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本の紹介「スキマの植物図鑑」

「スキマの植物図鑑」塚谷裕一著、中公新書、2014年3月、ISBN978-4-12-102259-2、1000円+税


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【萩野哲 20140616】【公開用】
●「スキマの植物図鑑」塚谷裕一著、中公新書

 道路のアスファルトの割れ目や石垣の隙間から植物が生えていることはよく見かける。「こんな過酷な所でよくぞ育った」と思っていたが実はそうではなく、植物にとっては居心地の良い幸せな楽園であると著者は説く。本書は市街地で季節ごとによく目にする約100種の植物を取り扱っており、これらが実際にスキマから生えている写真を挙げて解説している。「あっ、これ見たことがある」と思うものも多数あるし、本書を読んだ後、スキマ環境に生える植物が気になってくること請け合いの楽しい一冊である。

 お薦め度:★★★★  対象:植物に興味がある都会っ子

【冨永則子 20140625】
●「スキマの植物図鑑」塚谷裕一著、中公新書

 本来、植物が育つべき場所とは思えない壁面や溝・道路の割れ目など、人から見ると窮屈で居心地が悪そうにみえるスキマが、実は植物たちの「楽園」なのだと断定する著者の発想の転換とも言える視点が面白い。また、植物の姿を「大柄で邪魔な感じ」とか「全体に雑然とした感じ」「コンパクトで可愛いらしい」などと表し、人の暮らしの近くに感じる。解説文のところどころで『近頃は……』とボヤいていらっしゃるが共感するのは著者と年齢が近いせいかな?

 お薦め度:★★★★  対象:身近な都市の自然に興味がある人に

【村山涼二 20140626】
●「スキマの植物図鑑」塚谷裕一著、中公新書

 住宅地を歩きながら、溝のコンクリートとアスファルトのスキマに、スミレ、ヒメツルソバ、ハハコグサなど、けなげに咲いているのを見ると、頑張っているなと思うが、実はスキマこそ彼らには生き抜く楽園だそうだ。太陽光を誰にも邪魔されず十分に受け、水はアスファルトで蒸発を防ぎ、二酸化炭素も十分に与えられている。スミレは蟻の散歩道、カタバミはヤマトシジミの産卵場所と昆虫の楽園でもある。110種の写真は道端の四季を楽しめる植物園である。ヒガンバナまでもと思うが、実際に町中で見かけたことがある。私は一面に広がったスベリヒユを摘んで食べている。町の自治会などで、環境美化と称して草むしりが行われることがあるが、是非スキマの植物は残してほしい。ヤマトシジミが低く舞う町であってほしい。

 お薦め度:★★★★  対象:身近に自然を楽しむ方

【和田岳 20140627】
●「スキマの植物図鑑」塚谷裕一著、中公新書

 道端のコンクリートやアスファルトの隙き間、石垣の間、壁の割れ目。市街地にある様々なスキマに生える植物を写真と短いコラムで紹介した本。市街地で見かけるさまざまな花が取り上げられているので、タイトル通り図鑑としても参考になる。ホソバウンラン、ベニバナセンブリ、ユウゲショウ。実際、気になっていた花の名前が判明した。
 コラムを全体として読むと、園芸植物として持ち込まれ、一時は流通していても、逃げ出して日本に定着してしまい園芸価値がなくなるというプロセスが読み取れて面白い。スキマというのは、養分・水分は充分あって、なにより日光が豊富な場所である。という指摘も面白かった。

 お薦め度:★★★  対象:道端の植物が気になる人

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