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本の紹介「食を考える」

「食を考える」佐藤洋一郎著、福音館書店、2012年9月、ISBN978-4-8340-2740-2、1200円+税


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【和田岳 20121221】【公開用】
●「食を考える」佐藤洋一郎著、福音館書店

 植物遺伝学の研究者である著者が、食についてのエッセイをまとめた一冊。30のエッセイは、「食の環境負荷」「今どきの食」「ハイテクと食」「生物多様性と食」と4つにまとめられている。似たようなメッセージが含まれているエッセイも多いので、順番に通しで読むと少し飽きてくる。適当にページをめくって、気になったところから読めばいいだろう。
 著者は食を環境ととらえて食をトータルに扱おうとしたのだという。確かに、食から環境を考えるという視点がつらぬかれたエッセイが並ぶ。さらに東日本大震災そして電力問題、食の安全保障。多くのエッセイの背景にはこうした問題意識が見えかくれする。今だからこそ、読んでおきたい一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:食の安全、食と環境問題に関心のある人、ない人

【岩坪幸子 20121218】
●「食を考える」佐藤洋一郎著、福音館書店

 「食を考える」佐藤洋一郎著 福音館書店 作者は植物の遺伝学の研究者。農業と環境の関係を研究していく中で見えてきたものをエッセー風に問題提起している。まず農業の出口は食。飽食の時代といわれる現代の食が地球環境を悪化させ、環境負荷を大きくしていると説く。例えばエビ好きの日本人が食べるエビはその9割が東南アジアで養殖されたもの。ここ何十年か輸入し続けた結果、東南アジアの沿岸部には各地に「死の海」が広がっているという。また日本は水の豊かな国であるが、実際に日々食べている食材は多くが輸入品。小麦や大豆、肉などの生産地は乾燥地が多い。生産のために使われる膨大な量の水は灌漑水路を引いたり、地下水を汲み上げたりしているが、やがて塩害などで農業ができなくなる。水の豊かな日本が乾燥地で作られた農産物を多量に買い付けるのは問題だという。このような問題意識を持って「今どきの食」「ハイテクと食」「生物多様性と食」について夫々具体的に分かりやすくかいてある。

 お薦め度:★★★★  対象:食べ物に関心のある人・ない人

【村山涼二 20121219】
●「食を考える」佐藤洋一郎著、福音館書店

 著者は植物遺伝学の研究者で、特にイネの日本への伝わり方の研究に関し多くの著書がある。2003年に総合地球環境学研究所に移り、農業と環境にも視点を移してきている。食と環境問題、エビの養殖と環境汚染、輸入食品に消費される水(仮想水)など取り上げている。遺伝子組み換え食品の安全性を認めつつ科学に完全はないと述べている。組み替えなし食品の安全性には食経験以外に科学的確認すらないのだが。食の安全については、消費期限の重要性(賞味期限でなく)を判っているのか?安易に考えているようだ。生物多様性については、ひょうたんの奈良漬け、パスタ用デユラム小麦、コシヒカリ一辺倒批判など面白い。
 わでしんいちさんの表紙絵、中の挿絵は十分に楽しめる。

 お薦め度:★★★  対象:食と農と環境に関心のある方

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