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本の紹介「ウェゲナ一の大陸移動説は仮説実験の勝利」

「ウェゲナ一の大陸移動説は仮説実験の勝利」西村寿雄著、文芸社、2017年1月、ISBN978-4-286-17876-9、1200円+税


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【西本由佳 20171015】
●「ウェゲナ一の大陸移動説は仮説実験の勝利」西村寿雄著、文芸社

 それまで誰も言っていなかったことを言うのは楽じゃない。研究にオリジナリティは不可欠だけど、誰かがやったことを少し発展させてみて、たくさんの確からしい説のなかで、わずかばかりの未知のすきまを埋めるのがふつうだ。ウェゲナーは専門外の立場から、大陸移動説を唱え始めた。それを支えた自信はどこからきたのだろう、という疑問の答えが、この本にある。ウェゲナーがいきなり唱えたように見える大陸移動説だが、それにつながる、科学的に検証された証拠はすでに用意されていた。それらのいろんな分野にまたがる説を使ってていねいに仮説を検討したことが、大陸移動説を支えた。新説といっても、それはふつうに科学の方法を積み上げた地道な成果だったのであって、少しも突飛なことではなかったのだなと納得した。

 お薦め度:★★★  対象:科学の考え方について知りたい人


【六車恭子 20170616】
●「ウェゲナ一の大陸移動説は仮説実験の勝利」西村寿雄著、文芸社

 ウェゲナ一の大陸移動説はともすると無味乾燥になりやすい博物的な地質学から地球科学へと私たちの目を向けさせてくれた記念碑的書物だったとし、その後、著者自身も独自の仮説実験授業を推進した経緯をおもちだ。  早すぎるひとつの学説が時代の中で不動の位置を築くまでの経緯が丁寧に纏められている。ウェゲナ一が地質学者でなく、気象専門の地球物理学者だったことも幸いしたのだろうか。ウェゲナ一の研究法には科学の目があったと讃える。実に多くの <検証した事象> を丁寧に積み重ねていったのだ!そして、調査に行ったグリーンランドでの訃報、大陸移動説の殉教者のようにも思える。しかし悲劇的というより、職人魂をみるようで心が暖かくなるのは不思議だ。

 お薦め度:★★★★  対象:地球の成り立ちに挑戦した人々に触れてみたい人


【森住奈穂 20170824】
●「ウェゲナ一の大陸移動説は仮説実験の勝利」西村寿雄著、文芸社

 およそ100年前、世界地図を眺めていたドイツ人気象学者のウェゲナーは、アフリカ大陸と南アメリカ大陸の海岸線がとてもよく似ていることに気付く。そこから始まった大陸移動説は、当初多くの批判を浴び、ウェゲナーの突然の死とともに消え去ったかに見えた。が、その説は時を経て劇的な復活を遂げる。
 ウェゲナーが時代に先んじて大陸移動説を唱えられたのは何故か。「仮説実験」をキーワードに、丁寧な読み解きが展開される。また、教職にあった著者が「大いなる空想をともなう仮説とともに生まれる科学の醍醐味を、多感な子どもたちに味わってもらいたい」「その時代の学問の生きた姿を伝えたい」と作成した授業用プリントも紹介される。新発見が出るたび改訂されるプリント。地球科学の探求は、これからもまだまだとどまることがない。ドキドキ、ワクワクは続く。

 お薦め度:★★★  対象:科学の醍醐味を味わいたいひと
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