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本の紹介「素数ゼミの謎」

「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋、2005年7月、ISBN4-16-367230-3、1429円+税


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【六車恭子・岡本素治 20060514】【公開用】
●「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋

 アメリカに13年と17年に一度出現する周期ゼミがいるという。発生する年が同じものをまとめて「ブルード」と呼び、13年が3種類、17年が12種類が知られ、いまでは発生年の未来予想地図も発表されているようです。それではそれ以外の12年や15年などではなく、13、17年組だけがなぜ成功したのだろうか?その解答のひとつがこの絵本にはあるようです。
 これまでの有力仮説「天敵回避」に対し、この本は「交雑回避」とでもいうべき仮説を提唱しています。きびしい氷河時代に長期間地中にいることを余儀なくされたセミたちは、周期を定めてみんな一斉に出てくることで生き延びてきた。しかし、異なる周期の集団が出会うと交雑が起こり、異なる周期の子供ができる。異周期の集団と出会う確率が最も少ない素数周期の集団だけが生き残ったのだという仮説です。 移動性のないセミが目覚めた時に、もしかれらの憩う森がすでに無くなっていたら・・・彼らは過去の時代から遥々やって来た戦士のように思えてしまいます。一匹の小さなセミからもこんな進化のドラマは読み取れるのですね。

 お薦め度:★★★  対象:昆虫界の世界七不思議にふれたいあなた

【魚住敏治 20051024】【公開用】
●「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋

 セミを使った数字のマジックです。
 話は単純明快、素数ゼミの地中生活が長いのは、氷河期の寒さのために成長スピードが遅くなったため。同じ場所で大発生するのは、比較的暖かい土地のセミで同じタイミングで地上に出てくるものが生き残ったため。13年、17年周期なのは、素数のまじった組み合わせの最小公倍数は大きくなる性質があるので、違う周期のセミとの交雑がすくないためといった具合です。
 話はスッキリしているのですが、他の地域のセミとの比較とか、実証的なデータはどうなんだろうか? 気になるところがいっぱいあります。

 お薦め度:★★  対象:中学生以上の方

【六車恭子 20051102】
●「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋

 アメリカに13年と17年に一度出現する周期ゼミがいるという。発生する年が同じものをまとめて「ブルード」と呼び、13年が3種類、17年が12種類が知られ、発生年の未来予想地図も発表されているようです。ちなみに2004年に大発生したのは「ブルード10」だったそうです。なぜ13年と17年組が成功したのか?
 数理生態学の観点から氷河時代を生き抜いた壮大な素数ゼミの謎にいどんだ論文を優しく説いたのがこの絵本です。移動性のないセミが目覚めた時に、もしかれらの憩う森がすでに無くなっていたら・・・彼らは過去の時代から遥々やって来た戦士のように思えるのは私だけだろうか?一匹のセミから始まる進化のドラマに出会える本です。

 お薦め度:★★★  対象:何処にもありそうでなさそな不思議を感受できる人なら誰でも

【西村寿雄 20051011】
●「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋

 「〈素数ゼミ〉なんて聞いたことがないな」、「これは、本当にセミの話なの?」 題名を見る限り数学の堅苦しい話と思われそうだが、おもしろいセミの話である。13年とか17年も土の中で幼虫時代を過ごして樹上に這い出すセミがいるのだという。しかも、ある地域に限定して一度に成虫になるため、蝉時雨ならぬ、セミ〈騒音〉に悩まされるのだという。アメリカでの話である。そのセミの名が〈素数ゼミ〉。この本は、この不可解なセミの謎に挑戦する。
 このセミが、13年と17年目に一斉に地表に出てくる謎は何か。その謎に著者は挑戦する。この不思議なからくりを知りたい人は、この本をどうぞ。
 中学生以上なら興味深く読める。セミの進化の話であると同時に、素数の性質を実感する数学の話でもある。

 お薦め度:★★★  対象:数学、昆虫に興味のある中学生以上

【六車恭子 20051027】
●「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋

 アメリカに13年と17年に一度出現する素数ゼミがいるという。発生する年が同じものをまとめて「ブルード」と呼び、13年が3種類、17年が12種類が知られ、発生年の未来予想地図も発表されているようです。ちなみに2004年に大発生したのは「ブルード10」だったそうです。なぜ長年かけて成虫になるのか?
 数理生態学の観点から氷河時代を生き抜いた壮大な素数ゼミの謎にいどんだ論文を優しく説いたのがこの絵本です。移動性のないセミが目覚めた時に、もしかれらの憩う森がすでに無くなっていたら・・・彼らは過去の時代から遥々やって来た戦士のように思えるのは私だけだろうか?一匹のセミから始まる進化のドラマに出会える本です。

 お薦め度:★★★  対象:何処にもありそうでなさそな不思議を感受できる人なら誰でも

【和田岳 20051026】
●「素数ゼミの謎」吉村仁著・石森愛彦絵、文芸春秋

 著者がアメリカの学術雑誌に発表した内容を、可愛い絵を付けて、やさしく(?)説明した本。13年や17年もの間、地中で幼虫時代を過ごし、ある年一斉に大量の成虫が出現する。毎年セミが発生するのが当たり前の日本人には不思議な生態を持ったセミがアメリカにいる。そんな素数ゼミの生活を紹介し、どうしてそんなに長い幼虫時代を過ごすのか、どうして13年や17年といった素数になっているのかという謎について、著者の説を披露する。数学モデルに基づく理論はやや難しいが、この部分がわからなければ読み飛ばせばいいだろう。
 注意すべきは、後半で披露されている説明は、あくまでも著者の仮説であるという点。これが正しいかどうかは、これからさらに研究して検証される必要がある事をお忘れなく。

 お薦め度:★★★  対象:素数ゼミってセミを知ってる人も、素数ゼミって素数論を勉強するゼミか?と思った人も

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