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本の紹介「ワタリガラスの謎」

「ワタリガラスの謎」バーンド・ハインリッチ著、どうぶつ社、1995年5月、ISBN978-4-88622-282-4、3000円+税


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【六車恭子 20110826】【公開用】
●「ワタリガラスの謎」バーンド・ハインリッチ著、どうぶつ社

 アメリカ合衆国メイン洲の豪雪、極寒、厳冬の森を舞台に、熱く語られたワタリガラスをめぐる謎解きの序章にあたる最初の3年間の記録である。このハインリッチ教授の下、その後も一大プロジェクトが立ち上げられ、成果を得て現在に至っているようだ。ワタリガラスの総てに迫る著者の執念が本書を生んだのだ!
 日本ではあまり馴染みがないが、「ソロモンの指輪」でローレンツが愛すべきペットとして語ったワタリガラスの野生の状態での生活誌がここでは解き明かされてゆく。死肉を食らう彼らは群れをなし森を放浪し、ねぐらを形成する。動物の死骸を前に食事への奇妙なためらい、わめき声にこめられた召集効果、群れの構成員の内実、綿密な調査と観察からワタリガラスの謎は好奇心を刺激してやまない。風と戯れ光の中で滑走する黒い船体、ワタリガラスをめぐる進化の道程も視野に入れた優れた自然誌がここある!

 お薦め度:★★★★  対象:自然界が繰り出すショーに参加してみたい人

【萩野哲 20110628】
●「ワタリガラスの謎」バーンド・ハインリッチ著、どうぶつ社

 著者は、ワタリガラスが多量の餌を見つけた時、独り占めせず他の個体を呼ぶような行動を観察した。もしそうなら、進化理論に反する大発見である。本書はこの疑問がほんとうかどうか、体力と知力を総動員して謎解きをしていく過程を記録したものである。果たして、他の個体を呼ぶ個体は著者の推理を満足するのだろうか?
 この本には、著者の観察のみならず、ワタリガラスに関して調べられた多くの情報満載である。ロンドン塔にはワタリガラスを飼育する伝統が今でも残っているらしい。

 お薦め度:★★★  対象:動物の行動に興味を持っている人は誰でも

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