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本の紹介「空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方」

「空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方 被害の真相とその解決策を探る」坪井潤一著、成山堂書店、2013年4月、ISBN978-4-425-85411-0、1800円+税


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【和田岳 20131213】【公開用】
●「空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方」坪井潤一、成山堂書店

 山梨県でカワウ対策に取り組んでいる著者が、カワウの現状と被害状況、その対策について語る。著者はもともと鳥研究者ではなく、釣り好きの魚研究者。しかしその目線は意外なほどカワウに優しい。いわば漁師側目線で、かつ研究者目線での語りが、とても説得力がある。
 カワウ被害といっても、放流アユへの食害は、なわばりを持てない弱いアユが主に食べられているのではないか、だとしたら必ずしも漁業被害とはいえない。カワウの追い払いは流域での連携がなければ、単なるカワウの押し付けあいにしかならない。あらゆる場所に通用する万能の対策はない。放流アユや在来淡水魚が、カワウに食べられるのが問題になるのは、河川改修によって河川環境が単純化してしまい、魚がカワウから逃げ隠れできなくなったことにある。重要な指摘が随所に見られる。

 お薦め度:★★★★  対象:カワウの増加に関心のある人

【森住奈穂 20131021】
●「空飛ぶ漁師カワウとヒトとの上手な付き合い方」坪井潤一、成山堂書店

 山梨県水産技術センターに勤める著者にとって、カワウ対策は専門外の仕事。かえって中立的な立場で取り組むことができると、それを強みに思考錯誤のカワウ攻防戦。問題はカワウと放流アユとの関係にとどまらず、水辺に暮らす生きものすべての生存バランスにかかわる。広げて考えればキリがないが、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」。まず記録を取ること、そしてできることからやっていくこと。広域連携と継続の大切さにも納得。カワウとヒトとの付き合い方=自然と人との関わり方であり、潔い著者の姿勢に学ぶところは大きい。

 お薦め度:★★★★  対象:距離の取り方に悩んでいるひと

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