針」、フクロウとカワセミに学んだ「静かな新幹線」、シロアリ塚みたいな「エアコンいらずの建物」等々・・・。ネイチャー・テクノロジーの分野は近年飛躍的に進みはじめているらしい。現場の研究者の探究心が自然界から学んで開く扉はまるで千金の値なのだろう。生ものが到達した知恵に耳をかた向ける発想の転換は生ものを身近に感じる私たちの暮らしの見直しも迫っているようだ。
 説明文をより明瞭に描ききって不思議ワールドを身近にした西澤さんのイラストにわくわくしながら大いに楽しめる一冊だ。

 お薦め度:★★★★  対象:生もの大好きな人も、嫌いな人も

【村山涼二 20120220】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 ネイチャーテクノロジーとして、自然界の16種の動物や植物の持っている機能を調べ、現代の最新技術の中に取り込み、応用されている実例が示されている。ハスの葉の撥水性は汚れないタイルに、蚊の針は痛くない注射針に、ひっつき虫はマジックテープに、フクロウの羽は新幹線の騒音防止として実用化されている等。蛾の目のモスアイ構造は美術館での無反射フイルムとして実用化、更に太陽光発電の効率向上にも期待される。シロアリ塚は省エネ、エアコンに役立つだろう。手書きのさしえ・文字が、やさしく読者の理解を助けてくれる。

 お薦め度:★★★★  対象:理系を目指す小(高学年)・中・高校生及び広く一般の人々

【和田岳 20120224】
●「ヤモリの指から不思議なテープ」石田秀輝監修、アリス館

 生き物に学んで、真似して、開発した技術をネイチャー・テクノロジーという。ヤモリ、ハス、蚊、ひっつき虫、ハコフグ、フクロウ、カタツムリ、葉っぱ、フナクイムシ、蛾、モルフォチョウ、タコ、ヘビ、イルカ、シロアリ、ハチ。さまざまな生き物から学んだネイチャー・テクノロジーが、たくさんのイラストと共に次々と紹介される。
 というか、字が多めのマンガみたい。文章とイラスト、全部を見ていこうとすると、情報量いっぱいで、けっこうお腹一杯。

 お薦め度:★★★  対象:生きものから学んだテクノロジーに興味のある人

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