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本の紹介「わたしの森林研究」

「わたしの森林研究 鳥のタネまきに注目して」直江将司著、さ・え・ら書房、2015年4月、ISBN978-4-378-03917-6、1400円+税


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【森住奈穂 20160624】
●「わたしの森林研究」直江将司著、さ・え・ら書房

 茨城県にある「小川の森」という研究用に管理された自然林で、「鳥の種子散布をすべて調べあげる」というテーマに挑んだ若き研究者の記録。鳥の種類や数を記録し、種子を採集し、森林改変(広葉樹林→人口林)と動物散布の関係を考察。夏鳥と留鳥、繁殖期と非繁殖期など、細かに区別してデータを取ることで見えてきたことや、今後の展望が記される。カタカナの標準和名の後に漢字でも記されている動植物の名前から、想像が膨らみ、昔のことがわかるようにとの工夫がされている。漢字ってすごい。小川の森では種子から芽生え、幼樹、親木まで、すべての段階が25年に渡り記録されているとのこと。樹木の寿命は長く、ヒトは世代交代をしながら研究を続ける。森林研究は壮大な挑戦であるとのことだ。

 お薦め度:★★★  対象:動物散布の研究を知りたいひと
【和田岳 20160521】
●「わたしの森林研究」直江将司著、さ・え・ら書房

 著者が院生時代に、茨城県北部にある小川試験地でおこなった研究を軸に、鳥による種子散布が紹介される。第1章は、調査のきっかけ。初めて小川試験地に行った。第2章は周食散布を中心に種子散布のざっとした解説。第3章は、調査地にいる鳥類、哺乳類、植物のざっとした紹介。第4章、本の半ばを過ぎて、ようやく自分の研究の話。第5章は、唐突に滋賀県でのカラスの糞分析の話。最終章では、その後の研究が軽く紹介される。
 ことごとくざっとしか説明されない前半。研究者でない人にとっては、妙にややこしいだけのデータを示してくれる後半。一般向けの普及書としては、どちらも問題。そして、調べた個々の果実の様子も、個々の種の鳥の暮らしも、あまり見えてこない。読んでいて、あまり楽しくなかった。

 お薦め度:★  対象:小川試験地に興味があれば
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