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本の紹介「唱歌「ふるさと」の生態学」

「唱歌「ふるさと」の生態学 ウサギはなぜいなくなったのか?」高槻成紀著、ヤマケイ新書、2014年12月、ISBN978-4-635-51020-2、800円+税


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【西村寿雄 20150414】【公開用】
●「唱歌「ふるさと」の生態学」高槻成紀著、ヤマケイ新書

 「ウサギ追いしかの山…」と長く歌い続けられてきた「故郷」の歌詞。この歌詞に書かれている日本の里山風景を、著者専門の保全生態学からときほぐし、合わせて故郷に心を寄せる日本人の心も描写している。日本人が営々として築いてきた里山の風景と豊かな動植物を描写しながら、効率を追い続けてきた現代の危機にもふれている。後半には、美しい故郷を放棄せざるをえなくなった福島の人々の無念な気持ちにもせまり、人だけでなく動物にもおそいかかっている放射線被害の重さもつきつけている。美しい日本の風土と人の心に学問的な成果をからませて里山保全のありかたを問う一冊である。

 お薦め度:★★★★  対象:日本の里山文化を考えたい人

【冨永則子 20150414】
●「唱歌「ふるさと」の生態学」高槻成紀著、ヤマケイ新書

 「故郷」の歌詞をテーマに、日本の原風景であった里山や川の自然環境がいかに、なぜ変化していったか分析している。日本の高度成長と自然破壊は表裏一体だと漠然とは思っていたが、社会の変化が与える自然環境への影響力をあらためて考えさせられた。グローバル化することは、単純に全てが良いことなのではない。文化や宗教観の違い、価値観の違いなど、西洋と日本の背景を考慮したものでなければならない。とても深い難しい内容だが、歌詞を追いながら読みすすめられた。

 お薦め度:★★★  対象:昔は良かったなぁと言ってしまう人に。昔って言われても…と思う人に
【和田岳 20150417】
●「唱歌「ふるさと」の生態学」高槻成紀著、ヤマケイ新書

 ウサギ追いしかの山〜、と「故郷」の歌詞に沿って、近い過去の日本の自然を振り返り、現在の自然を考える。著者は、生態学を少しはみだして、社会を語りはじめる。
 イントロに続いて、「ウサギ追いし 里山の変化」、「小ブナ釣りし 水の変化」、「山は青き 森林の変化」、「いかにいます父母 社会の変化」と章が続く。里山では人の手が加わらなくなって茅場が減少、外来生物が増加。淡水環境では、圃場整備や農薬に加えて、外来生物の問題。林業の現状、さらには家族の変質からの社会の変化が語られる。
 故郷の歌にのって、かつての里山や淡水環境、山の林の変化が語れるんだ! と気づいた時、著者は、これだー!と思ったに違いない。

 お薦め度:★★★  対象:里山、小川、山林、そして社会の変化が気になる人

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