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本の紹介「タコの知性」

「タコの知性 その感覚と思考」池田譲著、朝日新書、2020年4月、ISBN978-4-02-295066-6、810円+税


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【西村寿雄 20200614】【公開用】
●「タコの知性」池田譲著、朝日新書

 「タコの脳にはヒトの脳にある脳下垂体というホルモンの司令塔とよく似た働きをする器官、視柄腺があることがわかった」ことから、タコの比較動物学のあらましを研究してきた成果を楽しく紹介している。いったいタコ・イカにどんな知性があるのだろうか。興味をそそられる本である。「タコの賢さ」「タコの感覚世界」「タコの社会性」と続く。たこも道具を使う。色や形も識別できる。あのギョロ目にはどんな効果があるのだろうか。タコに社会性もあると著者は言う。最後に、タコもアンモナイトのように昔は殻を持っていたのではと仮説を立てる。学生さんたちの研究成果も取り入れて、タコ・イカ研究は親しみやすい研究領域であることも紹介する。いったいタコはどんな生き物だろうか。

 お薦め度:★★★  対象:タコ・イカに興味のある人
【萩野哲 20200601】
●「タコの知性」池田譲著、朝日新書

 タコは皆単独生活者だと思っていたら、実は様々で、社会的な種もあるようだ。著者のフィールドである沖縄だといろんな種が住んでいて、いろいろな検討ができるメリットがある。しかし、検討には様々な工夫が必要である。屋内実験では、様々な条件を考慮しなければ成立せず、観察学習を証明するにも、刺激促進や社会的促進を否定できるような巧妙な実験デザインを構築しなければならない。当該種の自然状態での活動時間帯も考慮する必要がある。本書では、気になっていたタコの視覚にも大いに触れられている。哺乳類に劣らない(むしろ反転網膜でない点で優れている)眼を持っており、あれだけ様々な色彩や模様を発現することができるのに、錐体がなく色彩感覚がないという。しかし、触覚も大変優れているし、恐らく視覚だけでは説明できない、既存の測定法では分からない他の何らかの感覚を持っているのではないだろうか。

 お薦め度:★★★  対象:食べること以外にもタコに興味がある人
【和田岳 20200626】
●「タコの知性」池田譲著、朝日新書

 イカやタコを飼育し、おもにその行動を研究してきた著者、今まではイカの本を書いていたが、ついに書いたタコの本。琉球大学の教員という地の利をいかして、多くの人には馴染みのないさまざまな沖縄のタコが登場する。
 視覚や触覚による学習、道具使用、鏡像自己認知など、タコの意外な能力の話が盛り沢山。脊椎動物と似て非なるタコの目。偏光が見えるらしい。社会的なタコもいるらしい。などなど、タコの意外な側面が目白押し。
 タコは250種ほどもいるけど、よく調べられてるのはマダコだけ。イイダコはタコの中でも変わり者で、実験動物として期待されてる。というののも知らなかった。
 トピックはとても面白い。けど、すぐに別方向からの例え話をする著者の説明の仕方が苦手な人もいそう。前振りが長いというか、古いと言うか。

 お薦め度:★★★  対象:タコはけっこう賢い、と聞いて興味を持ったら
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