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本の紹介「植物はなぜ5000年も生きるのか」

「植物はなぜ5000年も生きるのか 寿命からみた動物と植物のちがい」鈴木英治著、講談社BLUE BACK、880円+税


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【六車恭子 20020704】
●「植物はなぜ5000年も生きるのか」鈴木英治著、講談社BLUE BACK

  巨樹礼賛の本は巷に溢れているようですが科学的に植物の寿命を解き明かそうと試みた本は少ない。著者はかってはひたすら木の年輪を数える日々を送っていたそうだ。「人が200年生きることは夢のまた夢」、しかし推定2170歳ぐらいだろうと言われる縄文杉と比べれば、200歳の屋久杉はまだまだ子供。アメリカのネバダ州のイガゴヨウマツは4844の年輪を持つ。この最長老の古木は5000年は生き延びるだろうと言われている。動物界の長寿記録はアルダブラゾウガメの152歳で200歳を超えることはないという。動物と植物のこの違いはどこからくるのだろう?
 縄文杉のように数千年生きている樹木でも細胞はせいぜい30年ほどしか生きてはいない。古い死んだ細胞の外側に新しい細胞が付け加わって樹は成長し続ける。しかしいつかは成長の限界があり、個体の死を迎える。動物の古くなった細胞も分解され取り除かれながら、新しい細胞にとって変わられる。細胞の寿命が個体の寿命より短い点では動物も植物も同じだ。
 個体が死んでも子孫を残すことができれば種としては存続し続けるだろう。しかし幾たびかのの大絶滅があったからこそ現存種が生まれ、これは進化の過程で個体は次々に死んで世代交代を行い、種も滅びては新しい種に変わって行く地質学的時間があったのだ。最小の単位の細胞のしくみから著者は「種が滅びの運命にある!」ことをいみじくも予言している。 


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