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本の紹介「進化の法則は北極のサメが知っていた」

「進化の法則は北極のサメが知っていた」渡辺佑基著、河出新書、2019年2月、ISBN978-4-309-63104-2、920円+税

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【萩野哲 20190619】【公開用】
●「進化の法則は北極のサメが知っていた」渡辺佑基著、河出新書

 著者は生物現象のメカニズムを物理的視点から明らかにするための研究を行っており、その過程のドタバタをフィールドワーク毎にまとめたのが本書である。第1章:ニシオンデンザメ。水温ゼロの世界に生きる、体温ゼロの巨大なサメ。第2章:アデリーペンギン。水温ゼロの世界に生きる比較的小型の恒温動物、第3章:ホホジロザメ。まわりの水温よりも10℃程度高い体温を常に保っているものの、恒温動物には及ばない。第4章:イタチザメ。第5章:バイカルアザラシ。全体の印象として、各章に著者の信奉する物理的法則の説明が散らばり、大変読みにくい。別の章にまとめるべきだ。各章の中身は本筋とは無関係なドタバタが多い(著者が「はじめに」に書いた通りか)。イタチザメの章にいたってはなんと実験失敗。結果を期待しながら読んだため、ガッカリ度は半端ではなかった。

 お薦め度:★★  対象:面白くても面白くなくても紀行文の好きな人
【六車恭子 20190615】【公開用】
●「進化の法則は北極のサメが知っていた」渡辺佑基著、河出新書

 ダ一ウィンの提唱した進化論は今だに色褪せることはない。しかし様々なアイデアを繰り出して挑戦は今も絶えることはない。生き物の代謝量という切り口である種の法則を見いだした研究者たちがいた!
 マックス・クライバ一は代謝量は体重の三分の二乗に比例して増加すると唱えた。生命活動はエネルギーの流れなのだ!生命活動を維持するプロセスと代謝は根っこは同じ!
 1997年、ジェ一ムス・ブラウンは「生物はフランクル構造をしたパイプである」と発表した。生命現象は太い一本のパイプから始まり次第に分岐して細くなりながら末端部に至る構造を持つ輸送システムだと。生物体は一つの巨大な化学工場なのだ。代謝量は体の大きさに加え、もう一つの重要な要素が体温なのだと説く。
 代謝量はすべての生命活動の根源であり、代謝量が決まれば、生物の生き方が決まる。まさに代謝理論は生物学の金字塔と言えよう。多数の生物が複雑に絡み合う生態系の成り立ちすら説明できるのだ。
 ニシオンデンサメは北極の深海で400歳の夢にまどろみ、バイカルアザラシは潜水しながらつかの間、休息をとっているだろう。

 お薦め度:★★★★  対象:生き物の世界により思いを深くしたい人
【森住奈穂 20190620】
●「進化の法則は北極のサメが知っていた」渡辺佑基著、河出新書

 バイオロギングを使って野生生物の生き方を探り、そこから進化の法則を解き明かそうという本書。北極のニシオンデンザメ、南極のアデリーペンギン、オーストラリアのホホジロザメとイタチザメ、シベリアのバイカルアザラシが登場。調査の成功と失敗に一喜一憂しつつ、体温(恒温、変温、中温)や体のサイズが生物の生き方(ひいては進化)を決定づけていると解説している。時間の流れが生物によって異なることはなんとなく理解していたけれど、人間の子ども(高体温の小動物)と大人の時間感覚のズレも、それで説明できるとは!著者が法則好きのため野生生物の生態についてはあまり触れられず、バイオロギングによって得られたデータをもとに解説が続く。生態を知りたい私にはちょっと不満。

 お薦め度:★★★  対象:太く短く?細く長く?生き方について考えているひと
【和田岳 20190620】
●「進化の法則は北極のサメが知っていた」渡辺佑基著、河出新書

 著者は水中生物のバイオロギング研究者。動物の代謝量は体重と体温で決まるという理論を手がかりに、北極のニシオンデンザメ、南極のアレリーペンギン、オーストラリアのホホジロザメ。著者が開発したバイオロギングの装置を使って、さざまなな動物の代謝量(採食量と運動量と体温)を測定に出かける。
 その著者の心の師匠は、代謝量研究の第一人者のジェームズ・ブラウン博士。ゲロッパ。極寒の北極海や南極から、暖かいオーストラリアまで、世界をまたにかけて飛びまわる。その調査の様子は楽しそう(?)

 お薦め度:★★★  対象:辺境での調査の様子を垣間見たい人、または動物の代謝量の理論をお手軽に知りたい人
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